63 / 77
63
しおりを挟む
暗闇の中から現れたのは第一王子とジーク、ミルリーさんで、みんなチョコの背に乗ってここまでやってきたようだ。
(チョコ!! と皆!!)
「レネット。いい加減にしろ。お前のしたことは到底許される事ではない。全ての証拠も挙がっている。父上にもお前のしたことは既に伝えてあるから、大人しく観念しろ」
ローランスの言葉を聞きながらも、その目はジークの方へと向けられる。
「どういうことだ!! お前、裏切ったな!!」
目が血走るようにジークを睨みつける。
(やっぱり、ジークさんは……)
「殿下、すみません。でも、俺は……」
「ジークを責めたって仕方ないぞ。お前の罪はお前のものだ。さあ、今から城に戻って父上にどう言い訳するのか考えるんだな。まあ、どうあっても臣籍降下は免れないとは思うが」
観念したようにうなだれたレネットの様子を見て、”ようやくこれで終わったか” と安心して、エルストに近寄ろうとしたのだが、その時エルストの向こうの闇の中で、きらりと光るものが見えた気がした。
(!!? まさか!!)
「エルストさん、危ない!!」
「ははは!! 油断したな!!」
(あっちにも!!)
同時に二か所でナイフが光る。
「ユナ!!」
「チョコ!!」
何も考えずに無意識にと身体が動く。
エルストをかばうように前へと出るのと同時に胸を意識を失うほどの衝撃が襲った。
(ああ、私、エルストさんを守れたんだ)
痛い、とか、怖いとかではなく、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がった。
自然と柔らかい笑みを浮かべてエルストを見上げる。
私を見つめるエルストの顔には悲愴の色が浮かんでいて、必死に私の名前を呼んでいる。
(そんな顔、しないで……)
そういえば、あっちは、どうなたんだろ……?
段々視界がぼやけ、薄れてゆく意識の向こう側で「ユナ! ユナ! と叫ぶ声が聞こえる。
(大丈夫だよ、だって……、私……)
そこで意識が消えていった――。
もう一方では殿下のことを庇ったチョコが足から血を流しており、ミルリーが手当てをしようと必死になっている。
レネットはジークに顔を地面へと押し付けられて、血が付いたナイフを持った手を後ろ手に掴まれている。
まだ文句を言おうと暴れようとしているが、力で抑えつけられているので、大した抵抗が出来ない。
ユナを刺したレネットの側近は、片手にユナを抱きかかえながらも、エルストが出した魔法のロープで縛られて一切の動きを封じられている。
こちらは抵抗せずに無表情のまま大人しく捕まっている。
「レネット、もう逃げ道はない。覚悟しておけよ」
ローランスの声が闇に響いた――。
(チョコ!! と皆!!)
「レネット。いい加減にしろ。お前のしたことは到底許される事ではない。全ての証拠も挙がっている。父上にもお前のしたことは既に伝えてあるから、大人しく観念しろ」
ローランスの言葉を聞きながらも、その目はジークの方へと向けられる。
「どういうことだ!! お前、裏切ったな!!」
目が血走るようにジークを睨みつける。
(やっぱり、ジークさんは……)
「殿下、すみません。でも、俺は……」
「ジークを責めたって仕方ないぞ。お前の罪はお前のものだ。さあ、今から城に戻って父上にどう言い訳するのか考えるんだな。まあ、どうあっても臣籍降下は免れないとは思うが」
観念したようにうなだれたレネットの様子を見て、”ようやくこれで終わったか” と安心して、エルストに近寄ろうとしたのだが、その時エルストの向こうの闇の中で、きらりと光るものが見えた気がした。
(!!? まさか!!)
「エルストさん、危ない!!」
「ははは!! 油断したな!!」
(あっちにも!!)
同時に二か所でナイフが光る。
「ユナ!!」
「チョコ!!」
何も考えずに無意識にと身体が動く。
エルストをかばうように前へと出るのと同時に胸を意識を失うほどの衝撃が襲った。
(ああ、私、エルストさんを守れたんだ)
痛い、とか、怖いとかではなく、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がった。
自然と柔らかい笑みを浮かべてエルストを見上げる。
私を見つめるエルストの顔には悲愴の色が浮かんでいて、必死に私の名前を呼んでいる。
(そんな顔、しないで……)
そういえば、あっちは、どうなたんだろ……?
段々視界がぼやけ、薄れてゆく意識の向こう側で「ユナ! ユナ! と叫ぶ声が聞こえる。
(大丈夫だよ、だって……、私……)
そこで意識が消えていった――。
もう一方では殿下のことを庇ったチョコが足から血を流しており、ミルリーが手当てをしようと必死になっている。
レネットはジークに顔を地面へと押し付けられて、血が付いたナイフを持った手を後ろ手に掴まれている。
まだ文句を言おうと暴れようとしているが、力で抑えつけられているので、大した抵抗が出来ない。
ユナを刺したレネットの側近は、片手にユナを抱きかかえながらも、エルストが出した魔法のロープで縛られて一切の動きを封じられている。
こちらは抵抗せずに無表情のまま大人しく捕まっている。
「レネット、もう逃げ道はない。覚悟しておけよ」
ローランスの声が闇に響いた――。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!
仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。
18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。
噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。
「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」
しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。
途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。
危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。
エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。
そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。
エルネストの弟、ジェレミーだ。
ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。
心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――
【R-18】逃げた転生ヒロインは辺境伯に溺愛される
吉川一巳
恋愛
気が付いたら男性向けエロゲ『王宮淫虐物語~鬼畜王子の後宮ハーレム~』のヒロインに転生していた。このままでは山賊に輪姦された後に、主人公のハーレム皇太子の寵姫にされてしまう。自分に散々な未来が待っていることを知った男爵令嬢レスリーは、どうにかシナリオから逃げ出すことに成功する。しかし、逃げ出した先で次期辺境伯のお兄さんに捕まってしまい……、というお話。ヒーローは白い結婚ですがお話の中で一度別の女性と結婚しますのでご注意下さい。
皇帝陛下は皇妃を可愛がる~俺の可愛いお嫁さん、今日もいっぱい乱れてね?~
一ノ瀬 彩音
恋愛
ある国の皇帝である主人公は、とある理由から妻となったヒロインに毎日のように夜伽を命じる。
だが、彼女は恥ずかしいのか、いつも顔を真っ赤にして拒むのだ。
そんなある日、彼女はついに自分から求めるようになるのだが……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる