その花びらが光るとき

もちごめ

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(あ、あのどS男~~! いつも煽るだけ煽っていって~~!!)


 そして、それを毎回ジークにバレてるかと思うと居た堪れないんですが……。

 やや乱れた髪に火照りを帯びた表情で、今しがたこの部屋で何があったか想像がつくだろう。

 恥ずかしさを誤魔化すようにさっさと部屋を出ようと立ち上がったが、ふらつき、とっさにジークにしがみつく。

「あっ、ごめんっ」

「いえ。……大丈夫ですか……?」

 ガシッと支えてくれたジークに感謝をしつつ、腰砕けるまでの快感を与えてくれたエルストに恨みがましい気持ちを向けた。


「歩けますか……?」
「あっ、うん、もう大丈夫。行こ」

 
***

 少し前を歩くユナの首すじに赤く虫に刺されたような跡を見つける。
 さっきまでの顔の火照り、潤んだ瞳に服の乱れ、控えていた扉の向こうから微かに漏れていた艶を帯びた甘い声を聞いていなかったとしても、その思わずぐっとくる姿に、この部屋で何があったかをすぐに理解する。


 胸の奥に渦巻く黒い感情に気づかないふりをして、目の前を歩く守べき女神に聞いてみる。
「あなたは、宰相補佐様の事が好きなのですか」


 自分が投げかけた質問があまりに突拍子もないことだったから、きっと驚いたのだろう。

 勢いよく振り向いたまま固まっている。


 そんな表情も可愛いと思い、黙ったまま眺めていたが、不意にユナの眉が理解し難いとばかりに窄められた。

「なに? 急に……。別に好きも嫌いもないけど……。そんなことを急に聞くなんてジークさんどうしちゃったの?  あっ、きっと疲れてるんだよね。ちょうど部屋に着いたし、私ももう寝るから、ジークさんも早く休んでね。ありがとう。おやすみなさい」

 そう言って部屋へと入ろうと開けたドアを、後ろから被さるように閉めて、その細く白い首すじに唇を落とした。

 ビクっと身体が震えたのを感じたが、エルストが付けた跡を上書きするようにキツく吸い付いた。

「っつ! ジークさ……ん」


 涙目で振り向くユナをこのままめちゃくちゃにしたい衝動に駆られたが、なんとかそれを押さえ込み「おやすみなさい」 と告げてその場を去った。


 自分の中に蠢く黒い感情を、外に漏らさないように蓋を閉めていたが、そろそろ限界なのかもしれない。

 未だ夜会から漏れる賑やかな音を聞きながら、1人暗い廊下を歩いていたーー。
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