47 / 77
47
しおりを挟む
(あ、あのどS男~~! いつも煽るだけ煽っていって~~!!)
そして、それを毎回ジークにバレてるかと思うと居た堪れないんですが……。
やや乱れた髪に火照りを帯びた表情で、今しがたこの部屋で何があったか想像がつくだろう。
恥ずかしさを誤魔化すようにさっさと部屋を出ようと立ち上がったが、ふらつき、とっさにジークにしがみつく。
「あっ、ごめんっ」
「いえ。……大丈夫ですか……?」
ガシッと支えてくれたジークに感謝をしつつ、腰砕けるまでの快感を与えてくれたエルストに恨みがましい気持ちを向けた。
「歩けますか……?」
「あっ、うん、もう大丈夫。行こ」
***
少し前を歩くユナの首すじに赤く虫に刺されたような跡を見つける。
さっきまでの顔の火照り、潤んだ瞳に服の乱れ、控えていた扉の向こうから微かに漏れていた艶を帯びた甘い声を聞いていなかったとしても、その思わずぐっとくる姿に、この部屋で何があったかをすぐに理解する。
胸の奥に渦巻く黒い感情に気づかないふりをして、目の前を歩く守べき女神に聞いてみる。
「あなたは、宰相補佐様の事が好きなのですか」
自分が投げかけた質問があまりに突拍子もないことだったから、きっと驚いたのだろう。
勢いよく振り向いたまま固まっている。
そんな表情も可愛いと思い、黙ったまま眺めていたが、不意にユナの眉が理解し難いとばかりに窄められた。
「なに? 急に……。別に好きも嫌いもないけど……。そんなことを急に聞くなんてジークさんどうしちゃったの? あっ、きっと疲れてるんだよね。ちょうど部屋に着いたし、私ももう寝るから、ジークさんも早く休んでね。ありがとう。おやすみなさい」
そう言って部屋へと入ろうと開けたドアを、後ろから被さるように閉めて、その細く白い首すじに唇を落とした。
ビクっと身体が震えたのを感じたが、エルストが付けた跡を上書きするようにキツく吸い付いた。
「っつ! ジークさ……ん」
涙目で振り向くユナをこのままめちゃくちゃにしたい衝動に駆られたが、なんとかそれを押さえ込み「おやすみなさい」 と告げてその場を去った。
自分の中に蠢く黒い感情を、外に漏らさないように蓋を閉めていたが、そろそろ限界なのかもしれない。
未だ夜会から漏れる賑やかな音を聞きながら、1人暗い廊下を歩いていたーー。
そして、それを毎回ジークにバレてるかと思うと居た堪れないんですが……。
やや乱れた髪に火照りを帯びた表情で、今しがたこの部屋で何があったか想像がつくだろう。
恥ずかしさを誤魔化すようにさっさと部屋を出ようと立ち上がったが、ふらつき、とっさにジークにしがみつく。
「あっ、ごめんっ」
「いえ。……大丈夫ですか……?」
ガシッと支えてくれたジークに感謝をしつつ、腰砕けるまでの快感を与えてくれたエルストに恨みがましい気持ちを向けた。
「歩けますか……?」
「あっ、うん、もう大丈夫。行こ」
***
少し前を歩くユナの首すじに赤く虫に刺されたような跡を見つける。
さっきまでの顔の火照り、潤んだ瞳に服の乱れ、控えていた扉の向こうから微かに漏れていた艶を帯びた甘い声を聞いていなかったとしても、その思わずぐっとくる姿に、この部屋で何があったかをすぐに理解する。
胸の奥に渦巻く黒い感情に気づかないふりをして、目の前を歩く守べき女神に聞いてみる。
「あなたは、宰相補佐様の事が好きなのですか」
自分が投げかけた質問があまりに突拍子もないことだったから、きっと驚いたのだろう。
勢いよく振り向いたまま固まっている。
そんな表情も可愛いと思い、黙ったまま眺めていたが、不意にユナの眉が理解し難いとばかりに窄められた。
「なに? 急に……。別に好きも嫌いもないけど……。そんなことを急に聞くなんてジークさんどうしちゃったの? あっ、きっと疲れてるんだよね。ちょうど部屋に着いたし、私ももう寝るから、ジークさんも早く休んでね。ありがとう。おやすみなさい」
そう言って部屋へと入ろうと開けたドアを、後ろから被さるように閉めて、その細く白い首すじに唇を落とした。
ビクっと身体が震えたのを感じたが、エルストが付けた跡を上書きするようにキツく吸い付いた。
「っつ! ジークさ……ん」
涙目で振り向くユナをこのままめちゃくちゃにしたい衝動に駆られたが、なんとかそれを押さえ込み「おやすみなさい」 と告げてその場を去った。
自分の中に蠢く黒い感情を、外に漏らさないように蓋を閉めていたが、そろそろ限界なのかもしれない。
未だ夜会から漏れる賑やかな音を聞きながら、1人暗い廊下を歩いていたーー。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を
川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」
とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。
これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。
だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。
これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。
完結まで執筆済み、毎日更新
もう少しだけお付き合いください
第22回書き出し祭り参加作品
2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる