その花びらが光るとき

もちごめ

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「ユナ様、そろそろ甘いものはいかがですか?」

 ノックと共におやつのお誘いが来た。

(ミルリーさん、ナイスタイミング!)

 ちょうど甘いものが欲しくなってきた時間です!



 ミルリーさんとジークさんが部屋に入って来た。

 二人はどうやら、お茶を楽しみに来たようではなく、何か用事があるようだ。

 お茶をすすりながら聞いてみる。
 
「あの、何かありましたか?」

 私の言葉に、二人は何とも言えない顔を見合わせ、そして、一つ頷いてからジークさんが話し始めた。

「実は、今度王宮主催の夜会が開かれるんですよ。それに、ユナ様も参加されるかどうかをお聞きしたくて」


「もちろん、ユナ様は強制ではございません。少しでも嫌だと感じられたら、参加しなくていいんですよ」

 ミルリーさんが、「あんな会なんか……」 と、小さな声で付け加えたのがバッチリ聞こえた。


 こんなに二人が渋るってことは、何か理由があるんだろう。

「何か……あるんですか……?」

  ゆ、幽霊がでるとか……?!

 恐る恐る聞くと、意を決したようにまたジークさんが口を開いた。

「夜会の場には、第三王子も出席なさるんです」


 !?  第三王子!?

 ……あぁ、そうか。
 納得した。
 だから、二人とも私にはあまり積極的に勧めないんだ。


 でもね、
 足掻いてみるって決めたから、逃げないよ。


 一度深呼吸してから、しっかりと二人を見て答える。

「わかりました。私、参加します」

『「えっ!?」』

 二人とも、ビックリし過ぎて、顎が外れそうです。

「大丈夫です。私、負けません! だって、皆さんがいてくれるから、いつだって心強いです」
 

 ジークさんは、ハッとしたように目を見開いていたが、次の瞬間、キラキラしい笑顔を浮かべ、膝をついて私を見た。

「はい、いつだって、ユナ様と共におります。必ずお守り致しますのでご安心下さい」


 ミルリーさんも、花がほころぶように笑った。

「その通りでございます。私達は、ユナ様と何時でも一緒です。私も負けませんわ! そうと決まれば、何着かドレスをご用意いたしませんとね!」

 ユナ様、楽しみにしていてくださいませ! と、実に楽しそうに部屋から出ていった。

 ……、またあのコルセット地獄が待っているのか。
 ミルリーさん、ドレスは程々でいいです……。


「あの、ジークさん、エルストさんも……参加するんですよね?」

 ん? なんか、一瞬、ジークさんの顔から表情が無くなったような……??

 見間違いかな??


「……ええ、ローランス王子も、エルスト様も、ご参加されます」


 それを聞いて安心した。
 そっか。エルストさん達も来るんだ。
   なんだか少しだけ楽しみになったかも。


 夜会って、きっと想像もつかないほどにキラキラしい豪華なな場所なんだろうな。

 まだ見ぬ煌びやかな世界にチョッピリと胸を弾ませた。
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