その花びらが光るとき

もちごめ

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 世界は広い。
 私なんてちっぽけだ。

 どんなにあがいても天には届かないかもしれない。

 でも、どんだけちっぽけでも人はみんな必死で今を生きている。
 この広い大陸のあちこちで天に手を向けて。

 私はこの世界でいろいろな人の手を取り、今ここで生きている。
 きっと、意味があるのだろう。
 私の光満ちてく新たな世界はここなのかもしれない。

 人々が天に手を伸ばすなら、私が伸ばす手は誰かがきっと握ってくれるだろう。

 私なりにやってみて、足掻いてみようかな。

 うん。大丈夫。
 私、きっとやれる気がする。

 背中から伝わる温かい体温を感じながら、目を閉じ、大きく息を肺一杯に吸い込む。

(空気が美味しいな)


「ありがとうございます」 と小さく呟く。

 その声を拾ったのだろう。
 後ろで小さく笑い、「どういたしまして」 と聞こえた。




 エルストさん、ジークさん、ミルリーさんの優しさが胸に広がる。
 あの事件の後の空元気な私に気遣い、気分転換に外に連れてきてくれたのだろう。

 ペガサスに乗って空中散歩なんて贅沢!


「ありがとうございます」 と心の中でもう一度呟いた。



 どうせなら、思い切り楽しんじゃおう! と行き込んだのはいいのだが、恐怖心がなくなったとたん、今度はどうしても後ろに意識が向いてしまい、もじもじしてしまう。

 きっと、顔も赤くなっているだろう。

 なんか、ここでまで、変に意識してる私って、やっぱり変態なんじゃないのかな?!


「おや、顔や首が赤いですけれど、どうかしましたか」
「い、いいえ! なんでもありません!」

 吐息が首筋にかかる~~!!
 
 ミルリーさん!! 何で、髪をアップにしたかな~~!!

「そうですか」

 私の様子に面白がって笑っているのがわかる。
 
 触れている背中が小刻みな振動を伝えているから。

 腰に回された手に力が籠められ、余計に意識してしまって、これでは空中散歩度これではないと、途中からは早く地上に着くことばかりを考えていた。


 その二人の様子を、寂しげな眼をして見つめていた者が近くにいたことに誰も気がづかなかった――。
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