その花びらが光るとき

もちごめ

文字の大きさ
上 下
21 / 77

21 

しおりを挟む
「ぎゃー!!いたいっ」
「んー!!もうだめっ」
「何を言っているんですか。まだまだいけますよ。ほら、力を抜いて」
「そんなこといわれても、苦しくて、できないっ」
「力みすぎです。もしかして、初めてですか?」
「初めてですっ!」


 あたり前でしょう! コルセットなんて、今までつけたことありません! 
 しかも、侍女さんたちに絞殺されるのではないかと思うほどにギチギチに締め上げられています。

「ぐえっ!」
 もう、これ以上は本当に無理です。
 口からなにかでそうです。
 勘弁してください。


「はあ、ならば仕方ありませんね。あなた方、女神はこの通り、ややふくよかな方なので、これ以上は無理だそうです。用意してあった服のサイズを上の部分と下の部分の大幅な調節を急いでしてきて下さい」
「はい、かしこまりました」
 侍女さん達はあっさりと引き下がっていった。

 ……。無理なものに時間をかけるのは無駄だと悟ったのだろう……。


「以前、花びらを確認した時、もしかしたらとは思っていたのですが、絞れば何とかなるとも思っていたんですよ。でも私の勘違いでした。どんだけ絞ってもダメなものはダメなんですね。私も勉強になりました」

 薄ら笑いを浮かべながら、私のお腹を見ないでください。

 みなさーん、ここに、女性の敵がいますよー。

「どうやったら、そんなに肉が付くんですかね。ああ、一日十食ほど食べてるんですか? 食事、やめたほうがいいのではないですか?」

 早速侍女に伝えておきましょうか、と綺麗な顔して言っているこの目の前の男。


 おまえは、鬼か!!

 私から食事の楽しみを奪ったら、絶対に噛みついてやる!!




 そもそも、なんで私がこんな拷問まがいなコルセットをつけることになっているのかというと、

 一週間後に行われる儀式は、国にとって重要な儀式になるので、当然厳戒態勢を敷き、国王陛下を始め、王子たち、国の重鎮達が、みんな儀礼用の正装で集まる。
 そんな場に普段着で気楽に出向く勇気は私にはない。

 で、わたしは女神の正装でいくのだが、用意されている歴代女神のデザインがこれまたすごかった。

 まさにボン・キュッ・ボンのドレスである。

 ちなみに、先ほどの通り、侍女さん方に手伝ってもらい、限界まで閉めてもらったのだが、ウエスト部分が入らなかった。
 おまけに、いわずもがな、胸の部分は逆に詰め物をしなくてはいけないくらいのスカスカのあら様である。

 それがさっきエルストさんが言っていた、上の部分と下の部分である。


 歴代の女神様たち、本当に人間か?
 ありえないと思う、あの細さ。

 決して私が太いわけではないと思う!

 
 でも、少しだけ、甘いものは控えたほうがいいのかな……?
 いや、甘いものは脳の活性化に役に立ち、勉強がより捗ると思う!
 
 こぶしを握り締め、エルストさんを振り返る。

「大丈夫ですよ、とりあえず、あなたのやることは、一週間後までその体型をキープしておいてください。それ以上になられたら、非常に困りますので。」

 はあ、とため息交じりに出て行った。

 
 ああ、なんだか 疲れた……。
 甘いものが食べたいな……。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話

象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。 ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!

仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。 18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。 噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。 「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」 しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。 途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。 危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。 エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。 そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。 エルネストの弟、ジェレミーだ。 ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。 心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――

【R-18】逃げた転生ヒロインは辺境伯に溺愛される

吉川一巳
恋愛
気が付いたら男性向けエロゲ『王宮淫虐物語~鬼畜王子の後宮ハーレム~』のヒロインに転生していた。このままでは山賊に輪姦された後に、主人公のハーレム皇太子の寵姫にされてしまう。自分に散々な未来が待っていることを知った男爵令嬢レスリーは、どうにかシナリオから逃げ出すことに成功する。しかし、逃げ出した先で次期辺境伯のお兄さんに捕まってしまい……、というお話。ヒーローは白い結婚ですがお話の中で一度別の女性と結婚しますのでご注意下さい。

皇帝陛下は皇妃を可愛がる~俺の可愛いお嫁さん、今日もいっぱい乱れてね?~

一ノ瀬 彩音
恋愛
ある国の皇帝である主人公は、とある理由から妻となったヒロインに毎日のように夜伽を命じる。 だが、彼女は恥ずかしいのか、いつも顔を真っ赤にして拒むのだ。 そんなある日、彼女はついに自分から求めるようになるのだが……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる

一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。 そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

処理中です...