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私たちは今、王宮が管理する大きな図書室に連れてきてもらっている。
図書館の中は赤い絨毯が敷かれており、歩く音は全て吸収されている。
話し声はなく、ペラペラと、ページを捲る音だけが微かに聞こえている。
書架にはぎっしりと本が詰まっているがきちんと整理されており、目当ての本を探すのは簡単そうだ。
「あった。これと、これも。」
本を二冊借りて、窓の近くに用意されているテーブルに着いて、ペラペラと中を確認してみる。
「うーん、やっぱりちょっと難しそう。覚えられるかな?」
「大丈夫ですよ。話す言葉は分かっておられるのですから。後は、文字と合わせていくだけです。ああ、こちらの本の方が分かり易いですよ」
『~はじめての読み書き 5歳編~』
「……」
そうなのです。
実は私、全く字が読めないので少しずつ覚えていこうと思い、図書室につれて来てもらったのです。
前世でも図書館には週1で通うくらい本好きな私は、学生の頃は『本の虫』と呼ばれていました。そんな私は、こちらの世界に来てからも時々本を読みたい衝動にかられていたのですが、喋ることはできても文字が読めないというチートもおかげで、我慢の日々を強いられていました。
そんな時、先日ジークさんミルリーさんに王宮を案内してもらっているとき、王宮内に図書室があることを知り、自分の中にいる本の虫がムズムズと蠢いて、ついに目覚めてしまったのです。
ここにはこんなにも本で溢れかえっているというのに、読めないなんてなんて悲しい。
それならば文字を勉強すればいい! と少しずつ勉強をしようと思って、さっそくジークさんを伴い、今は図書室でお勉強中です。
この、本の匂いに癒されます……。
紙と羽ペンに似た書くものをミルリーさんから貸してもらいました。
そこに一文字ずつ書き写していく。
なかなかうまいこと書けないものですね。ひょっと貸して、このペン、調子が悪いんでしょうか?
羽ペンをくるくる回して、『どっか悪いところは?』 とあらゆる角度から覗いていたのだけれど、「それは魔法インクですので永久的に使用できる優れもののペンです。ペンは悪くないですよ」 と綺麗な笑顔で言われてしまいました。
「……はい」
目の前に座るジークさんが、なぜだか鬼教官に見えてきました。
あれ? ここは、騎士団ですか……??
図書館の中は赤い絨毯が敷かれており、歩く音は全て吸収されている。
話し声はなく、ペラペラと、ページを捲る音だけが微かに聞こえている。
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「あった。これと、これも。」
本を二冊借りて、窓の近くに用意されているテーブルに着いて、ペラペラと中を確認してみる。
「うーん、やっぱりちょっと難しそう。覚えられるかな?」
「大丈夫ですよ。話す言葉は分かっておられるのですから。後は、文字と合わせていくだけです。ああ、こちらの本の方が分かり易いですよ」
『~はじめての読み書き 5歳編~』
「……」
そうなのです。
実は私、全く字が読めないので少しずつ覚えていこうと思い、図書室につれて来てもらったのです。
前世でも図書館には週1で通うくらい本好きな私は、学生の頃は『本の虫』と呼ばれていました。そんな私は、こちらの世界に来てからも時々本を読みたい衝動にかられていたのですが、喋ることはできても文字が読めないというチートもおかげで、我慢の日々を強いられていました。
そんな時、先日ジークさんミルリーさんに王宮を案内してもらっているとき、王宮内に図書室があることを知り、自分の中にいる本の虫がムズムズと蠢いて、ついに目覚めてしまったのです。
ここにはこんなにも本で溢れかえっているというのに、読めないなんてなんて悲しい。
それならば文字を勉強すればいい! と少しずつ勉強をしようと思って、さっそくジークさんを伴い、今は図書室でお勉強中です。
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紙と羽ペンに似た書くものをミルリーさんから貸してもらいました。
そこに一文字ずつ書き写していく。
なかなかうまいこと書けないものですね。ひょっと貸して、このペン、調子が悪いんでしょうか?
羽ペンをくるくる回して、『どっか悪いところは?』 とあらゆる角度から覗いていたのだけれど、「それは魔法インクですので永久的に使用できる優れもののペンです。ペンは悪くないですよ」 と綺麗な笑顔で言われてしまいました。
「……はい」
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