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昨日の夜から始まって、今ではうっすらと空が白み始めている。
正直もう寝むたい……。
目を閉じたままそう思えば、そのまま意識が眠りの世界へと落ちていった――。
***
王宮の騎士団の詰め所では、若い男女がさっきから小声で何やら言い争いをしている(ように見える)
「どうしてですか?」
「どうしてって、もう少し睡眠をとりたいんです!」
「あなたは昼まで、いえ、夜まで寝ていてくださって構わないんですよ? むしろ、夜は起きていて貰いたいので昼間は体力温存に努めて貰いたいですね」
綺麗な顔でなんてことを言うんだ。
だから何も問題ないですよ。とも付け加えているが……問題だらけです。
昼間は何もせずにただ寝ているだけで、毎日美味しい王宮のご馳走を一日三食食べているなんて……駄目だろ。人間として。
いや、夜は毎日激務をこなしているが……。
そのおかげもあって美味しい料理をどんだけ食べようが、デザートをたらふく食べようが、最近はカロリーをきちんと消化できている。
ダイエットにはやっぱり、運動ですね!
それでも、やっぱり朝から寝るんじゃなくて、ちゃんと日の昇るころには起きて、朝日を浴びたいと思う。
そう思って、”もう少し回数を減らしてほしい、もしくは毎日じゃなくて、週休四日制にしてほしい” とお願いをしたのだが、話が平行線のままである。
「まあまあ、その辺にしていただいて。お二人の間を取って『週3回、朝日が昇る2時間前には終わる』 というのはどうですか?」
同じく騎士団にいるジークが一向に話が終わらないのを見かねて妥協案を示した。
んー、それ、妥協案……か?
「それでは私は満足できない」
「でも今のままでは少々ユナ様が可愛そうでは?」
ジークの言葉に、少しの間考え込み、しぶしぶといった風ではあったが提案に了解を示した。
「わかりました。仕方ありませんね」
やった!! これで朝日を浴びれる!!
思わずガッツポーズをしてしまったら、目の前のエルストの笑顔が深まり、何故だか瞳の奥に氷山がそびえ立っているのが見えた気がした。
ひいいっ!! なんか笑顔が怖いっ!!
思わず後退れば、一気に距離を詰められ、耳元に唇を寄せられた。
「ならば、朝からすればいいだけですから。覚悟してくださいね」
いい終わりに、ついでとばかりに耳朶をペロリと舐められ、機嫌よく鍛錬場に戻っていった。
その後ろ姿に向かって心の中で叫んだ。
全然妥協案になってな~~い!!
***
ううっ。腰痛い……。
「ユナ、ユナ」
そう私を呼ぶ声が、でろでろに甘いのを感じてしまえば、私もしょうがないなぁって思ってしまうから私も大概に甘々だ。
私を呼んだ声の主はニコニコと何かにペンを走らせていた。
仕事かな? そんなにニコニコするほどに楽しい仕事なんて、今日は一体何の仕事なのかしら。
それにしても、イタしてすぐに仕事を始めるエルストさんは、真面目だなあ。
そんなことを思いながらベッドの上でゴロゴロしていたら、いつの間にかエルストが近くに来ていて、その手にはペンと紙が握られていた。
ん? 何? 私に仕事??
「はい、あなたもサインしてください」
「へっ? サイン?」
渡された紙を手に取り、さっと目を走らせた。
驚愕に目を見開く。
け、結婚承諾書!?
「えっ、あっ、」と口をハクハクさせる。
私のその様子を気にも留めず、どんどんと話を進めていく。
「日取りはいつにしましょうかね? なるべく早いほうがいいですよね」
「え? 日取り? あ、え……??」
「ああ、心配しなくても大丈夫ですよ。私に任せてください。全てあなた好みの結婚式になるように早急に手配しますんで」
自信たっぷりに微笑まれる。
「さあ、ここに、どうぞ」
迫力ある笑顔に押し切られてサインしてしまいました……。
正直もう寝むたい……。
目を閉じたままそう思えば、そのまま意識が眠りの世界へと落ちていった――。
***
王宮の騎士団の詰め所では、若い男女がさっきから小声で何やら言い争いをしている(ように見える)
「どうしてですか?」
「どうしてって、もう少し睡眠をとりたいんです!」
「あなたは昼まで、いえ、夜まで寝ていてくださって構わないんですよ? むしろ、夜は起きていて貰いたいので昼間は体力温存に努めて貰いたいですね」
綺麗な顔でなんてことを言うんだ。
だから何も問題ないですよ。とも付け加えているが……問題だらけです。
昼間は何もせずにただ寝ているだけで、毎日美味しい王宮のご馳走を一日三食食べているなんて……駄目だろ。人間として。
いや、夜は毎日激務をこなしているが……。
そのおかげもあって美味しい料理をどんだけ食べようが、デザートをたらふく食べようが、最近はカロリーをきちんと消化できている。
ダイエットにはやっぱり、運動ですね!
それでも、やっぱり朝から寝るんじゃなくて、ちゃんと日の昇るころには起きて、朝日を浴びたいと思う。
そう思って、”もう少し回数を減らしてほしい、もしくは毎日じゃなくて、週休四日制にしてほしい” とお願いをしたのだが、話が平行線のままである。
「まあまあ、その辺にしていただいて。お二人の間を取って『週3回、朝日が昇る2時間前には終わる』 というのはどうですか?」
同じく騎士団にいるジークが一向に話が終わらないのを見かねて妥協案を示した。
んー、それ、妥協案……か?
「それでは私は満足できない」
「でも今のままでは少々ユナ様が可愛そうでは?」
ジークの言葉に、少しの間考え込み、しぶしぶといった風ではあったが提案に了解を示した。
「わかりました。仕方ありませんね」
やった!! これで朝日を浴びれる!!
思わずガッツポーズをしてしまったら、目の前のエルストの笑顔が深まり、何故だか瞳の奥に氷山がそびえ立っているのが見えた気がした。
ひいいっ!! なんか笑顔が怖いっ!!
思わず後退れば、一気に距離を詰められ、耳元に唇を寄せられた。
「ならば、朝からすればいいだけですから。覚悟してくださいね」
いい終わりに、ついでとばかりに耳朶をペロリと舐められ、機嫌よく鍛錬場に戻っていった。
その後ろ姿に向かって心の中で叫んだ。
全然妥協案になってな~~い!!
***
ううっ。腰痛い……。
「ユナ、ユナ」
そう私を呼ぶ声が、でろでろに甘いのを感じてしまえば、私もしょうがないなぁって思ってしまうから私も大概に甘々だ。
私を呼んだ声の主はニコニコと何かにペンを走らせていた。
仕事かな? そんなにニコニコするほどに楽しい仕事なんて、今日は一体何の仕事なのかしら。
それにしても、イタしてすぐに仕事を始めるエルストさんは、真面目だなあ。
そんなことを思いながらベッドの上でゴロゴロしていたら、いつの間にかエルストが近くに来ていて、その手にはペンと紙が握られていた。
ん? 何? 私に仕事??
「はい、あなたもサインしてください」
「へっ? サイン?」
渡された紙を手に取り、さっと目を走らせた。
驚愕に目を見開く。
け、結婚承諾書!?
「えっ、あっ、」と口をハクハクさせる。
私のその様子を気にも留めず、どんどんと話を進めていく。
「日取りはいつにしましょうかね? なるべく早いほうがいいですよね」
「え? 日取り? あ、え……??」
「ああ、心配しなくても大丈夫ですよ。私に任せてください。全てあなた好みの結婚式になるように早急に手配しますんで」
自信たっぷりに微笑まれる。
「さあ、ここに、どうぞ」
迫力ある笑顔に押し切られてサインしてしまいました……。
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