その花びらが光るとき

もちごめ

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「すみません、先程までこちらにお見えだったのですが、ついさっきどこかへ向かわれてしまいました」
「そうですか……。訓練のお邪魔してしまってごめんなさい。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそお役に立てずにすみません。またどうぞいらしてください」
 
 訓練の途中だったのに快く対応してくれた、感じのいい青年にお辞儀をして騎士団の訓練所を後にする。


(ここにもいなかった。一体どこに行っちゃったんだろう?)

 手の中で握っていた小さな御守りを日の光にあてて眺める。

   余り布で作った小さな御守りには銀の糸で刺繍がしてある。
   日に翳すと反射してキラキラと光って見える。
   
(まるであの人の髪見たいに綺麗)


「それは、なんですか?」

 私の行動が気になったのだろう。私の斜め後ろに控える物静かなごつい人物を振り返る。

「これは、私が住んでいた国で『御守り』 と呼ばれていたものです」
「『御守り』 ですか。響きがいいですね。早くあの方にお渡しできるといいですね」


 にこりと微笑んで頷く。

 この人がこんなに話したのを初めて聞いたかも。


 ここに来てからずっと私の専属護衛をしてくれていたジークさんは今、私の護衛の任から降りている。代わりにローランス王子の近衛騎士の中から一人、臨時で私の護衛についてくれているのがこの人なんだが、なんというか、堅物が服着て歩いている感じ。

 話をすると、意外にも落ち着いた優しい響きの声で、見た目とは違ってとても優しいいい人なんだなと思う。


 この人が臨時で私の護衛をしているということは、きっといつかジークさんは戻ってきてくれるんだろう。


 あの日以来、ジークさんのことを考えるようになった。

 ジークさんの気持ちがどこにあるのかははっきりと聞いたわけではないから分からないけれど、そして自分の自惚れかもしれないけれど、きっと今のままではいけないんだと思う。

 分からない気持ちにいつまでも、もやもやとしたものを持ち続けたりせずに、一度きちんと話し合うべきだと思った。
だから、もう一度戻ってきてくれるのを待つ。


 ジークさんにちゃんと自分の気持ちを伝えよう。


 そしてあの人にも……。このお守りに想いを乗せていつか届けれるといいな。

 
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