その花びらが光るとき

もちごめ

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こんにちは、御無沙汰しております。
 侍女のミルリーでございます。

 実は昨日、わたくし、見てしまったんです。
 ユナ様が夜会でご気分を悪くされ、「早めに部屋で休まれる」 との連絡が私達侍女たちに入りましたので、心配で部屋に向かっていたのですが、その時に護衛騎士のジークがユナ様を後ろから襲い、首筋に噛みつくところを目撃してしまいました。

 一瞬、”ジークは吸血鬼なのか?!” とも思いましたが、口元から覗くのが白い牙ではなくて、赤い舌だったのでその疑いは晴れました。が、護衛が対象者を襲ってどうするんだ! って話ですよ。

 すぐに離れて去っていったのでことなきは得ましたが、ユナ様は首の後ろを押さえて真っ赤になっておられました。
 声を掛けようかと思いましたが、そのまま部屋に入られてしまったので、私も声を掛けることはせずにそのまま戻ることにしました。


 翌日、後ろでホックを止める形の洋服を持って行き、僭越ながら着替えを手伝わせていただきました。
 
 はい。ばっちり見ましたよ。
 赤いキスマーク。


 あの野郎、わざわざ見える場所に付けやがって。


 お優しいユナ様が気にされるかと思いまして、今日の髪型は片側に流すような髪型にさせていただきました。


 絶対に野獣たちに見せてやるものか。


 一通り身の回りを整え、「またあとで伺います」 と伝えれば、笑顔でお礼を言われる。
 今まで、他の地位あるご令嬢たちに仕えた時には、そんな風にお礼を言われる事なんてなかったです。
”自分が使うのは当たり前” ”思い通りに動いて当たり前” としか思っていない方たちがほとんどです。
 もちろん、そうでない方もきっといるとは思いますが、私は生憎、そのような方に恵まれたことはございません。そのような方はユナ様が初めてでした。

 まるで友のように笑いかけていただき、女子トークを楽しみ、一緒の席でお茶を飲む。
 すべてが初めてのことで、私は涙が出そうになりました。

 あの方のために服を用意する、食事を用意する、どれも「私なんかのために……」 とユナ様は遠慮されますが、私たち侍女は、毎日あの方のことを考えながら楽しく仕事をしています。
 私に初めて侍女の仕事の楽しさを味合わせてくれました。

 もちろん、そう思っているのが私だけではなく、侍女たち全員が同じ気持ちです。

 ですが、あの方の専属侍女の座は誰にも譲りません。
 私はあの方のためにできることなら何でもします。



 さてさて、ではさっそく向かうと致しますか。

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