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花が咲き誇る庭先で、侍女のミルリーと、騎士のジークとともに、聖獣でもある友の『チョコ』 とじゃれ合って穏やかに笑い合っていた。
あの儀式のあと、しばらくは微熱が出たり下がったりを繰り返して寝込んでいたのだけれど、今ではすっかりとよくなり、食欲も以前よりも旺盛というように全回復をしている。
とはいいつつも、寝込んでいた日々も長かったこともあり、体力面では回復途中ということもあり、すこしずつ外に出て、ゆっくりと回復させているところである。
今日は天気もいいので、『午後のおやつは外で食べましょう』 とミルリーさんからの提案もあり、外で午後のティータイムを楽しみながらチョコとじゃれついていた。
「もうすっかりとよくなられたようで安心いたしました」
「はい、もう全回復ですよ! その節は大変ご心配をおかけしました」
ジークさんに、元気ポーズを見せながら答える。
「本当に心配いたしました。私たち侍女たちも、騎士団の方たちも、チョコさんも、みんなユナ様の事を心配しておりました」
(そんなに心配してくださっていたのですね)
ミルリーさんの言葉に胸がジーンとする。
「ありがとうございます。でも、もう本当に大丈夫ですよ! 皆さん、本当に優しい方たちで、私って、ここで皆に守られてるんだなって感じました。私、今回のことでいろいろと考えてみたんです。この国に来てからもうだいぶ経つのにまだまだ知らない事だらけだなぁって。この国の事、女神の事、みんなのことも、色々と知りたいな、って思いました。ちゃんと知って、自分と向き合いたい」
「ユナ様、御立派です」
「私たちにできることがあれば何なりとお申し付けください。ユナ様が前に進んでおられることに大変うれしく思います。このジーク、どこまでもお供いたします」
突然その場に跪いて見上げてくる自分の専属護衛騎士。
いや、ジークさん。重いです……。
「二人ともありがとう。これからもよろしくね」
「きゅむ~~!」
「チョコも、これからもよろしく!」
皆で穏やかな穏やかに笑い合って、楽しい時間がゆっくりと過ぎていく。
「随分楽しそうだね。僕も混ぜてくれないかな?」
え、誰??
突然に予想外な第三者の声がした方を振り向いてみると、ややウエーブがかった金茶色の髪の、私とそんなに年が変わらないのでは? と思う青年が立っていた。
「レネットさま……」
なぜだかジェイドさんやミルリーさんがさっきまでとは違って顔色悪くしている。
どうしたのだろう? 二人とも急にお腹でも痛くなったのかな? と思ったのだが、二人は突然現れた青年に対し礼を取っていることに気づいた。
(わ、私も同じようにすればいいのかな?)
見よう見まねでぎこちなくスカートの裾を持ち、膝を折ろうとしていたのだが、途中で青年から声を掛けられた。
「ああ、いいよ、そのままで。僕、堅苦しいこと嫌いだからね。それよりも、君、女神さまだよね? 初めて見るけど、かわいいな~~。この前の儀式のときには、僕、体調悪くって欠席してたんだよね。だから今日、会いたくって来ちゃった」
そういう青年はなんていうか男らしいというよりは『かわいらしい』 という感じの人懐っこそうなタイプ。
「ねえ、名前、なんていうの? 教えてよ」
「あ、ユナって言います」
「ユナ、ね。うん、名前もかわいい。よろしくね」
握手を求められているのだろう。手を差し出されたので条件反射で私も手を差し出す。
『かわいい』 を連呼されているが、目の前の青年のほうがかわいいと思う。
「あ、そうそう、僕、第三王子のレネットっていうんだ。よろしくね」
……。えっつ。第三王子??
手を握りニコニコと私を見ている目の前の青年をややひきつった顔で見る。
この、青年が第三王子だったんだ……。
そのまま視線を動かすと、まだ顔色悪くしているジークさんたち。
納得……。お腹が痛いわけではなかったのね……。
さて、どうしましょう。
ニコニコと手を握られていますが、これ、自分から離していいのでしょうか?
不敬とかになったりしませんか?
なんでも、この人、第一王子と対立している人だよね?
そんな人が今ここにいるなんて、えらいこっちゃ!
あの儀式のあと、しばらくは微熱が出たり下がったりを繰り返して寝込んでいたのだけれど、今ではすっかりとよくなり、食欲も以前よりも旺盛というように全回復をしている。
とはいいつつも、寝込んでいた日々も長かったこともあり、体力面では回復途中ということもあり、すこしずつ外に出て、ゆっくりと回復させているところである。
今日は天気もいいので、『午後のおやつは外で食べましょう』 とミルリーさんからの提案もあり、外で午後のティータイムを楽しみながらチョコとじゃれついていた。
「もうすっかりとよくなられたようで安心いたしました」
「はい、もう全回復ですよ! その節は大変ご心配をおかけしました」
ジークさんに、元気ポーズを見せながら答える。
「本当に心配いたしました。私たち侍女たちも、騎士団の方たちも、チョコさんも、みんなユナ様の事を心配しておりました」
(そんなに心配してくださっていたのですね)
ミルリーさんの言葉に胸がジーンとする。
「ありがとうございます。でも、もう本当に大丈夫ですよ! 皆さん、本当に優しい方たちで、私って、ここで皆に守られてるんだなって感じました。私、今回のことでいろいろと考えてみたんです。この国に来てからもうだいぶ経つのにまだまだ知らない事だらけだなぁって。この国の事、女神の事、みんなのことも、色々と知りたいな、って思いました。ちゃんと知って、自分と向き合いたい」
「ユナ様、御立派です」
「私たちにできることがあれば何なりとお申し付けください。ユナ様が前に進んでおられることに大変うれしく思います。このジーク、どこまでもお供いたします」
突然その場に跪いて見上げてくる自分の専属護衛騎士。
いや、ジークさん。重いです……。
「二人ともありがとう。これからもよろしくね」
「きゅむ~~!」
「チョコも、これからもよろしく!」
皆で穏やかな穏やかに笑い合って、楽しい時間がゆっくりと過ぎていく。
「随分楽しそうだね。僕も混ぜてくれないかな?」
え、誰??
突然に予想外な第三者の声がした方を振り向いてみると、ややウエーブがかった金茶色の髪の、私とそんなに年が変わらないのでは? と思う青年が立っていた。
「レネットさま……」
なぜだかジェイドさんやミルリーさんがさっきまでとは違って顔色悪くしている。
どうしたのだろう? 二人とも急にお腹でも痛くなったのかな? と思ったのだが、二人は突然現れた青年に対し礼を取っていることに気づいた。
(わ、私も同じようにすればいいのかな?)
見よう見まねでぎこちなくスカートの裾を持ち、膝を折ろうとしていたのだが、途中で青年から声を掛けられた。
「ああ、いいよ、そのままで。僕、堅苦しいこと嫌いだからね。それよりも、君、女神さまだよね? 初めて見るけど、かわいいな~~。この前の儀式のときには、僕、体調悪くって欠席してたんだよね。だから今日、会いたくって来ちゃった」
そういう青年はなんていうか男らしいというよりは『かわいらしい』 という感じの人懐っこそうなタイプ。
「ねえ、名前、なんていうの? 教えてよ」
「あ、ユナって言います」
「ユナ、ね。うん、名前もかわいい。よろしくね」
握手を求められているのだろう。手を差し出されたので条件反射で私も手を差し出す。
『かわいい』 を連呼されているが、目の前の青年のほうがかわいいと思う。
「あ、そうそう、僕、第三王子のレネットっていうんだ。よろしくね」
……。えっつ。第三王子??
手を握りニコニコと私を見ている目の前の青年をややひきつった顔で見る。
この、青年が第三王子だったんだ……。
そのまま視線を動かすと、まだ顔色悪くしているジークさんたち。
納得……。お腹が痛いわけではなかったのね……。
さて、どうしましょう。
ニコニコと手を握られていますが、これ、自分から離していいのでしょうか?
不敬とかになったりしませんか?
なんでも、この人、第一王子と対立している人だよね?
そんな人が今ここにいるなんて、えらいこっちゃ!
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