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*3-1 ライル

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あれは学園を卒業したばかりのひよっこ魔術師が今日やって来るとなった日。

 仕事をそっちのけで師長自ら迎えに行くことにまず驚き、そして、そのまま帰ってこない連絡と、突然の一週間の有給休暇を取ることにも驚いた。


 師長の代わりにやって来たフィリップ殿下が『いいな~~、幼馴染との恋。桃色だよね~~。あっ、でも、今まで我慢してきた分、暴走しなきゃいいけどね~~。監禁とか、犯罪じゃん?  ねえ、君?』と話を振られましたが、正直、「は? 監禁? 誰のことを言っているんだ? それよりも、自分の仕事をしてくださいよ」と、この人ちょっと鬱陶しいな…、などと思ってたなんて、決してありません。はい。

 

 そして一週間後、ひよっこを連れて戻って来た師長は……まるで別人でした。


 僕たちのことが視界に入っていないんじゃないか? って思うくらいに師長自ら迎えに行ったひよっこ、ことミリアリアさんしか目に映していなく、その目は、僕達相手には一度も見せたことのない優しげな色を写していた。
えっ、ホント誰??

 常人ならばその色気にあてられればその場で服を脱ぎだすんじゃないか? というくらいのどぎついものがあるのだけれど、ミリアリアさんは魅了封じの魔法でも掛けてあるのかな?? 恥ずかしそうにはしているだけで、特になんともなさそうだ。


 ちなみに同じ部屋で働いている僕たちは、うっかり師長相手にその気になってもいけないので、こっそりと自分に魅了封じの魔法をかけてある。



 そして困ったことにミリアリアさんが来てからというもの、この魔術師棟で毎日のように追いかけっこをしているのですが、”いい大人が毎日仕事もせずに何やっているんですか!!” とは誰も言えない。

 追いかけっこの制限時間は十分のはずなのに、なぜか最低半日は戻らないことに文句をいう人間も、戻って来た時には、なぜか肌がツヤツヤになっていることに突っ込みを入れる人間も、ここには誰もいない。


 それならば僕がみんなの代表として一言物申してみる!! とその勢いに乗ったまま師長の元へ向かって本人を見つけた時、僕は見ました。


 ミリアリアさんの事を愛しさ溢れる優しい目で見ているのを。


 そうして思いだした。

 そういえば師長が以前よりも毎日楽しそうにしているのを。


 以前はどこか物足りないような、そして寂しそうな表情をすることもあった敬愛する上司が、今では毎日幸せそうにしているのならいいか。と思って、そっと踵を返した。



 師長があんなにも心の底から幸せそうに笑っているのはミリアリアさんが来てからだ。
 そうか。結局はみんな敬愛している師長の幸せそうな姿に喜んでいるんだ。


 そう思うと、ミリアリアさんに感謝だな。


「ミリアリアさんの分の仕事をみんなで回せ」とか、「ミリアリアさんに仕事を回した奴は厳罰だ」とか、理不尽な要望が突然降ってこようが、敬愛する上司の幸せのためなら喜んで受け入れましょう。




「はぁ、今日もミアは可愛いな~~」とつぶやく師長の顔がどんだけ緩んでいようとも……。



 ……あぁ、僕の敬愛する偉大なる『黒の賢者』 はどこへいった。




 そして、ミリアリアさん。お願いですから早くくっついちゃってくださいよぉぉぉぉぉ!!!   by魔術師一同

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