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㉙「手紙」
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㉙「手紙」
何度かけても繋がらない電話に業を煮やしたが、電話の向こうの機械音声に文句を言っても仕方がないと諦め、クリニックの事務員に渡された健からの紙封筒を手にとって見た。
なんの変哲もない白い紙封筒にボールペンで書かれた「本田希様」以外に封筒には何も書かれていない。
封筒を開けると、3枚のレポート用紙が入っていた。健の体格に似た丸っこい字がそこには綴られていた。
希ちゃんへ
白血病やなくてよかったな。
この1週間、よお不安と戦ったな。
希ちゃんは強い子やと思います。
もう、おいちゃんがいなくても大丈夫やな。
最初に京橋の公園で会ったとき、「オーラ」の話をぽろっとしてしもたんを覚えてるかな?
なぜか、おいちゃんには人の「オーラ」が見えます。
人はだれしも「希望」と「不安」を持って生活しています。
前にも言ったかわからんけど「笑う門には福来たる」と「病は気から」ちゅう言葉は当たるんやで。
あの時の希ちゃんは、「不安」を通り越して「絶望」の色の「オーラ」がでてたんよ。
「自殺」考えてる人の色してたんで、おいちゃんは声をかけたんよ。
「病気」で死ぬ人のオーラとは色がちゃうねんな。
がんセンターの診断書見させてもろて、おいちゃんが電話したんが、今日、行ったクリニックの先生なんよ。
おいちゃんが、希ちゃんは「白血病では死なへん」と思う根拠は、最初に診断を受けた年配の先生とがんセンターの若い先生は、同じ大学の先輩後輩いうことが、医師名簿調べてもろて、すぐに分かったんやな。
おいちゃんは、いろんな人の相談を受ける中に、「病気」にかかわるもんもたくさんあるねん。
お医者さんをけなす気はないねんけど、まあ、「誤診」ってちょこちょこあるねんな。
まあ、それはしゃあない部分もある。
ただ、患者さんを不安にすることが、その後いかに悪影響があるのかまでわかってるお医者さんは少ないねんな。
今回、希ちゃんが最初に行った病院で伝えた、「発熱」、「倦怠感」、「歯茎の出血」、「白血球・血小板の減少」っていうとこだけ見たら、「白血病」と診断されてもおかしくはあれへん。
がんセンターの先生は、先輩のお医者さんの診断をよう否定できへんかったんやと思うわ。
まあ、結果的に、「白」の結論やったんやから、責めたらんといたってな。
医学部の上下関係ってそういうもんやねん。
そこで、おいちゃんが思ったんは、1週間後の今日の再検査を受けるまで「心の健康」を維持することが希ちゃんには必要やっていうことやってん。
人は、「自分は病気や」って思うだけで「ガン」になることかてあるんやで。
せやから、美味しいものといろんな神様を頼ったんや。
あの京橋の公園で、美味しそうに串カツ食べてビールを飲む希ちゃんを見て、おいちゃんにできることは、「これしかない」って思ったんやな。
松阪で泊った旅館の歯ブラシで出血せえへんかったんで、もしかして、希ちゃんの歯ぐきの出血が始まったときに買い替えたっていう歯ブラシの「毛」が固いんとちゃうか?って思ったんや。
それが、今朝、希ちゃんの歯ブラシの「毛」を確認させてもろてた理由や。
すんごい「固い」毛の歯ブラシやったな。
あんなんで歯を磨いたら、おいちゃんかて出血するわ。
今度からは「普通」か「やわらかい」毛の歯ブラシに買い替えや。
今日、「じゃんじゃん」に居てるときに「白血病」やなくて「EBウイルス症候群」ってわかった。それも1週間で完治して、血液の状態も正常化してるってメールで連絡が来てたんで、安心して次に困ってる人のところに行くことができることになった。
「さよなら」言うと、別れがつらくなるから、こっそりおいちゃんは去るわな。
これからは、今まで通りの生活に戻って、しっかり勉強して、素敵な恋をして、誰か困ってる人がいたら助けられるやさしい希ちゃんになってな。
ちなみに、この手紙は、読み終わって「10秒後に消滅する」んで!
じゃあ、元気でな!
えっ?健さん、いなくなってしもたん?それにしても「10秒後に消滅する」って、スパイ映画やあるまいし、そんなことあるはずないやん。きっと、どこかに隠れて、私がおろおろすんのを見てるんとちゃうの!
そう思った瞬間、つむじ風が起こり、希の手から3枚のレポート用紙を奪うと、健の手紙は空高く舞い上がり道路の向こうに消えていった。
何度かけても繋がらない電話に業を煮やしたが、電話の向こうの機械音声に文句を言っても仕方がないと諦め、クリニックの事務員に渡された健からの紙封筒を手にとって見た。
なんの変哲もない白い紙封筒にボールペンで書かれた「本田希様」以外に封筒には何も書かれていない。
封筒を開けると、3枚のレポート用紙が入っていた。健の体格に似た丸っこい字がそこには綴られていた。
希ちゃんへ
白血病やなくてよかったな。
この1週間、よお不安と戦ったな。
希ちゃんは強い子やと思います。
もう、おいちゃんがいなくても大丈夫やな。
最初に京橋の公園で会ったとき、「オーラ」の話をぽろっとしてしもたんを覚えてるかな?
なぜか、おいちゃんには人の「オーラ」が見えます。
人はだれしも「希望」と「不安」を持って生活しています。
前にも言ったかわからんけど「笑う門には福来たる」と「病は気から」ちゅう言葉は当たるんやで。
あの時の希ちゃんは、「不安」を通り越して「絶望」の色の「オーラ」がでてたんよ。
「自殺」考えてる人の色してたんで、おいちゃんは声をかけたんよ。
「病気」で死ぬ人のオーラとは色がちゃうねんな。
がんセンターの診断書見させてもろて、おいちゃんが電話したんが、今日、行ったクリニックの先生なんよ。
おいちゃんが、希ちゃんは「白血病では死なへん」と思う根拠は、最初に診断を受けた年配の先生とがんセンターの若い先生は、同じ大学の先輩後輩いうことが、医師名簿調べてもろて、すぐに分かったんやな。
おいちゃんは、いろんな人の相談を受ける中に、「病気」にかかわるもんもたくさんあるねん。
お医者さんをけなす気はないねんけど、まあ、「誤診」ってちょこちょこあるねんな。
まあ、それはしゃあない部分もある。
ただ、患者さんを不安にすることが、その後いかに悪影響があるのかまでわかってるお医者さんは少ないねんな。
今回、希ちゃんが最初に行った病院で伝えた、「発熱」、「倦怠感」、「歯茎の出血」、「白血球・血小板の減少」っていうとこだけ見たら、「白血病」と診断されてもおかしくはあれへん。
がんセンターの先生は、先輩のお医者さんの診断をよう否定できへんかったんやと思うわ。
まあ、結果的に、「白」の結論やったんやから、責めたらんといたってな。
医学部の上下関係ってそういうもんやねん。
そこで、おいちゃんが思ったんは、1週間後の今日の再検査を受けるまで「心の健康」を維持することが希ちゃんには必要やっていうことやってん。
人は、「自分は病気や」って思うだけで「ガン」になることかてあるんやで。
せやから、美味しいものといろんな神様を頼ったんや。
あの京橋の公園で、美味しそうに串カツ食べてビールを飲む希ちゃんを見て、おいちゃんにできることは、「これしかない」って思ったんやな。
松阪で泊った旅館の歯ブラシで出血せえへんかったんで、もしかして、希ちゃんの歯ぐきの出血が始まったときに買い替えたっていう歯ブラシの「毛」が固いんとちゃうか?って思ったんや。
それが、今朝、希ちゃんの歯ブラシの「毛」を確認させてもろてた理由や。
すんごい「固い」毛の歯ブラシやったな。
あんなんで歯を磨いたら、おいちゃんかて出血するわ。
今度からは「普通」か「やわらかい」毛の歯ブラシに買い替えや。
今日、「じゃんじゃん」に居てるときに「白血病」やなくて「EBウイルス症候群」ってわかった。それも1週間で完治して、血液の状態も正常化してるってメールで連絡が来てたんで、安心して次に困ってる人のところに行くことができることになった。
「さよなら」言うと、別れがつらくなるから、こっそりおいちゃんは去るわな。
これからは、今まで通りの生活に戻って、しっかり勉強して、素敵な恋をして、誰か困ってる人がいたら助けられるやさしい希ちゃんになってな。
ちなみに、この手紙は、読み終わって「10秒後に消滅する」んで!
じゃあ、元気でな!
えっ?健さん、いなくなってしもたん?それにしても「10秒後に消滅する」って、スパイ映画やあるまいし、そんなことあるはずないやん。きっと、どこかに隠れて、私がおろおろすんのを見てるんとちゃうの!
そう思った瞬間、つむじ風が起こり、希の手から3枚のレポート用紙を奪うと、健の手紙は空高く舞い上がり道路の向こうに消えていった。
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