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『私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病の女の子の一週間の物語~』

「はじめに」
 皆さんは、「がんサバイバー」って言葉聞いたことがありますか?
大手がん保険会社のCMなんかでよく使われるんで、みんな一度は耳にしたことはあると思います。
 直訳すると「がん生存者」ってなりますね。まあ、その言葉から「がんを患い、治療を終え完治した人」っていうイメージになると思います。
 
 「がんサバイバー」と言う言葉は、実際には、「がん治療を行った人」だけでなく、「がんと診断されたばかりの人」も「治療中・経過観察中の人」も含む、「がん患者」すべての人を意味します。日本では550万人以上と言われる「がん体験者」とされます。
 アメリカでは、「がん体験者」だけでなく、その家族、友人、知人、看護者、介護者も含めた幅広い意味で使われています。
 
 こうした言葉が広まった背景には、最近の医療技術、医薬技術の進歩・進化により、20世紀の時代には「不治の病」とされた「がん」も今では「治る病気」となりつつあることがあげられます。2022年11月に発表された最新のがん患者の5年相対生存率(2009年~2011年調査)は男性で62。0%、女性で66.9%となっています。
 ちなみに一生のうちに「がん」と診断される確率は、2019年データで、男性65.5%、女性51.2%です。ふたりにひとり以上、「がん」にかかるんですね。そして、がんでの死亡率は、2021年データで男性26.2%、女性17.7%ですね。
 ここだけ見てると、がんも「治る病気」になりつつあるのかと思えてきますね。
 
 しかし、「がん」とひとくくりにできないのが現実で、一番生存率の低い「すい臓がん」の5年相対生存率は男女ともに8%台ですし、「胆のう・胆管がん」は男性は26.8%、女性は22.1%と極端に低く、「血液のがん」と言われる「白血病」は、男性は43.4%、女性は44.9%と厳しい数字が並びます。
 
 もちろん、それらの厳しい「がん」も少しずつ、生存率は上がってきてはいるのですが、「副作用などの身体的な問題」だけでなく「再発への恐れなどの精神的な問題」、「家族・職場などの接し方といった社会的問題」、「高額化する治療費の問題」など、「がん」が発見されてから生涯にわたってそれらの問題と直面することになるのです。
 
 「がんサバイバー」が直面する多種多様な問題を、医療だけでなく社会全体で取り組むために、日本では「がん対策推進基本計画」で、「がんサバイバーシップ」の支援が目標のひとつとして掲げられました。
 「がんサバイバー」の不安や疑問を解消するために「がん相談支援センター」での相談体制の確立や「がんサバイバー」による「ピア・サポート」の充実が図られていますが、まだ十分なものではありません。
 がんになっても安心して暮らせる社会の実現の為に多くの取り組みが行われていることを少しでも知ってもらえたらと思います。
 
 今回の主人公、本田希《ほんだ・のぞみ》は、現在は「社会福祉士」、「精神保健福祉士」の資格を持つMSWメディカル・ソーシャル・ワーカーという医療にまつわる相談援助する仕事をしています。
 希がMSWメディカル・ソーシャル・ワーカーを目指すきっかけとなった、15年前の「白血病」の診断を受けてから1週間の物語です。




 
 重たい部分も多少出てきますが、最後はハッピーエンドで締めくくりますので、ゆるーくお読みいただければ幸いです。
 
 当作品を「劇脚本」に仕上げるにあたり、ご協力いただきました「赤井翼」先生、「のーの」先生、「ぽよぽよ」先生、「ねこ大好き」さんに感謝いたします。
 
令和5年4月吉日

新尾広


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