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「2024年12月末、フロリダ」

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「2024年12月末、フロリダ」

 2024年12月末、いろいろと世界的事件が多く起こった2024年も残すところ数日となっていた。
フロリダ州パームビーチオーシャンブルヴァード1100のS番地。1924年から1927年にかけてフロリダの女性商人「マージョリー・メリウェザー・ポスト」により建てられた「マー・ア・ラ(※スペイン語。英語では「Sea to Lake」の意)」は、合衆国大統領や政府高官の冬の間の別荘としても使える設計になっている建物文化財である。
1973年、ポストの死後、合衆国に寄贈されたが、使用されることなく1980年まで官邸として使用されることなく、ポスト一族に返還された経緯がある。1万平方メートルの土地に126の部屋があり、ホテルさながらの客室やスパも装備されている。
1985年12月に、当時不動産王としてアメリカで頭角を表していた合衆国大統領がポスト一族から購入し、大統領任期の4年間は冬のホワイトハウスとして使用していた。

12月でも気温は30度ほどあり、海からの風通しもよくカラっとした気候の別荘のビーチに二台のビーチベッドが並んでいた。一つのベッドには大柄で白髪を7・3に分けた男が、星条旗柄の短パンで寝そべっている。もう一台のベッドには、少し薄毛で小柄だが、鍛え上げられた胸筋にきれいに6つにわれた腹筋の男が鮮やかな「白・青・赤」の三色横縞の短パンに黒いサングラスで日光浴をしている。ベッドの周辺には8人のSPが身構えている。
真っ青な空の元、大柄な男が
「なあ、ヴォロージャ(「ウラジミール」という名の一般的なロシアでの愛称)、フロリダはいいだろ?暖かくて穏やかで、2か月前がウソみたいだろ?モスクワやサンクトペテルブルグはもう冬だよな…。
 大きい荷物を下ろして、これからはここでゆっくり過ごそうな。そのうち、ゴルフも教えてやるしな。」
「あぁ、ミスター、お前さんのおかげで、すっかり気持ちが楽になったよ。ミスターに紹介してもらったテキサス大学MDアンダーソンがんセンター(※University of Texas MD Anderson Cancer Center)での甲状腺がんの治療も順調に終わったよ。
 アメリカ人的発想で言うとリタイヤ後のセカンドライフをゆっくりと楽しむことにするよ。」
小柄なマッチョが答えた。

 大柄な男はビーチベッド横の炭酸飲料を、小柄な男はウオッカのショットグラスをカチンと当て、
「平和な世界に乾杯!」
と言い、一気にグラスをあおった。

 「なあ、ヴォロージャ、お前さん、2000億ドルともいわれる個人資産のほとんどをウクライナに寄付したんだって?思い切ったことしたもんだなぁ…。」
「まあ、いいのさ。今となっては、使うひまもない2000億ドルよりも、ミスターのところでのんびり過ごす一年あたりワンミリオンダラーで十分だ。釣りもゴルフもそんなに金がかかるもんじゃないしな。
ところでミスターはこれからどうするんだ?「ミスタープレジデント」に戻って忙しいんだろ?」
「そうだな、ヴォロージャも「ミスター」だけじゃ呼びにくいだろ。俺は、あと4年頑張るよ。まあ、「ドナルド」って呼んでいいのは亡くなった「シンゾー」だけだから、ヴォロージャには、きちんと「ミスタープレジデント」って呼んでもらえるようにもう一仕事するさ。」
「相変わらず、すごい馬力だな。そりゃ、D/Sはともかく、オルガルヒなんか問題じゃないよな!」
「あぁ、俺は、若いもんや罪のない人達が戦争で死ぬのを見るのが一番嫌なんだ。まあ、ウクライナ戦争は…。まあ、ヴォロージャは、D/Sにはめられた「被害者」だって俺は思ってるぜ。」
 合衆国大統領は、ロシアの元大統領に力強く言った。

 「そうだな、ミスターが大統領やってる間は、大きな戦争や紛争は無かったんだもんな。まあ、インチキマスコミがミスターをこぞって悪もん扱いにしたが、ナショナリストではあるが平和主義者でビジネスマンだもんな。」
「そりゃそうだ。金はまっとうなビジネスで稼ぐもんだ。人の命を金に換えるような商売は「犬の糞」か「猫のおしっこ」だ。敵はD/Sってとこだけはこの8年、ヴォロージャと同じさ。これからも戦い続けるさ。」
「そうだな、俺が言うのもおかしい話だが、ミスター、あんたなら世界を「戦争の無い平和」に導けるさ。
ところで、夏にいきなり俺のところにメール送ってきやがったヤーパンの高校生はどうしてるんだ?今も連絡はあるのかい?できれば、一度会ってお礼が言いたいんだが…。」
ベッドに腰掛け直し、面と向かって聞いた。

「あぁ、俺のマブダチで腐れ縁の「キム・ドク」、まあ、日本では「タイガー戸口」っていう元プロレスラーなんだが、やつの会社に一人は就職するみたいだから、一度連絡とってみようか?
 キム・ドクから俺もヴォロージャと直接話してくれって言われた時は、そのきっかけが日本の高校生のサバイバルゲーマーでロシア軍の傭兵としてウクライナに行ってるって、ぶっ飛んだ話で驚いたよ。
 ドネツクでロシア軍の作戦参謀車奪って、キム・ドクに「元大統領からロシア大統領に戦争をやめるように話をしてくれって、ヴォロージャのメールアドレスと個人携帯の番号を送ってやきがったんだったな。」
「そうだったよな、上げた拳の下ろし先がなかった中、高校生がシナリオを作ったんだって?個人資産20兆円をウクライナの復興に充てて戦争辞めろとさ。なぜか俺の甲状腺がんのことまで知ってて、ミスターにアンダーソンがんセンターを紹介してもらうとこまで…。
 どこまで行ってもウクライナではなく、オルガルヒの上にいるD/Sとの代理戦争が続き、本当に「核」を使う直前まで来ていたから、本当に助かったよ。
 いま、ミスターと一緒に、「暗殺」におびえることなく、こうやって日光浴できてるんだからな。」

 青い空の西側を見つめてミスターはヴォロージャに言った。
「俺のとこには、元大統領がウクライナ戦争を止めれば、世界的なインフレは収まるし、大統領選挙で俺は勝つだろうってさ。来年の「ノーベル平和賞」もゲットできるとさ。そうなれば、4年間には元の椅子に座れるってシナリオが来てたよ。
 まあ、CIAからのリポートでは、「政治学」や「国際経済学」やってるインテリ学生じゃないみたいだったがな。工業高校に通う4人の男の子と2人のキュートな女の子だったよ。本当の「ノーベル平和賞」は日本の高校生6人のもんだな。
 まあ、3月に彼らの学校が休みに入ったら、キム・ドクと一緒に招待しようと思ってるから、ヴォロージャも一緒に飯でも食うか!」
「あぁ、いいなそれ。俺も極上の「サーロ」と「ボルシチ」を用意させてもらうよ。3月が楽しみだな!」
 二人は真っ青な青空の下で大きな声で笑った。


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