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⑦ 「梨継弾嗣《なしつぎ・たまつぐ》」
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⑦ 「梨継弾嗣《なしつぎ・たまつぐ》」
「お姉さん、車で来られてるんですか?まずは荷物を車に運びましょう。駐車場はどこですか?ゴムは半分に切れちゃってますから大型モニター2台だけ縛りつけて、一台は僕が持ちますから、段ボール箱は持ってください。眼鏡無しで歩くのも大変でしょうから、僕の左肘をつかんでください。ゆっくり歩きますんで安心して下さい。」
と男が声をかけてくれたので、駐車場の場所を説明し言葉に甘えた。
男の名は「梨継弾嗣」。21歳の学生とのことだった。如志も「私は里景如志といいます。コンピュータ専門学校の講師をしています。迷惑おかけしてすみません。」と簡単に自己紹介をして駐車場に着くと、弾嗣は荷物を如志の車の後部座席に積み込むと一瞬考えて
「里景さん、眼鏡無しじゃ運転できないでしょうから何ならご自宅まで運転しましょうか?僕、京阪の守口方面なんですけどご自宅はどちらになりますか?」
という申し出の声に「下心」的なものは感じなかった。
「あの…、門真の方なんですけど…。駅は古川橋から10分くらいのところです。本当にご迷惑じゃないですか?」
恐縮して答える如志に
「じゃあ、全然問題ないですよ。同じ方向ですから僕も地下鉄代が浮きますので気にしないでください。見たところ、中古品でせっかく安く揃えはったのに運転代行使ってしもたら何のために日本橋に買いに来たのかわからなくなっちゃいますもんね。僕の方は全然ノープロです。」
弾嗣はさわやかに返答した。
あたりは暗くなりかけ、このままこの場で別れて車を置いていくにしても、地下鉄の駅まで眼鏡無しで歩くこともできないと感じた如志は弾嗣の申し出を受け入れることにして、頭を下げた。
「では、すみませんけどお願いしちゃっていいですか?お礼はさせてもらいますので。」
運転席に弾嗣は乗り込み、助手席に座った如志に「カーナビ使わせてもらっていいですか?決して「ストーキング」なんかしませんのでご自宅の住所を教えてください。」と明るい声で言うので、如志は素直に住所を口にした。(まあ、こんな私にストーキングする男の人なんかいるわけないし大丈夫よね…。)と少し心配になったが「やばいと思った時に備えて「110番」をセットして発信ボタンをいつでも押せるようにしておいてもらっても大丈夫ですよ。カラカラカラ。」と冗談交じりに予防線を張ってくれるので緊張感はほぐれた。
車は日本橋から大阪中央環状線方面へと東へ向かい、中環に入ると北上した。車内は、砕けた雰囲気で弾嗣が「僕、女の人とこんなに話すの初めてなんですよ。ずっと引きこもってたんです。今は、大学の工学部でプログラマー目指してるんですけど友達ができなくて…。」と自分の話を始めた。
「へー、私も「コミュ障」だったんですよ。お父さんの海外転勤で10歳から10年アメリカだったんで、そりゃもう大変で…。まあ、今も専門学校の同僚の先輩くらいしか話し相手はいないんですけどね。男の人は、お父さんとアメリカでの大学時代までの先生とスタディーグループの仲間くらいで、こんなおしゃべりするのは凄く久しぶりなんです。梨継さんが理系の人で良かった。私、理系の人としか「会話」が成り立たない「理系女子」なんで…。」
と正直に話すと、ハンドルを握ったまま冗談を返した。
「僕も同じですよ。苗字の「梨継」は「果物の梨」に「継続の継」で名前の「弾嗣」は「弾丸の弾」に「後継ぎ」の意味の「継嗣」の「嗣」なんで「梨継弾嗣」なんて呼ばれてるんですよ。まあ、少なくとも「文芸男子」じゃないですけどね。カラカラカラ。」
「へー、名前の読みを変えると梨継さんって「理系男子」になのね。偶然だけど私の苗字は「ふる里の里」に「景色の景」、名前は「女偏に口の如」で「志しの志」なんで梨継さんと同じで音訓読み替えると「里景如志」になるんですよ。まさに「理系女子」そのものなんですけどね。ケラケラケラ。」
笑いながら返事をした如志に弾嗣は「何か、偶然にしてはできすぎてますね。」と笑顔を見せるが、眼鏡の無い如志にはその笑顔は伝わらない。
夕方の渋滞もあり、門真にある如志のマンションまで小1時間かかったが、楽しい「理系トーク」で盛り上がりあっという間に着いたような気がした。マンションの前に車を停めると、弾嗣は先に後部席に積んだ機材を降ろし、如志の指定する隣の月極駐車場に止めに行った。
「後ろ向いてますから、オートロック開けてください。」弾嗣の言葉に従って如志がマンションの玄関ドアを開けると、手際よく弾嗣は機材をエレベーターホールの前に移動させた。二人でエレベーターに積み込むと如志の部屋のフロアーまで上がった。
段取りよく、機材をエレベータから下すと弾嗣は如志の部屋の前まで4往復してドアの前まで運ぶと弾嗣が言った。
「里景さんみたいな「美人」とおしゃべりできて楽しかったです。じゃあ、これで失礼します。」
(えっ、本当に「下心」無しなんだ。手伝ってくれただけでなく、こんな私に「美人」って言ってくれたんだから「御礼」の一つもしないと罰が当たっちゃうわよね。)と思った如志は
「迷惑じゃなかったら、ご飯くらい食べていってくださいよ。大したもんは作れないけどせめてもの私の気持ちですから。」
と弾嗣の袖をつかみ、玄関のドアにカギをさした。
ドアを開けると「女性っぽくない」如志の部屋に弾嗣を招き入れた。如志は手探りでリビングに入ると分厚いガラスレンズの予備の眼鏡を手に取りかけると、改めて弾嗣に向き直り「本当にありがとう。助かりました。」と頭を下げた。
丁寧にお辞儀をした後、顔を上げると如志は固まった。
(えっ、祖父斗先生?いや、祖父斗先生はアメリカにいるはずだし、もう30歳。世の中に「3人は似た人がいる」って言うけど、10年前の祖父斗先生にそっくり。もしかして兄弟?でも、苗字が全然違うし…。)如志が言葉に詰まっていると「どうしました?僕の顔に何かついてますか?」と弾嗣が首を傾げた。
「いやいや、梨継さんが「初恋の人」…、いや「昔の知り合い」にそっくりだったから驚いただけ。」と冗談でかわしたつもりだが如志は顔が真っ赤になるのを感じた。如志は慌てて、弾嗣に背を向けキッチンに向かうと「梨継さん好き嫌いはある?パスタでいいですか?それとも少し時間もらえるならオムライスでも作ろうと思うんだけど…。」と冷蔵庫を開き、冷気で火照った顔を冷やした。
「あっ、オムライスできるんですか?僕、オムライス大好きなんですよ!」
弾嗣が屈託のない笑顔で答えた。その笑顔に祖父斗の面影を見て「ビビッ」ときた。(あっ、失敗したかな?ご飯炊いて、それから作ってたら1時間かかってしまう…。とりあえずビールでも出しておけばいいかな?)
上ずった声で「梨継さん、ビール飲む?それとも缶チューハイの方がいいかな?今からご飯炊くんで少し飲みながら待っててもらっていいですか?」とビールとチューハイの缶を持って、弾嗣に差し出した。
弾嗣はビールを受け取ると「いただきます。」と会釈した。如志はビアグラスを棚から取り出すと手渡した。その時かすかに触れた指先に再び「微電流」が流れた。
「そこのソファーでゆっくりしててください。テレビは自由につけてもらっていいですからね。」
如志は、スナック菓子を皿に入れるとソファーテーブルに置いた。(あー、間近で見ても祖父斗先生に似てるわ!あー、ドキドキが止まらないわ。)
如志がキッチンに戻り米を研ぎだすのを見て、弾嗣はビールをグラスに入れるとリビングを見渡した。ぬいぐるみやアイドルのポスターなど女子部屋をイメージさせるものは何もなく、大きめのパソコンラックと英語の専門書が並ぶ本棚だけが目立っている。
一生懸命、調理の準備に入っている如志に気を遣い、弾嗣が声をかけた。
「里景さん、今日購入した機材ですけど、よかったらセッティングしておきましょうか?ざっと4、50分かかると思いますんでちょうどいいんじゃないでしょうか?」
研いだ米を電気ジャーに入れ、玉ねぎと人参としめじを取り出した如志は「えー、そんなの悪いわよ。」と断ったものの「気にしないでください。慣れてますから。ワイドモニターを中心に配置して、4Kモニターを右手前。ノーマルモニターを左側で上下にセッティングでいいですよね。」と作業に取りかかり始めた。
その様子を見て「ごめんね。送ってもらっただけでなくいろいろと手伝ってもらっちゃって。その分、美味しいもの作らせてもらうからね!」と如志はいつか祖父斗に食べてもらおうと思っていた手料理を作っている気分になり少し楽しくなった。
作業に入った弾嗣の手がふと停まった。TSUBASAの静音ケースの「パスワード」と「キズナアイ」のステッカーを指でなぞると如志の背中にむかって尋ねた。
「里景さん、これってNECのTSUBASAですよね。やっぱり専門学校の講師だとこれくらいのものを使われるんですか?あと里景さん「キズナアイ」お好きなんですか?」
「あぁ、それね、この間、門真のリサイクルショップで格安で買ったのよ。私の給料じゃとても新品は買えないわよ。梨継さん、詳しいのね。そのステッカーの女の子「キズナアイ」っていうの?買った時に貼ってあったのよ。私はもっぱら「2次元イケメン」派よ。ケラケラケラ。」
包丁を握りながら如志が答えると
「僕、昔、このケースに貼ってある「キズナアイ」って、「本物のAIキャラ」だと思ってたんですよ。いつかこんなAIキャラが作りたくてプログラミングを始めたんです。」
とモニターを結線しながら弾嗣は「ちょっと、レベルが低い話で恥ずかしいんですけど…。」と「バーチャルアイドルキャラクター」に対する昔話を始めた。「あー、わかるよ。私も「イケメン戦国」の武将や「アイドル育成ゲーム」のキャラにときめいてたもんねー。一緒、一緒!」と盛り上がっている間に、如志手作りの「ポン酢で食べる和風オムライス」が仕上がった。
如志もビールを取り出すと、「今日は本当にありがとうね。梨継さんの優しさに乾杯!」と弾嗣とグラスを軽くあてると、ささやかな夕食が始まった。会話は「技術論」に入り、プログラム生成の如志の話と既存ソフトプログラムのアッセンブル処理の弾嗣の話で会話が途切れることは無かった。最後にラインのアドレス交換を行うと「ごちそうさまでした。」と丁寧にお礼した弾嗣は如志のマンションを後にした。
いつも応援ありがとうございます!
今日から私のイラストでーす!
最初は「弾嗣くん」でーす。
「キャラT」がポイントです(笑)。
「お姉さん、車で来られてるんですか?まずは荷物を車に運びましょう。駐車場はどこですか?ゴムは半分に切れちゃってますから大型モニター2台だけ縛りつけて、一台は僕が持ちますから、段ボール箱は持ってください。眼鏡無しで歩くのも大変でしょうから、僕の左肘をつかんでください。ゆっくり歩きますんで安心して下さい。」
と男が声をかけてくれたので、駐車場の場所を説明し言葉に甘えた。
男の名は「梨継弾嗣」。21歳の学生とのことだった。如志も「私は里景如志といいます。コンピュータ専門学校の講師をしています。迷惑おかけしてすみません。」と簡単に自己紹介をして駐車場に着くと、弾嗣は荷物を如志の車の後部座席に積み込むと一瞬考えて
「里景さん、眼鏡無しじゃ運転できないでしょうから何ならご自宅まで運転しましょうか?僕、京阪の守口方面なんですけどご自宅はどちらになりますか?」
という申し出の声に「下心」的なものは感じなかった。
「あの…、門真の方なんですけど…。駅は古川橋から10分くらいのところです。本当にご迷惑じゃないですか?」
恐縮して答える如志に
「じゃあ、全然問題ないですよ。同じ方向ですから僕も地下鉄代が浮きますので気にしないでください。見たところ、中古品でせっかく安く揃えはったのに運転代行使ってしもたら何のために日本橋に買いに来たのかわからなくなっちゃいますもんね。僕の方は全然ノープロです。」
弾嗣はさわやかに返答した。
あたりは暗くなりかけ、このままこの場で別れて車を置いていくにしても、地下鉄の駅まで眼鏡無しで歩くこともできないと感じた如志は弾嗣の申し出を受け入れることにして、頭を下げた。
「では、すみませんけどお願いしちゃっていいですか?お礼はさせてもらいますので。」
運転席に弾嗣は乗り込み、助手席に座った如志に「カーナビ使わせてもらっていいですか?決して「ストーキング」なんかしませんのでご自宅の住所を教えてください。」と明るい声で言うので、如志は素直に住所を口にした。(まあ、こんな私にストーキングする男の人なんかいるわけないし大丈夫よね…。)と少し心配になったが「やばいと思った時に備えて「110番」をセットして発信ボタンをいつでも押せるようにしておいてもらっても大丈夫ですよ。カラカラカラ。」と冗談交じりに予防線を張ってくれるので緊張感はほぐれた。
車は日本橋から大阪中央環状線方面へと東へ向かい、中環に入ると北上した。車内は、砕けた雰囲気で弾嗣が「僕、女の人とこんなに話すの初めてなんですよ。ずっと引きこもってたんです。今は、大学の工学部でプログラマー目指してるんですけど友達ができなくて…。」と自分の話を始めた。
「へー、私も「コミュ障」だったんですよ。お父さんの海外転勤で10歳から10年アメリカだったんで、そりゃもう大変で…。まあ、今も専門学校の同僚の先輩くらいしか話し相手はいないんですけどね。男の人は、お父さんとアメリカでの大学時代までの先生とスタディーグループの仲間くらいで、こんなおしゃべりするのは凄く久しぶりなんです。梨継さんが理系の人で良かった。私、理系の人としか「会話」が成り立たない「理系女子」なんで…。」
と正直に話すと、ハンドルを握ったまま冗談を返した。
「僕も同じですよ。苗字の「梨継」は「果物の梨」に「継続の継」で名前の「弾嗣」は「弾丸の弾」に「後継ぎ」の意味の「継嗣」の「嗣」なんで「梨継弾嗣」なんて呼ばれてるんですよ。まあ、少なくとも「文芸男子」じゃないですけどね。カラカラカラ。」
「へー、名前の読みを変えると梨継さんって「理系男子」になのね。偶然だけど私の苗字は「ふる里の里」に「景色の景」、名前は「女偏に口の如」で「志しの志」なんで梨継さんと同じで音訓読み替えると「里景如志」になるんですよ。まさに「理系女子」そのものなんですけどね。ケラケラケラ。」
笑いながら返事をした如志に弾嗣は「何か、偶然にしてはできすぎてますね。」と笑顔を見せるが、眼鏡の無い如志にはその笑顔は伝わらない。
夕方の渋滞もあり、門真にある如志のマンションまで小1時間かかったが、楽しい「理系トーク」で盛り上がりあっという間に着いたような気がした。マンションの前に車を停めると、弾嗣は先に後部席に積んだ機材を降ろし、如志の指定する隣の月極駐車場に止めに行った。
「後ろ向いてますから、オートロック開けてください。」弾嗣の言葉に従って如志がマンションの玄関ドアを開けると、手際よく弾嗣は機材をエレベーターホールの前に移動させた。二人でエレベーターに積み込むと如志の部屋のフロアーまで上がった。
段取りよく、機材をエレベータから下すと弾嗣は如志の部屋の前まで4往復してドアの前まで運ぶと弾嗣が言った。
「里景さんみたいな「美人」とおしゃべりできて楽しかったです。じゃあ、これで失礼します。」
(えっ、本当に「下心」無しなんだ。手伝ってくれただけでなく、こんな私に「美人」って言ってくれたんだから「御礼」の一つもしないと罰が当たっちゃうわよね。)と思った如志は
「迷惑じゃなかったら、ご飯くらい食べていってくださいよ。大したもんは作れないけどせめてもの私の気持ちですから。」
と弾嗣の袖をつかみ、玄関のドアにカギをさした。
ドアを開けると「女性っぽくない」如志の部屋に弾嗣を招き入れた。如志は手探りでリビングに入ると分厚いガラスレンズの予備の眼鏡を手に取りかけると、改めて弾嗣に向き直り「本当にありがとう。助かりました。」と頭を下げた。
丁寧にお辞儀をした後、顔を上げると如志は固まった。
(えっ、祖父斗先生?いや、祖父斗先生はアメリカにいるはずだし、もう30歳。世の中に「3人は似た人がいる」って言うけど、10年前の祖父斗先生にそっくり。もしかして兄弟?でも、苗字が全然違うし…。)如志が言葉に詰まっていると「どうしました?僕の顔に何かついてますか?」と弾嗣が首を傾げた。
「いやいや、梨継さんが「初恋の人」…、いや「昔の知り合い」にそっくりだったから驚いただけ。」と冗談でかわしたつもりだが如志は顔が真っ赤になるのを感じた。如志は慌てて、弾嗣に背を向けキッチンに向かうと「梨継さん好き嫌いはある?パスタでいいですか?それとも少し時間もらえるならオムライスでも作ろうと思うんだけど…。」と冷蔵庫を開き、冷気で火照った顔を冷やした。
「あっ、オムライスできるんですか?僕、オムライス大好きなんですよ!」
弾嗣が屈託のない笑顔で答えた。その笑顔に祖父斗の面影を見て「ビビッ」ときた。(あっ、失敗したかな?ご飯炊いて、それから作ってたら1時間かかってしまう…。とりあえずビールでも出しておけばいいかな?)
上ずった声で「梨継さん、ビール飲む?それとも缶チューハイの方がいいかな?今からご飯炊くんで少し飲みながら待っててもらっていいですか?」とビールとチューハイの缶を持って、弾嗣に差し出した。
弾嗣はビールを受け取ると「いただきます。」と会釈した。如志はビアグラスを棚から取り出すと手渡した。その時かすかに触れた指先に再び「微電流」が流れた。
「そこのソファーでゆっくりしててください。テレビは自由につけてもらっていいですからね。」
如志は、スナック菓子を皿に入れるとソファーテーブルに置いた。(あー、間近で見ても祖父斗先生に似てるわ!あー、ドキドキが止まらないわ。)
如志がキッチンに戻り米を研ぎだすのを見て、弾嗣はビールをグラスに入れるとリビングを見渡した。ぬいぐるみやアイドルのポスターなど女子部屋をイメージさせるものは何もなく、大きめのパソコンラックと英語の専門書が並ぶ本棚だけが目立っている。
一生懸命、調理の準備に入っている如志に気を遣い、弾嗣が声をかけた。
「里景さん、今日購入した機材ですけど、よかったらセッティングしておきましょうか?ざっと4、50分かかると思いますんでちょうどいいんじゃないでしょうか?」
研いだ米を電気ジャーに入れ、玉ねぎと人参としめじを取り出した如志は「えー、そんなの悪いわよ。」と断ったものの「気にしないでください。慣れてますから。ワイドモニターを中心に配置して、4Kモニターを右手前。ノーマルモニターを左側で上下にセッティングでいいですよね。」と作業に取りかかり始めた。
その様子を見て「ごめんね。送ってもらっただけでなくいろいろと手伝ってもらっちゃって。その分、美味しいもの作らせてもらうからね!」と如志はいつか祖父斗に食べてもらおうと思っていた手料理を作っている気分になり少し楽しくなった。
作業に入った弾嗣の手がふと停まった。TSUBASAの静音ケースの「パスワード」と「キズナアイ」のステッカーを指でなぞると如志の背中にむかって尋ねた。
「里景さん、これってNECのTSUBASAですよね。やっぱり専門学校の講師だとこれくらいのものを使われるんですか?あと里景さん「キズナアイ」お好きなんですか?」
「あぁ、それね、この間、門真のリサイクルショップで格安で買ったのよ。私の給料じゃとても新品は買えないわよ。梨継さん、詳しいのね。そのステッカーの女の子「キズナアイ」っていうの?買った時に貼ってあったのよ。私はもっぱら「2次元イケメン」派よ。ケラケラケラ。」
包丁を握りながら如志が答えると
「僕、昔、このケースに貼ってある「キズナアイ」って、「本物のAIキャラ」だと思ってたんですよ。いつかこんなAIキャラが作りたくてプログラミングを始めたんです。」
とモニターを結線しながら弾嗣は「ちょっと、レベルが低い話で恥ずかしいんですけど…。」と「バーチャルアイドルキャラクター」に対する昔話を始めた。「あー、わかるよ。私も「イケメン戦国」の武将や「アイドル育成ゲーム」のキャラにときめいてたもんねー。一緒、一緒!」と盛り上がっている間に、如志手作りの「ポン酢で食べる和風オムライス」が仕上がった。
如志もビールを取り出すと、「今日は本当にありがとうね。梨継さんの優しさに乾杯!」と弾嗣とグラスを軽くあてると、ささやかな夕食が始まった。会話は「技術論」に入り、プログラム生成の如志の話と既存ソフトプログラムのアッセンブル処理の弾嗣の話で会話が途切れることは無かった。最後にラインのアドレス交換を行うと「ごちそうさまでした。」と丁寧にお礼した弾嗣は如志のマンションを後にした。
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最初は「弾嗣くん」でーす。
「キャラT」がポイントです(笑)。
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