『私たち、JKプロレスラーズ2 ~マリブ・プレスクール訴訟阻止事件編~』【こども食堂応援企画参加作品】

あらお☆ひろ

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「闇夜の格闘戦」

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「闇夜の格闘戦」

「おい、早いとこ撒いてしまえ。」
「あぁ、あとタンク半分だ!」
とU&Kエステートの2人が倉庫の備品にガソリンを巻いている。1人の男は、腕を組んでその様子を見守っている。

「おまえら、許さないよ!」
と暗闇の中から飛び出してきたマスク姿のアグネスが一人の男にドロップキックをぶちかました。タンクを抱えたまま、後ろに吹っ飛び、顔からガソリンを浴び、ペッペと男は唾を吐いた。スクールバス事件の時、マリーに蹴りを入れた男だった。
 突然のマスク姿のふたりの登場に驚いたもう一人の男は、タンクを放り投げ、ズボンの尻のポケットから、折りたたみ式のナイフを取り出し、腕を前に突き出した。マリーに腕を決められた男だった。
「えいやー!」
と突き出した男の手をかいくぐり、マスク姿のマチルダが払い腰で男を投げ飛ばした。男はマチルダを支点として円弧を描き、腰からコンクリートの床にたたきつけられた。しこたま固い床に腰を打ち付け男は動けなくなった。

「貴様が親玉かー!?」
とアグネスが、腕を組んだ男に追い突きの体勢で攻撃を仕掛けた。しかし、そのこぶしが届く前に、アグネスの動きが止まった。
「てめぇ、よくもやりやがったなー!」
と蹴りで吹っ飛ばした男が、アグネスの右足に両手でしがみついている。
「ちきしょう!放せ!」
と振り返り、男のこめかみに下段蹴りを入れた瞬間、アグネスは、頭部に鈍い痛みを覚えた。

 ガクッと膝がおれ、上を見上げた時、男が拳銃の銃床を再び振り下ろす姿が見え、視界が真っ暗になった。倒れるアグネスを男は、後ろから抱きかかえアグネスを正面に向かせた。
「アグネスーっ!」
マチルダが叫び、男に飛びかかろうとしたところ、「パシュッ!」、「キン!」というサイレンサー付きの拳銃からの発射音と鉄骨にでも弾が当たったのか甲高い金属音が物置の中に響いた。
不意の反撃に一瞬怯み、目を閉じてしまったマチルダが目を開けると、頭に拳銃を突き付けられているアグネスとその後ろの男の姿が目に入った。
「卑怯だぞ!アグネスを放せ!」
とマチルダが叫ぶが、男は薄笑いを浮かべて、マチルダに向かって低い声で囁いた。
「ここで死ぬか・・・?」

一瞬恐怖を感じて立ちすくむマチルダの背後から、U&Kエステートの1人が膝裏に蹴りを入れられ、膝をついたマチルダのみぞおちにもう1人の男のトウキックが食い込み、マチルダは前のめりに倒された。
「痛てえ思いさせてくれたな。おまえら何もんだ!?」
とマチルダの背中を踏みつけ、押さえつけている。
「ちきしょう!おまえら、絶対に許さねぇ!」
と呻くが、みぞおちの痛みで力が入らない。アグネスを抱えている男が低く太い声でつぶやいた。
「こいつらを放火犯にでっち上げて、とっとと帰るぞ。」
(ここまでか・・・。園長先生、マリー先生ごめんなさい。何もできなかった・・・。)とマチルダは思った瞬間聞きなれた声が響いた。

「おいおいおい、うちの大事な嫁入り前どころか彼氏もいない娘たちに何すんだよー!お仕置き仮面が許さないぞー!」
(セシルの声だ!)マチルダは顔を上げた!正面にマスク姿のセシルが立っている。
「おい、これが見えねえのか?」
と男は拳銃をセシルに向ける。
「見えねえなぁ!」
とセシルの声がすると同時に、セシルの右手が発光した!正確には、セシルが持っていたカメラのフラッシュだ!真っ暗闇の倉庫の中で、突然の強力なフラッシュに、男たちは一瞬ひるんだ!
その瞬間、セシルの両サイドから2つの影が飛び出した。デビッドとユジンだ!2人は、マチルダを踏みつけているU&Kエステートの2人に各々ラリアットをかました。U&Kの2人は現役プロレスラーの攻撃で5メートルは吹っ飛ばされた。1人は泡を吹き、1人は白目をむいて仰向けに倒れ、動かなくなった。間髪入れず、セシルは、拳銃の男の顔面にフライングクロスチョップを見舞った。男は後ろに吹っ飛び、意識失っているアグネスはその場で崩れ落ちた。

「アグネス!アグネス!生きてる?ねえ、返事してよ…。」
とマチルダが泣きじゃくりながら、アグネスを抱き起こし、頬を2,3回、平手で打った。
「うっ、うーん・・・。(ゆっくりと目を開け、ぼやけた視界の中のマチルダの顔を見つめる)あぁ、マチルダ・・・。」
「わーん!アグネス!アグネス!アグネスー!生きててよかったー!」
と泣きまくるマチルダ。意識を徐々に取り戻し、膝の上で泣いているマチルダから視線を上げ、あたりを見渡すと、セシルは拳銃を男の手からもぎ取ろうとしている。男は気を失ない、指が硬直しているのか、力任せに拳銃を取り上げていた。
U&Kエステートの1人に器用に、デビッドが結束バンドで後ろ手に身動きができないように縛りつけている。さすが、警察官だ。手際よく処理している。もう1人が抵抗したため、ユジンが
「セシル手伝ってくれ。」
と声をかけセシルがユジンのもとに近づいた。

「あつ、奴が逃げるよ!」
アグネスが叫んだ。拳銃を持っていた男が裏口に向けて走り出そうとしていた。
「マチルダ行くよ!」
ふたりは、さっと立ち上がり、男を追った。倉庫を飛び出し、ブロック塀を乗り越えようとする男の足にマチルダがしがみ付き、動きを封じたところにアグネスの渾身のドロップキックが男の背中のセンターに鋭く決まった。
「ウグゥ!」とうめき声をあげて、男は背中から地面に落ち、仰向けに倒れた。男の首筋にマチルダのギロチンドロップがきれいに決まが。「ガウッ!」と男が叫ぶ。続いて、アグネスのエルボードロップが男のみぞおちに食い込む。「グワッ!」と男は下腹を抑えながら、フラフラと立ち上がる。男を正面にし、
「やるよ!マチルダ!」
「わかった!アグネス!」
と2人は男の両わきの下に同時に頭を突っ込み、男の腕を自分たちの首の後ろにまわし、男のベルトに手をかける。

「行っけー!」
徐々に男の身体が持ち上がる。LALWEで次のタッグ戦に向けて練習中の大技のツープラトンのブレンバスターだ!その瞬間フラッシュが瞬く!男の身体が垂直に伸びきった時、
「せーの!」
の声と同時にバッターン!と2人は後ろに倒れこんだ。きれいな弧を描き、男は肩口から、地面にたたきつけられ、「ンググゥ・・・。」と倒れこんだ。
デビッドが駆け付け、
「おまえら、すげーぜ!きれいなブレンバスターだったぜ!」
とふたりにサムアップした。セシルとユジンも駆けつけ、
「よくやったなぁ!アグネス!」
「かっこよかったぜ!マチルダ!」
とふたりを抱きかかえ、飛び回った。アグネスとマチルダはセシルとユジンに抱っこされながら、
「やったね!」
とハイタッチした。

 しばらくすると、パトカーのサイレンが聞こえてきた。照明がともった倉庫の柱には背中合わせで3人が結束バンドと、子供用の長縄跳びのロープで縛り付けられている。頭には袋がかぶせられ、目隠しされている。セシルは、3人の写真を何枚も角度を変えて撮っている。ユジンと一緒に、アグネスとマチルダは雑巾で撒かれたガソリンをバケツに集めている。
「じゃあ悪いけど、俺、ケネス警部が来る前に、先にふけるわ。」
とデビッドは裏口に向かって走っていった。みんなで手を振って見送った。
 3台のパトカーが正面に到着し、ケネス警部を先頭に6人の警察官が園内に入ってきた。マスクを外した、セシル、ユジンとアグネス、マチルダが迎えた。
「また、おまえらかぁ!?今日は、デビッドはいねえのか?」とケネス警部が4人を見回し、セシルに言った。
「いやぁ、警部。俺たちは、放火犯の現場の第一発見者ってだけで、やらかしたのは、謎のマスクマンですよ。なぁ、みんな!?」
頷く、ユジンとアグネス、マチルダ。
「は~ぁ、まあ、いい。詳しくは署に戻ってから聞くよ。もう遅いから、お嬢さんたちは、パトカーで送っていくよ。」とケネス警部は、大きなため息の後、アグネスとマチルダに優しく言った。

「ところで、毎度あれなんですが、今回の記者会見も明日の夕方以降にしてもらいたいんですが・・・。」
と揉み手で、セシルがケネス警部に媚びを打った。
「はいはい、今回もデイリーLAのスクープで結構、結構、大いに結構!売り上げ倍増でお前さんは社長賞ってか?今晩、しっかり調書づくりに協力してくれりゃそうしてやるよ!」
「ありがとうございます、警部!ロス市民として感謝いたしますよ!」
とセシルは、敬礼をして見せた。みんなが笑った。

「じゃあ、アグネス、マチルダ、今日はここまでだ。今晩はゆっくりと休みな。先生たちのとこには、明日行くといい。」
「でも、セシルさん、私たち、いったい何がどうなったのやら?」
「3人は捕まったけど、事件はどうなるの?園長先生とマリー先生は?」
ケネス警部が、
「何も心配しなくていいよ。(セシルとユジンを指さし)こいつらの調書が取れれば、きっと明日には解放だ。ただ、このわがまま記者が、記者会見を遅らせろってことなんで、園に戻るのは明後日になるけどね。
先生たちは、明日までは、マスコミから保護する意味で、今のホテルに残ってもらうつもりだから、明日、学校が終わったら堂々と表玄関から会いに行ったらいいよ。」
「えっ、私たちがホテルに行ってたの知ってたんですか?」
「いやぁ、何のことかい?(としらばっくれて、口笛を吹く)まあ、今日はゆっくりとお休み。明日のデイリーLAでセシルのスクープ記事で全容は確認したらいい。(警察官を1人呼びつけ)この子たちを丁重に送って行ってやってくれ。この街のヒーロー、もとい、ヒロインだからな!」
とウインクして見せた。

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