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「再びホテル709号室」

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「再びホテル709号室」

 「コンコンコン」ドアのノックオンが室内に響いた。「はい。」とマリーが返事をしてドアに近づいた。
「どちら様ですか?」
「(小さい声で)アグネスとマチルダです。入れてください。」
「ガチャッ」とドアが開き、さっとふたりが室内に入ってくる。園長先生は、髪がぼさぼさで見るからにやつれている。
「園長先生!」
ふたりが園長先生に抱き着く。
「おやおやおや、大きな甘えたさんですね。」
と園長先生はアグネスとマチルダの頭をやさしくなでた。
「園長先生、マリー先生。これを見て欲しいんですけど。前回、ここに来た時にマリー先生が気になることがあるって言ってたことを確認してほしいんですが・・・。」
とアグネスが、セシルがまとめたレポートと時系列チャートをテーブルに広げた。グループラインの投稿を今回の事件に関わっていそうなものを抜粋したものにマリーが目を通していると
「うん、この間に感じた違和感は当たってたわ。最初の3人は、入園して1か月もたっていない、新しい人たちね・・・。」
「えっ?どういうことですか?」
「途中入園ってこと?」
マリーに2人が同時に聞いた。

「えぇ、うちの園で取引している銀行さんから、「マリブに引っ越してきた人が幼稚園を探しているので、お願いできないですか?」って言われて、同じ時期に編入してきた人たちね。幼稚園の方針もいろいろあるから、「うちでやってる運動の時間や、乾布摩擦なんかを「虐待」って思われたのかな。」って思ったくらいで・・・。まあ、それらを虐待って言われちゃうと何もできなくなっちゃうけどね・・・。」
とマリーは困った顔をした。
「その銀行ってどこですか?」
「マリブに支店のあるリバティ・バンクよ。それが何か?」
「そこの車ってどんなのか覚えてますか?」
「うーん、よく銀行で使われてるような、黒のセダンだったと思うけど・・・。銀行名がドアに書いてあったかな?それが?」
「(!?)いえ、何でもないです。」
アグネスはメモを取った。

「U&Kエステートって先月のスクールバスでマリー先生にケガさせた奴らなんだけど、その後、何かコンタクトはありましたか?」
とアグネスが続けた。園長先生とマリーは顔を合わせ、
「特段、コンタクトは無かったわねぇ。不動産屋さんっていうことなら、別の不動産屋さんが一度、「新築で広い園に移転しませんか?」って話が合ったくらいで・・・。」
「でも、お断りした後は何もないわ」
「その不動産屋さんって、何ていうとこでした?」
「うーん、思い出せないわ。事務所に戻れば、名刺が置いてあるんだけど・・・。」

 マチルダが、真剣な顔をして
「園長先生、マリー先生。あくまで、私たちが得てる情報からなので、確定事項じゃない前提で聞いて欲しいんですが、(と園長とマリーの顔を見る。頷くふたり。)警察でも聞いてるかもしれませんが、訴訟に参加する園児や保護者がこれ以上増えると、起訴される可能性があるようです。もちろん私たちは、先生たちの無罪を信じています。事件自体がでっち上げだと思っています。しかし、今のマスコミ報道を背景に、警察は起訴に動くかもしれません。」
「・・・・。(ふたりは黙って聞いている。)」
「私たちは、警察じゃないから、あくまで先生たちの味方です。本当は、個人情報保護とかいろいろあるんだろうけど、先生たちの無実の証明の為に必要なことがあるので、いくつか教えて欲しいことがあるんですけど・・・。」
「えぇ、私たちもあなたたちを信じるわ。」
と園長先生がマチルダの手をぎゅっと握った。
「絶対、危ない真似はしないでね・・・。」
とマリーがアグネスを抱きしめた。

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