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五章 食べるんだ

八十九話

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 昼休みをとった後の探索は空振りに終わった。

 いくつかの小部屋にいたエネミーを駆除して、ドロップアイテムを拾っただけでタイムオーバーになったんだ。

 結局、ボス部屋は見付からなかったよ。


「じゃあ、明日は反対の方を探索するっス」
「そうだな」


 管理室に提出物を出して、着替えをしてから学食でミーティング。

 俺の書いた地図で明日の計画を立てる。

 計画とは言ったものの、見てないところを探索するっていうざっくりしたものだけどね。

 雑談しながらオヤツを食べるのがメインだと言っても過言じゃない。

 まあ、約二名ほどオヤツの範疇から逸脱しているけどね。定食を大盛で三人前とかどこのフードファイターなんだろ。


「あら、テイマー君じゃない」


 地図を見ながらウドンをすすっていると、女生徒の一団に声をかけられた。


「あ、大森先輩」
「お疲れ様。夕飯かしら?」
「いえ、部活の前に少し間食しているんですよ」
「間食?」


 大森先輩の視線がチラリと動く。視線の先は当然のように吉根と天子田さんの前にある皿の山だ。

 しかし、冒険者学校には彼らと同じくらいの胃袋の持ち主はそう珍しくもないようで、大森先輩もさほど驚いてはいないようだ。


「先輩こそどうしたんです?」
「ええ、私も実習パーティーとミーティングを兼ねたお茶会よ」
「お茶会、ですか」


 大森先輩のトレーには紅茶が入ってるらしきティーポットとケーキがのっている。彼女のパーティーメンバーは全員が女性のようで、その手には概ね同じような物がのっている。しかし、一人だけ小柄な女生徒のトレーにはホールで四つのケーキがのっていた。

 間違いなく吉根たちと同類なんだろう。思わず見てしまったが、そっと視線を大森先輩に戻した。


「それより、模型作りは順調かしら?」
「はい。今のところ計画通りの進捗ですよ。な、吉根」
「あ、ああ。順調っス」
「それはなによりね。テスト明けから撮影も始まるから、よろしくね」


 俺達の答えに満足したのか、大森先輩はひらひらと手を振って、去っていった。空いてる席に付いて、これからミーティングをするんだろう。


「お、おい、あれって二年の大森先輩か?」
「そうだよ。市場君も知ってるの?」
「知ってるも何も、二年のトップランクだろ、あの人たち」


 市場君が泉ヶ丘さん以外の女生徒に興味を持つなんておかしいと思ったら、大森先輩のパーティーは有名なパーティーだったみたいだ。

 なんでも去年の第一ダンジョン攻略順位が三位だっらしい。二年生になった今も攻略の先頭争いをしているそうだ。


「てっきり知ってるもんだと思ってたっス」
「人間関係の情報収集は苦手なんだよ」


 斥候職っていってもダンジョン探索の役割だからね。本物のスパイじゃないんだし、誰がどうしたとかはあんまり興味が無いんだよなぁ。


「それより、小幡たちはどうして大森先輩と知り合ったんだ?ずいぶんと親しそうだったが」
「ああ、それは部活繋がりなんだ。な、吉根」
「そうっス」


 俺は文化祭の発表を一部合同してやる事を説明した。関係性はほとんど無いって言っても過言じゃないな。未だに名前も覚えられてないようだし。


「そうか、文化祭か」
「リク、一緒に回ろう」
「そうだな」


 それからミーティングはそっちのけで文化祭の話で少し盛り上がり、それぞれ部活に行く為に解散となった。
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