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五章 食べるんだ
八十五話
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ポテチをはじめとしたオヤツも食べ終わり、そろそろ出ようかと腰を上げたところで、隠し扉がゴゴゴゴと音を立てて上がっていく。
エネミーの侵入かと思い、パーティーメンバーは各々の武器を構え、警戒を高める。
「あれ、今日は先客がいるのか」
扉が開くと、そこには同じ一年の別パーティーがいた。エネミーじゃないことを確認してから、俺達は構えていた武器をおろす。
「よう、岩倉じゃないか」
「よう。なんだ、市場達もここを見付けたのか」
「ああ、うちの斥候は優秀なんでな」
どうやら、市場君の知り合いのようだ。吉根はあまり面識が無いようで、特に話し掛けたりはしていない。
俺も斥候職の女子の顔を見たことあるけど、名前も知らないって程度だから、別に話すことも無いので、出ていく準備を淡々としていく。
聞こえてくる会話によれば、岩倉君のパーティーは先週ここを発見したらしく、それからここを休憩場所にしているらしい。
ここを発見出来るって事は、斥候職の女子は【地図】か感知系スキルの熟練度が相当高いんだろうな。
ひょっとしたら最初に生えたスキルがそういう系統なのかもしれないな。
「さて、ゴミも片付けたし、邪魔になる前に俺達はそろそろ行こうか」
「そうっスね」
「じゃあ、オレ達はもう行くから、岩倉達はゆっくりしてってくれ」
「おう、お前も気を付けていけよ」
和やかな雰囲気で立ち去ろうとしたその時、ひょろりと背が高い眼鏡の男子生徒が俺の前に立ち塞がった。
「そのネズミ。間違いない。お前が小幡だな!」
いきなり喧嘩腰だな。
急に突っ掛かってくるとか意味不明なんだけど。敵意剥き出しで大声なんて出すから、ツクモが今にも魔法を撃ちそうだ。
「誰、コイツ?」
興奮するツクモを撫でて宥めながら、傍らにいる市場君に尋ねる。しかし、市場君も知らないようで、首を横に振る。
「やめろよ。急にどうしたんだよ曽野。お前らしくないぞ」
いきなりの暴挙に唖然としてフリーズしていた岩倉君が、慌ててひょろ眼鏡を止めに入る。そうか、このひょろ眼鏡は曽野っていうんだな。
岩倉君のパーティーメンバー達は曽野を俺から遠ざけようと壁になってくれている。
「小幡!お前はもう大屋敷先生につきまとうの止めろよな!」
羽交い締めにされながら、曽野は意味不明な事を叫びだした。
「大屋敷先生につきまとう?」
「えっ!?そんなことしてるの?小幡ヤバいな」
吉根が笑いながら茶化してくる。完全にこの状況を面白がってるな。
しかし、女子メンバーは本気にとったのか、少し距離をとって冷めた目で見てくる。
「風評被害がえげつないな。大屋敷先生なんておばあちゃんと同じ年ぐらいだぞ?」
「年齢なんて関係無いだろ!」
凄い目で睨んでくるな。
そう言えばこの前、大森先輩が大屋敷先生は一部男子に人気があるって言ってたな。
あの時は冗談かなにかだと思ったけど、本当だったんだなぁ。
曽野なんて熱狂どころの話じゃないもんな。正気を無くしかけてるじゃん。
「悪い、小幡君。曽野はオレ達でなんとかしておくから、この場は引いてくれないか?」
「ああ、分かったよ。岩倉君も大変だね」
「おい!逃げるな!」
「止めろって。落ち着け曽野」
暴れる曽野を押さえつける岩倉君たちに任せて、俺達は噴水の部屋を出ていく。
俺達が出るとすぐに隠し扉が閉まり、中の喧騒が聞こえなくなった。防音効果はバッチリなようだ。
「小幡君、大屋敷先生が好きなの?」
「天子田さん、何言ってるの?」
どうやら曽野のせいでとんでもない誤解を与えてしまったようだ。
ツクモに魔法を撃ってもらえば良かったかも。
エネミーの侵入かと思い、パーティーメンバーは各々の武器を構え、警戒を高める。
「あれ、今日は先客がいるのか」
扉が開くと、そこには同じ一年の別パーティーがいた。エネミーじゃないことを確認してから、俺達は構えていた武器をおろす。
「よう、岩倉じゃないか」
「よう。なんだ、市場達もここを見付けたのか」
「ああ、うちの斥候は優秀なんでな」
どうやら、市場君の知り合いのようだ。吉根はあまり面識が無いようで、特に話し掛けたりはしていない。
俺も斥候職の女子の顔を見たことあるけど、名前も知らないって程度だから、別に話すことも無いので、出ていく準備を淡々としていく。
聞こえてくる会話によれば、岩倉君のパーティーは先週ここを発見したらしく、それからここを休憩場所にしているらしい。
ここを発見出来るって事は、斥候職の女子は【地図】か感知系スキルの熟練度が相当高いんだろうな。
ひょっとしたら最初に生えたスキルがそういう系統なのかもしれないな。
「さて、ゴミも片付けたし、邪魔になる前に俺達はそろそろ行こうか」
「そうっスね」
「じゃあ、オレ達はもう行くから、岩倉達はゆっくりしてってくれ」
「おう、お前も気を付けていけよ」
和やかな雰囲気で立ち去ろうとしたその時、ひょろりと背が高い眼鏡の男子生徒が俺の前に立ち塞がった。
「そのネズミ。間違いない。お前が小幡だな!」
いきなり喧嘩腰だな。
急に突っ掛かってくるとか意味不明なんだけど。敵意剥き出しで大声なんて出すから、ツクモが今にも魔法を撃ちそうだ。
「誰、コイツ?」
興奮するツクモを撫でて宥めながら、傍らにいる市場君に尋ねる。しかし、市場君も知らないようで、首を横に振る。
「やめろよ。急にどうしたんだよ曽野。お前らしくないぞ」
いきなりの暴挙に唖然としてフリーズしていた岩倉君が、慌ててひょろ眼鏡を止めに入る。そうか、このひょろ眼鏡は曽野っていうんだな。
岩倉君のパーティーメンバー達は曽野を俺から遠ざけようと壁になってくれている。
「小幡!お前はもう大屋敷先生につきまとうの止めろよな!」
羽交い締めにされながら、曽野は意味不明な事を叫びだした。
「大屋敷先生につきまとう?」
「えっ!?そんなことしてるの?小幡ヤバいな」
吉根が笑いながら茶化してくる。完全にこの状況を面白がってるな。
しかし、女子メンバーは本気にとったのか、少し距離をとって冷めた目で見てくる。
「風評被害がえげつないな。大屋敷先生なんておばあちゃんと同じ年ぐらいだぞ?」
「年齢なんて関係無いだろ!」
凄い目で睨んでくるな。
そう言えばこの前、大森先輩が大屋敷先生は一部男子に人気があるって言ってたな。
あの時は冗談かなにかだと思ったけど、本当だったんだなぁ。
曽野なんて熱狂どころの話じゃないもんな。正気を無くしかけてるじゃん。
「悪い、小幡君。曽野はオレ達でなんとかしておくから、この場は引いてくれないか?」
「ああ、分かったよ。岩倉君も大変だね」
「おい!逃げるな!」
「止めろって。落ち着け曽野」
暴れる曽野を押さえつける岩倉君たちに任せて、俺達は噴水の部屋を出ていく。
俺達が出るとすぐに隠し扉が閉まり、中の喧騒が聞こえなくなった。防音効果はバッチリなようだ。
「小幡君、大屋敷先生が好きなの?」
「天子田さん、何言ってるの?」
どうやら曽野のせいでとんでもない誤解を与えてしまったようだ。
ツクモに魔法を撃ってもらえば良かったかも。
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