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五章 食べるんだ

八十二話

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「もう身体は大丈夫?」
「えぇ、おかげさまで」


 放課後、今日は部活を休んで大屋敷先生の研究室に来ている。

 別に魔法概論の成績が悪くて呼び出された訳じゃないよ。かねてから話があった空間魔法を教えてもらう為だ。

 これから、もし中型以上のエネミーをテイムした場合、待機させておくためには亜空間の控室を作る必要が出てくるからね。

 地上だと魔力が無さすぎて、従魔の出入りは出来ないけど、一旦ダンジョン内で待機させれば、それを維持することは可能だと大屋敷先生は言っていた。

 魔法鞄なんかも同じ理屈らしい。だから学外のダンジョンは、荷物の搬入口が一階層の出口付近に作られているそうだ。


「じゃあ、早速始めましょうか」
「よろしくお願いします」
「ちぅ」


 鞄からルーズリーフと筆箱を取り出して、机の上に広げる。

 ツクモも俺の真似をして、自分用のルーズリーフの上に座って鉛筆を持っている。最近、ツクモは俺の真似をする事が多くなった。小さな身体で一所懸命に鉛筆を持っている姿が可愛い。


「じゃあ、まずはこれね」


 大屋敷先生が一枚のプリントを俺の前に置く。いつものように、何処からともなく出しているんだけど、これも空間魔法で作った亜空間から出しているらしい。

 プリントには一つの魔法円が書かれている。かなり複雑な魔法円だ。


「これは、空間魔法の初歩ね。空間の連続性を絶って外からの影響を遮断する魔法よ。いわゆる結界ってやつね」
「結界、ですか」
「そう。ダンジョンが出来る前は注連縄なんかで囲ってたみたいよ。今は純粋な魔力で壁を作る感じね。」


 軽く説明を受けた後、プリントに描かれている魔法円をじっと見る。ツクモも真似をして覚えようとする。

 俺は【魔法】スキルのおかげで、魔法に関して属性関係なく補正が掛かる。

 おまけにステータスの魔力値も充分だ。

 わりとすぐに覚える事が出来た。なんと、ツクモも覚えれたようだ。さすが有能な従魔だ。


「先生、覚えました」
「ちぅ」
「あら、早いわね。流石、【魔法】スキル持ちね。じゃあ、ちょっと試してみましょうか」


 ここではちょっと狭いからと、建物の外に出る。大屋敷先生の研究室は、第二ダンジョン内にある実習の為の校舎に入っている。

 大屋敷先生の話だと、この校舎にエネミーが入って来ないようにしてるのも結界なんだとか。まあ、これは魔法じゃなくて魔道具の効果らしいけどね。


「ちょっと結界の外まで出ましょう。使い慣れない内は干渉されてしまうかもしれないから」
「はい」
「ちぅ」


 ダンジョン内をしばらく歩くと、急に空気が変わった気がした。


「今、結界を抜けたの分かったかしら?」
「はい。なんか空気が変わった気がしました」
「ちぅ」
「その感覚を忘れないようにやってみなさい」


 大屋敷先生に促されて【結界】を張る。自分を中心に半径1mの円筒形の結界だ。 


「出来ました」
「うん、魔力が高いだけあって初めてにしては上出来ね」


 大屋敷先生は結界の表面を触る。なんとか侵入を阻んでいるようだ。

 しかし、大屋敷先生が手に力を込めた瞬間、パリンと音を立てて結界は砕け散ってしまう。


「取り敢えず当分【結界】の熟練度を上げなさい。次の段階はそれからね」
「はい」
「ちぅ」


 幾つかアドバイスを貰い、今日の空間魔法講習は終了した。
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