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四章 二体目ですよ

七十話

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 剣を抜くと辺りが明るくなった。

 同時に俺の身体も軽くなる。どうやら辺りに魔力が満ちてステータスが戻ったようだ。

 やっぱりここはダンジョンの中だったみたいだな。


「………ちぅ」
「おい、ツクモ!?どうした?ツクモ!?」


 ツクモがまるで糸が切れた操り人形みたいに、クタリと倒れた。そのまま俺の肩から転がり落ちそうになるのを、剣を捨て慌てて受け止める。


「大丈夫か!?」


 ぐったりと俺の手の中で横たわるツクモ。【能力閲覧】で見てみると、どうやらMPが枯渇しているようだ。HPも半分くらいまで減っている。戦闘もしてないのに何でだ?


『子ネズミには悪い事をしたの』
「ぐっ!?………なんだ?」


 突然頭の中に声が聞こえた。それだけなら良いんだけど、あまりの音量に頭が内側からはち切れそうになる。


『おっと、すまんの。永らく人と会話することなんざ無かったこらの。少し声が大き過ぎたようじゃな。ほれ、これでどうじゃ?』


 謎の声が少し小さくなり、頭の痛みもマシになった。

 それにしても、この声の主は誰なんだ?

 ひょっとしたらと思い、俺はおそるおそる竜の方を見る。


「グルル」
「うっ」


 バッチリと目が合いました。やっぱりさっきから頭に響くこの声は竜のものなんだろうなぁ。


『勘が良いのう。話が早くて助かるわい』
「あ、それはどうも」


 竜は身体、というより傷口から煙をあげていた。その傷口はどんどん消えていっている。

 スゴイ再生力だ。

 こんなに桁外れな再生力を持っているのに、なんでさっきまであんな瀕死状態だったんだ?やっぱり魔力が無かったからかな?


『正解じゃ。ちょっと空間ごと閉じ込められてしまっての。おまけに儂の魔力を吸い取る虫を付けられて困っておったのじゃ』
「はぁ」
『そこでの、なけなしの力を使い、助っ人を呼ぶことにしたんじゃ』
「その助っ人が俺って事ですか?」
『その通りじゃ。情けないことに壁を越えるのに力を使いすぎてのぅ。転移出来るだけの魔力を持つモノで、虫を取り除いて剣を抜けるモノがお主らしかおらんかったのじゃ。強引に事を進めて悪かったの』


 詳しく話を聞いてみると、どうやらこの竜がいるダンジョンは物理的な距離は分からないけど、俺たちがいつも使っているダンジョンと、魔力的な繋がりが強いらしい。

 そこで竜は残された力を振り絞って精神体を飛ばし、転移してきたそうだ。そこで見付けたのがツクモたまそうだ。

 なぜツクモに目を付けたかといえば、魔力の波長が合わせやすく、魔力量も一度転移するだけなら十分だったからみたいだ。

 だけど、ツクモだけじゃ虫を駆除することも、空間を封じている剣を抜く事も出来なさそうなので、テイマーとして魔力的なパスが繋がっている俺も含めて呼ばれたそうだ。

 剣の結界は内側からの力を封じるには強いけど、外から中に入る分にはさほど抵抗を示さないらしい。

 また、大きければ大きい力ほど抵抗力を増すらしく、小さく力を絞った精神体はほぼ素通りだったみたいだ。俺達の魔力も竜に比べればカスみたいなものだから、結界の特性も合わせて易々と突破出来たってわけだ。


『子ネズミは儂の精神体を受け入れるだけで、相当な負担だったようじゃ。すまんかったの』


 ツクモがやけにあざといと思ったら、この竜が操っていたようだ。いつの間にあんなおねだり上手になったのかと焦ったよ。
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