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四章 二体目ですよ

六十七話

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「しまった、罠か!」
「ちぅ!」


 一瞬で光が収まると、辺りは真っ暗な闇に閉ざされていた。

 入口から入ってきていた光は無く、足下を照らしていたライトも消えていた。

 それにさっきよりも身体が重く感じるな。


「転移罠だったのかな?【危険察知】に何の反応も無かったから油断したな。それにしてもここは何処だろ?身体が重いし、ひょっとしたらダンジョンの外に出ちゃったかな?」
「ちぅ?」


 身体が重くなる感じは、いつもダンジョンから帰った時に感じる違和感と同じものの気がする。

 ステータスで上がっていた身体能力が、地上に出た事で元に戻ったのかもしれない。

 だとしたら、ライトも魔力が無いから消えたのかもしれないな。

 今使ってるライトは周囲の魔力を使って光るのと他に、バッテリーに充電された電力でも明かりを点ける事が出来る。

 ダンジョンに潜っている時は、バッテリー切れの心配が無い魔力を使っているけど、魔力が無い地上だと電力に切り替えれるんだ。


「えっと、切り替えのボタンは………これかな」


 手探りでライトのボタンを押す。

 電力に切り替えた事で、無事に明かりが点いた。やっぱりここは魔力が無い場所なんだな。

 辺りを照すと、どうやらここは通路になってるみたいだ。前後にかなり長く道が続いていた。

 地面を見たけど、転移の魔法円や魔道具の類いは見当たらない。完全に一方通行でこっからさっきの洞穴には戻れないようだな。


「やられたなぁ。これ、どっちに行けば良いんだ?」
「ちぅ」


 どっちに向かうか迷っているとツクモが前方を指差した。

 こういった事でツクモが積極的に自分の意見を表明するのは珍しい。


「こっちに行きたいの?」
「ちぅ」


 確認すると、ツクモはしっかりと頷いた。

 ライトで照らしても暗い通路が続くだけで、反対方向との違いが俺には分からない。

 だったら、ツクモの言うことを聞くのも悪くないだろう。


「じゃあ、こっちに行こうか」
「ちぅ!」


 俺は慎重に歩き始める。ここが地上だとしても安全とは限らないし、なにより【危険察知】の反応も鈍くなるからだ。

 それに転移罠に引っ掛かった事からも分かるけど、たぶん【危険察知】は身の危険が無いと反応しないんだろう。

 早く【罠感知】のスキルが欲しいな。


「それにしても、なんだか暑いし空気が乾燥してる気がするな」
「ちぅ」


 空気が乾燥しているせいか喉がいがらっぽい。それになんだか暑いな。ちょっと汗ばんできた。

 そろそろ夏が近いとはいえ、体感で40度近くある気がする。地上だとしても少しおかしい。行ったことは無いけど、砂漠みたいな空気だ。

 休憩をとりたいけど、ある程度状況が分かるまでは動こうと歩き続ける。ライトのバッテリー容量は最大光量でも八時間はもつようになってるけど、出来る限り早くこの暗所から抜けたい。

 通路は脇道も無く、かれこれ500mほど続いていた。


「なにか音がするな」


 歩いていると、断続的に空気が流れるような音がしている事に気が付いた。

 ひょっとしたら出口が近いのかもしれない。

 走り出したい気持ちを抑えて、歩数をきっちり数えながら歩く。こういった時は焦ったらダメだと斥候の授業で耳にタコができるくらい聞かされているからね、


「おっ、広くなったな」


 横幅も広くなり、天井も高くなった。圧迫感は無くなったけど、光が反射されなくなったからか余計に暗くなった気がするな。

 周囲を照らしながらさらに進むと、奥に大きな塊があるのがぼんやりと分かる。


「なんだ、あれ」
「ちぅ」


 大きな塊はライトの明かりを青く反射させている。

 もっとよく見ようと近付いていくと、物語でしか見たことがない生き物だということが分かった。


「まさか、竜、なのか?」
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