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四章 二体目ですよ

六十五話

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「あ、【解錠】が生えた!」


 火曜日、いつもの斥候実習だ。

 今日は全てのチェックポイントが鍵付きだった。罠が無かったのがまだ救いだね。

 そして、とうとう【解錠】のスキルを得ることが出来た。これで鍵を開けるのがよりスムーズになるし、簡単な鍵なら魔力を使って開けることが出来るようになった。

 しかも、器用のステータスも1上がった。


「お、おめでとう」
「ありがとう」


 たまたま後ろに並んでいた男子生徒がお祝いしてくれた。多分、隣のクラスだから、名前までは覚えていないけど、たまに顔は会わせたことはある。

 二人で一頻り喜びを分けあうと、俺はその場を後にした。まだ授業の最中だからね。

 その後も手作業で鍵を開けたり、魔力で開けたりして使い勝手を確認していく。

 結果、この実習で使ってるレベルの鍵だったら、手作業で開けた方が手っ取り早い事が分かった。魔力を集中している間に開けれちゃうからね。

 ピョンピョン跳ねながらチェックポイントを周り、ついでに樹の虚からいくつかポーションを手に入れた。

 そして、山を登りつつ今日の目的地までやってきた。


「来たよ、ボス部屋」
「ちぅ」


 二階層に行きたいわけじゃなく、ボスの駆除は何回でも出来ると聞いてやってきたんだ。

 前回、それなりに苦労したボスだけど、ツクモなら単独で駆除出来るんじゃないかと思うんだ。

 もしダメでも、今日はエネミーを駆除してないし、いくつかポーションが無くなるくらいだから、良いかなって思ってる。

 ボス部屋に入ると中央に魔力が集まってくる。一度倒していれば階段が出ているから、そのままボスが出てくる前に、通り過ぎちゃえば良いらしい。

 俺達はボスに用があるから、じっとボスの登場を待つ。


「あ、来たよ」
「ちぅ!」


 角大蛇が現れた瞬間、ツクモが【突風】を放つ。

 こちらへ向かおうと顔を前に出した瞬間、カウンター気味に当たったから角大蛇の顔が仰け反った。

 すぐに復活したけど、その時は既に二発目の魔力が練り終わっていたのでズドン。

 前回よりもレベルが上がってるから、当然の如く【突風】の威力も上がってる。風魔法の習熟度も上がってるだろうしね余計にね。

 それを全て頭に向かって撃ちまくる。

 俺も手持ち無沙汰だから棒でペシペシ叩いて【杖術】の習熟度をあげようと頑張っている。ツクモの魔法に比べたらダメージなんて無いも同然だけどね。

 ツクモが無慈悲に【突風】を放つ度に、顔がアッチコッチに吹っ飛ぶ角大蛇。

 やがてツクモの魔力が残り25%くらいになった時、角大蛇は倒れて宝箱に変わった。

 中盤はツクモのMPが切れないかとヒヤヒヤしたけど、終わってみれば呆気なかったな。


「さて、宝箱だぞ!」
「ちぅ!」


 罠も鍵も無し。さっさと蓋を開けてみる。

 中には肩当てらしき装備品と、ポーションが入っていた。


「残念。【電撃】のスキル珠は無いか」
「ちぅ」


 静電気みたいな威力でも、雷属性ってカッコいいんだよね。市場君が使ってるのを見て、ちょっと良いなって思ってたんだ。


「時間的にもう一回くらい行けそうだね」
「ちぅ」
「じゃ、ちょっと休んでMP回復したら、もう一回やってみようか」
「ちぅ!」


 ボス部屋の外で休憩したらもう一度チャレンジしよう。

 下の小部屋から入り口まで転移出来るから、帰りの時間は考えなくて良いから楽だな。

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