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四章 二体目ですよ

五十九話

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「はい、案の定エネミーネストでした」


 部屋の真ん中まで進んだら扉が勝手に閉まってエネミーがゴソッと湧き出した。

 出てきたのはゴブリンとイグアーノ、巨大な蝙蝠ジャイアントバットにブッシュスネークだ。後はその上位種らしきエネミーもいるな。

 ざっと数えて40体くらいか。


「悠長な事を言ってる場合じゃないっスよ!」
「それもそうだね。ツクモ、とりあえず【突風】!」
「ちぅ!」


 即座に吉根が剣を抜き放ち、ツクモが魔法を放つ。

 ツクモの【突風】は複数のゴブリンを巻き込んで吹き飛ばす。吉根は弱ったゴブリンに止めを刺していく。

 市場君は出入口付近で泉ヶ丘さんと天子田さんを守りながらエネミーを駆除していく。

 市場君達とは分断されてる形だけど、今のところはなんとか上手いことやれているな。


「足元に罠が出現しているから気を付けて!」
「ムチャっス」


 エネミーが湧き出す前はなんの反応も無かった場所から、【危険察知】の反応がある。

 試しに棒で叩いてみたら、トラバサミがバチンと音がして閉じた。


「コワッ!?」


 トラバサミを見て驚く吉根。市場君達はエネミーが邪魔で見えなかったみたいだけど、俺の声は届いていたみたいだな。

 みんな少し足元を気にするようになっていた。

 罠がある場所はほんのり色が違っているから、注意深く観察してれば分かるけど、戦闘中にこなすのはなかなか難しい。


「ゴブッ!」
「むっ」


 言ってる内にもゴブリンが襲いかかってくる。

 棒を突きだし、ゴブリンの胸板を打つ。しかし、一撃で仕留める事は出来ず、ゴブリンを少しよろめいただけだった。


「ゴブッ!」


 棒を引き戻そうとした時、横合いから別のゴブリンが棒に抱き付いた。


「うわっ!?」


 数体のゴブリンが更に棒を引っ張ることで、俺は思わず体勢を崩してしまう。

 踏ん張ろうとしたところにブッシュスネークが這い寄り、上からジャイアントバットが急降下してくる。


「ツクモ!」
「ちぅ!」


 ツクモは俺の指示をくみ取り、ジャイアントバットに【突風】放つ。

 俺は俺で左手に魔力を送り、憑魔の力を借りて棒のお尻を押し下げる。テコの原理も働いて、ゴブリンを持ち上げる事に成功すると、そのまま床に叩きつけた。


「おっ、パワフルっスね」
「ちょっと、俺はまだピンチなんだけど」
「近寄ってくるのは受け持つっスから、その蛇の処理は自分でお願いするっス」
「はいはい。そっちのは頼んだよ」


 そう、ジャイアントバットとゴブリンはなんとか凌いだけど、おれは三匹のブッシュスネークに噛みつかれていた。

 幸い、HPで守られているから痛みとかは無いけど、なにせ蛇が噛みついてぶら下がっているというビジュアルがヤバい。

 吉根にカバーしてもらいながら、一匹ずつ引き剥がしては踏み潰していく。

 吉根は上手く盾と大蛇剣を使ってエネミーを次々と駆除していっている。

 たまに抱き付こうと特攻してくるゴブリンがいるけど、足払いをかけたり逆に強くぶつかったりして上手くいなしている。なかなか隙がなく手堅い戦いかたをしている印象だ。

 【鋭斬】は使わずにMPを温存しているから、この状況でもまだ余裕があるみたいだな。流石は戦闘科だ。

 それにしても、かなりの数のエネミーを駆除したけど、なかなか減った気がしないなぁ。
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