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四章 二体目ですよ

五十三話

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「あ、宝箱がある」


 角大蛇が消えた場所には、魔石と宝箱が落ちていた。流石は階層主ボスだ、ドロップアイテムが豪華だな。

 とりあえず、魔石は天子田さんに渡しておこう。


「ガワだけかもしれんが立派だな」
「そっスね」
「宝箱って言ったら俺の出番だな」


 罠と鍵のチェックだ。斥候職の見せ場の一つだな。

 宝箱は幅が50cm、奥行き20cm、高さが蓋込みで30cmってところだ。

 木製で縁は金具で補強されている。装飾らしい装飾は無いな。全体を赤く塗ってあるだけだ。

 みんなから見られる中、一通り罠をチェックしてみるが、これといったものは見付からない。


「鍵は………掛かってるな」


 ウエストポーチから鍵開けの道具を取り出す。

 カチャカチャと鍵穴をいじること数分、カチャリと音がして鍵が開いた。


「開けるよ」
「おう」
「頼んだっス」


 もし気付かない罠があった場合に備えて、みんなには少し離れてもらった。おまけに吉根と天子田さんの盾に隠れてもらう。

 蓋に付いている取手に手を掛けて慎重に開けていく。【危険察知】の反応は無いので大丈夫だろう。


「おっ、これは?」


 宝箱の中にはいくつかアイテムが入っていた。


「先ずは剣だな」


 角大蛇と同じ色の鞘に入っている剣があった。それを取り出すと1mくらいの長さだ。


「宝箱の大きさと合ってないな。どうやって入ってたんだ?」
「ダンジョンは不思議の塊っスね」


 罠も無く、安全だと分かったからだろう。いつの間にか背後にはパーティーメンバーが勢揃いして宝箱の中を覗き込んでいた。

 剣を天子田さんに渡す。吉根が見たそうにしていたけど、迂闊に抜いて何かあったらヤバいからね。

 次に入っていたのは角だ。単なる素材だろうか。泉ヶ丘さんが「魔力を感じる」って言ってるから、魔法武器とかの材料になるのかもしれない。

 そして、最後は水晶珠だ。


「スキル珠っスかね?」
「どうだろう。転職の宝珠だったら嬉しいが」


 この二つは俺達には見分けがつかない。これも鑑定待ちだな。

 最後のアイテムを取り出すと、いつの間にか宝箱は消えていた。

 消えなかったら、内容量が大きくなる魔法箱として使えたのにな。残念だ。


「なかなか当たりっぽかったっスね」
「そうだな」


 宝箱の中身に満足いったみたいだ。

 武器と素材とアイテム。それぞれ価値が高そうだ。


「あの剣、オレが買い取っても良いっスか?」
「剣は使わないからオレは良いぞ」
「俺も構わないけど、鑑定しないうちからそんなこと言って良いの?」


 見た目だけかもしれないし、逆にとんでもない名剣で価格が凄いかもしれない。


「ち、貯金ならしてるから………」


 震え声で言う吉根。

 実際、脅威度1の一階層のボスドロップなんてそこまで高価な物は落ちないと思うけどね。せいぜい数万円ってところだろう。


「昔と違って武器類の値段も落ち着いてるから大丈夫だろ」
「そっスよね」


 ダンジョンが現れた当初は今より頻繁にエネミーが溢れていたし、自衛のために強い武器を買う人が多く、値段も高騰していたらしい。

 だけど、冒険者も増えた今はエネミーの間引きも順調で、少なくとも日本では滅多にダンジョンからエネミーが溢れる事はなくなった。

 その当時から比べたら、武器の値段も控え目になってきている。

 まあ、脅威度の高いダンジョンから出てくるアイテムは、相当高いみたいだけどね。それはコレクションしたり投機の材料にされたりもするかららしい。


「じゃ、そろそろ戻るっスか」
「そうだな」


 部屋の隅に下りの階段が出来ていた。

 一通り休憩した俺達は、その階段を下りて二階層へ向かう。下りきったところは小部屋になっていた。小部屋の奥には扉と、水晶珠のオブジェがあった。


「これが転移水晶っスね」
「そうだ。これに触ると登録されて、入り口との行き来が出来るようになるらしい」
「その前にちょっと二階層も見ておこうよ」
「そっスね。そうすれば明日は二階層も探索出来るっスね」
「ああ、そうしよう」


 女性陣にも了解を取り、扉を開けて一歩出てみる。二階層は一階層とは違い、石造りの通路が続いているようだ。

 その確認だけすると、すぐに小部屋に戻って転移水晶に近付く。流石に二階層を探索する体力は残ってないからね。

 転移水晶の前に戻っておそるおそる触ると、帰還の二文字が眼前に表示された。

 文字に意識を向けて肯定すると、目の前の景色が変わった。すんなりダンジョンの外に出られたようだ。

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