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三章 平和って良いですね

三十二話

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「無事に着いたっスね。一旦ここで休憩にするっス。各自水分補給なんかするっスよ」


 アクシデントも無く休憩場所に到着。泉ヶ丘さんもレベルが上がったからか、昨日より疲れてないようだ。

 俺は一口羊羮で糖分補給。濃い目に淹れた緑茶が欲しくなるけど、持ってきたのは麦茶だ。緑茶は利尿作用があるはらしいからやめておいた。ダンジョンの中にトイレは無いからね。


「良いっスね、羊羮」
「いる?」
「ありがとうっス」


 吉根に渡すついでに、皆にも聞いたら欲しいって言ったから配った。昨日はクッキーやスポーツドリンクもらったからお返しだね。


「なんだ、こんなとこダンジョンまで来て優雅にお茶会か市場?アマチャンはやっぱやることがタルイな」
「八剣」


 俺達が休憩していると、男性ばかり六人のパーティーがやってきた。リーダーっぽいロングソード持ちは市場君の知り合いみたいだな。仲は良くなさそうだけど。

 まあ、俺もあんな嫌味っぽい奴は好きになれないけどな。


「なんっスか?羨ましいんスか?」
「吉根………。フン、行こうぜ」
「お、おう」


 吉根が口を挟むと、八剣のパーティーは捨て台詞も残さずさっさと行ってしまった。


「なんなんだ、アレ?」
「変わり者っスよ」
「変わり者?」
「そっス。戦闘職しか要らないって斥候も支援もパーティー入れないって豪語している連中っス」


 やっぱりいるんだ、そういう連中。

 でもまあ、脅威度の低いこのダンジョンなら通用するかもね。その後はどうするか知らないけど。


「それにしても吉根の顔見てどっか行っちゃったけど、嫌われてるの?」
「え?オレ、嫌われてるっスか!?」


 素朴な疑問をぶつけると、吉根は驚いた顔をする。クラスで孤立してないか心配だわ。


「八剣は模擬戦で吉根に勝てないから苦手意識があるんだよ」
「え?」


 吉根はそんなに強かったのか?それとも、あの八剣ってのが口だけって感じなのか?

 なんかちょっと吉根がドヤ顔してるのがムカつくな。


「吉根は対人戦が異常に強いんだよ。戦闘科の中でも上位に入るんじゃないのか」
「人を叩くのは得意なんスよ」
「え、なにそれ怖い。これからちょっと付き合い方を考えるようにするよ」


 人を叩くのが得意って、ちょっとした異常者じゃないか。


「ちょ、ちょっと小幡君。オレ達ズッ友じゃなかったんスか!?」
「やめろ、くっつくな!」
「ちぅ!」


 不意に抱き付かれ、バランスを崩す俺。巻き添えになって抗議の声をあげるツクモ。呆れた顔をする市場君と泉ヶ丘さんのカップル。そして、アホなじゃれあいを心配そうに見てる天子田さん。

 八剣じゃないけど、ダンジョンでやることじゃないよな。

 まあ、このユルい雰囲気は嫌いじゃないけどね。


「じゃあ、そろそろレベル上げしていくっスよ!」


 闖入者のおかげで休んだ気がしないけど、時間になったので休憩を切り上げた俺達は、エネミーを求めて移動を再開したのだった。
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