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三章 平和って良いですね

二十三話

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「じゃあ、ちょっと偵察に行ってくるよ」
「了解っス。気を付けて行ってくるっスよ」
「小幡、頼んだ」


 スポーツ飲料と手作りクッキーで小腹を満たした俺は、ツクモと一緒に偵察に出る事にした。

 泉ヶ丘さんがまだ疲れが抜けきって無さそうだからね。


「あ、そうそう。途中でエネミーを駆除したら、魔石をもらって良いかな?もちろん、取り分から引いてもらってかまわないから」
「何かあるっスか?」
「いや、ツクモの餌にしようと思ってさ」
「なるほど、了解っス」


 次ぎにダンジョンに潜るのは、カリキュラムの予定だと火曜日になるからな。さすがに3日も魔力の補給が出来ないとヤバいかもしれない。

 どれくらい必要かは分からないけど、ビッグホッパーの魔石が10個もあれば充分だろう。ビッグホッパーじゃなくてももちろん良いけど、あくまでも目安だしね。


「ツクモ、行くよ」
「ちぅ」


 ツクモを肩に乗せ、先へ進む。

 少し歩くと、樹木が鬱蒼としてきた。ここからは森ゾーンってとこだな。

 俺は森の中には入らず、その境界を移動していく。


「おっと、上から降ってくるな」


 慣れてきた【危険察知】の警告音が、エネミーの奇襲を教えてくれる。一歩さがり、棒を頭上で一振りする。

 上を見ると、案の定ブッシュスネークだった。

 棒で二匹いっぺんに弾かれたブッシュスネークは、地面に叩き落とされた。

 すかさず一匹に棒を思いっきり叩き付けてトドメを刺すと、素早くもう一匹を仰向けのまま押さえつける。


「ツクモ、トドメを!」
「ちぅ!?」


 マジで!?って顔をされるが、俺は断固として指示を覆さなかった。

 ただ、グネグネ動いているのにトドメを刺すのは難しかろうと、両手を使って動かないようにしてやった。


「ちぅ………」


 そこまでされてもツクモは乗り気じゃなかったけど、怖々と肩を下りてブッシュスネークに近付いていく。

 蛇なんてネズミにとって天敵以外の何者でもないからな。怖くても当たり前だろう。

 当然、こんなことするのには訳がある。

 実はエネミーもレベルが上がるらしいのだ。しかも、格上を倒すと上がりやすいらしい。なんとなくブッシュスネークの方が格上っぽいからちょうど良いだろう。

 なので、餌を集めるついでにレベルアップもさせちゃおう大作戦開始だ。

 もちろん偵察も出来るし、一石三鳥だ。お得すぎて「フヒヒヒ」と変な笑い声が出ちゃうくらいだ。


「ちぅ!」


 どうやら俺が気持ち悪い笑みを浮かべてる間にも、ツクモはブッシュスネークを仕留めたようだ。首の辺りを噛みきったみたいだな。

 褒めてくれって顔をしているから、頭を撫でてやった。

 嬉しそうに鳴くツクモが可愛すぎて、思わずご褒美を上げたくなってしまった。


「なあ、これ食べてみるか?」
「ちぅ!」


 頷いて両手で受け取ると、ガリガリと噛り始めた。美味しいのか、さっきのクッキーより勢いが良い。


「そういえば、ツクモがレベルアップしたかどうかは、鑑定宝珠で見てもらわないと分からないんだよなぁ。すぐに確認出来たら良いのに」


 あっという間に魔石を平らげたのを見ながら、願望を口に出したら、目の前に突如半透明の画面が現れた。

 そこにはこう書かれていた。

 小幡蓮
 レベル:3

 ジョブ:初級テイマー
 サブジョブ:
 サブジョブ:

 スキル:【危険察知】【テイム(1/1)】【魔獣使役】【能力閲覧】【育成】

 HP:30
 MP:20
 筋力:1
 魔力:2(+1)
 体力:1
 器用:1
 敏捷:1(+1)
 幸運:1
 残りSP:59


 従魔
 ツクモ
 種族:ウイングラット
 レベル:2/50
 進化:1/100

 ジョブ:
 サブジョブ:
 サブジョブ:

 スキル:【風魔法】

 HP:30
 MP:40
 筋力:2
 魔力:7
 体力:2
 器用:3
 敏捷:6
 幸運:11
 残りSP:6

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