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三章 平和って良いですね

十九話

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「やっぱりツクモを連れて授業に出るのに、何か対策考えないといけないよなぁ」


 俺は学食で夕飯を食べながら呟く。住んでいる寮の個室は1Kで、一応キッチンはついているものの、あまり使っていない。動画サイトで作りたいものが流れてきたら作るくらいだ。だから、だいたいの食事はここで部活の仲間で食べることが多い。

 今日は珍しくみんな用事があるとかで、一人でツクモと食べている。

 そのツクモは普通の食事をとる必要はないらしいけど、やはり俺が食べてる物は気になるらしく、ちょこちょこねだってくる。

 特に食べても害にはならないらしいから、ねだられたらついつい上げてしまう。だってねだり方が可愛いからね。今はプチトマトを両手に持って食べている。


「あれ?小幡君が一人でいるなんて珍しいね」


 声をかけてきたのは牛牧さんだ。友達らしき女子と一緒だ。その友達は見たことがないから、多分他の学科の人なんだろう。

 牛牧さんは俺の了承も得ず、対面の椅子に座る。友達らしき女子は躊躇いがちにその隣に着席した。

 ツクモは一瞬チラッと牛牧さんの方を見たが、すぐに興味を失ったようで、すぐにプチトマトを食べる事に集中しはじめた。


「そうそう、支援科の天子田あまこだ美桜みお。アタシの幼馴染みなの」
「ども」


 天子田さんがペコリと頭を下げる。ちょっと長めの前髪と眼鏡のせいで表情が分かりにくいけど、急に相席になって戸惑っているのは分かる。口数も少ないし、人見知りなんだろう。


「んで、こっちがウイングラットのツクモちゃんとその飼い主の小幡君」
「ども」


 俺も人見知りだから、似たような返事をしてしまう。コミュ力オバケの牛牧さんはホント凄いと思うよ。クラスでも男女問わず仲良くしてるもんな。

 どうやら牛牧さんと天子田さんは同じ陸上部みたいだ。牛牧さんが中距離走で、天子田さんは投擲競技をしているらしい。

 道理で天子田さんはがっちりとした、良いガタイしてると思ったよ。そうとう鍛えてそうだ。


「美桜は中学の時、一年生で全国行ったんだけどね、二年生の時にスキルが生えてそれから公式試合に出れなくなっちゃったんだよ」


 スキルが生えると、物によっては公式のスポーツ競技には出れなくなってしまう。だから今はドーピング検査と同じように、鑑定宝珠を使ったスキル検査が行われているらしい。

 天子田さんのスキルは【重量軽減】で、持ち物の重量を軽くするものらしく、競技的にアウトだったそうだ。


「ああ、それはなんというか、残念だったね」
「い、いえ………」


 パッと気の効いた事が言えないな。なんかちょっと気まずい。


「それにしても、小幡君って少食なのね。それだけで足りるの?」


 少食と言われても、俺が食べてるのは唐揚げ定食の大盛だ。普通ならこれで十分だろう。

 しかし、牛牧さんはハンバーグ定食とラーメンに餃子。天子田さんに至っては2つのトレーにところ狭しと料理が乗っている。

 やっぱり身体を動かすとお腹が空くんだろう。

 彼女達と比べられたら確かに俺は少食なんだろう。ようは比較対象の問題だな。

 なんか、天子田さんが急にチョビチョビ食べ始めたぞ。さっきまでカツ丼を大きな口で食べてたのに。

 ちょっと顔が赤くなってるし、恥ずかしくなっちゃったのかも。可哀想に。


「あ、ツクモちゃんヘソ天して寝てる!可愛い!」


 プチトマトと唐揚げを1個ずつ食べて満足したのか、いつの間にかお腹を上にして寝ていた。それを見て女子二人は騒いでいる。

 確かに可愛いから仕方ないね。

 それからも牛牧さんを中心に、楽しい食事時間を過ごすのだった。
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