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二章
34話
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「今日はここで休みましょう」
リコラはもうちょっとで山道に入る街道脇の広場に馬車を停めた。昼間は昼食も摂らずに走ってきたから、随分と距離が稼げた。こういう時に休む必要の無いゴーレムは良いよね。
ここは街道を行き来する旅人の為の場所だそうだ。数組の先客がそれぞれ夜営の用意をしていた。
「キャンプ場みたいだな」
竈が設えてある東屋や近くに流れる川への道が整備されている光景に、日本のキャンプ場を思い浮かべた。
その間にもリコラは馬車の側面からタープを引っ張りだし、夜営の準備を始めている。慌てて俺も手伝う事にする。
荷台から簡易式の竈を取り出し、タープの下に設置。この竈はリコラお手製の魔道具で、薪や炭の他にも魔石で火を出す事も可能だ。なんなら使用者の魔力でも動く優れものだ。
テーブルや椅子も取り出したら、二人でクッキングタイムだ。
まぁ、日持ちの為に乾燥させた野菜や肉を鍋にぶちこんで煮込むだけだけどね。
味付けは複数の香辛料を混ぜた物を使う。これもリコラが独自に配合したものだけど、カレーっぽい香りが食欲を刺激して堪らない。
早速テーブルに座って食べ始める。
そして俺は気付いたのだよ。
女の子が作った手料理を食べるのは初めてなんだと。
「え?急に泣き出してどうしたの?もしかして辛すぎた?」
「いや、何でもないんだ」
思わず感動して泣いてしまったなんて言えないよね。
「私、辛いものが好きだから、もし口に合わなかったら言ってね」
今回、移動の時にかかる経費は全部、雇い主であるリコラ持ちだ。
まぁ、彼女の資金も潤沢とは言えないので、極力野宿するという約束になっている。
何しろ錬金術の研究はお金がかかるらしいからね。アルケニーの報酬も渡したけど、瞬時に消えてしまうそうだ。
「美味しいよ。毎日でも食べたいくらいだ」
「!?」
出来ればご飯が欲しくなるけどね。出されたナンみたいな種無しパンも美味しいし、文句はない。
ふと無言になったリコラを見ると、顔を真っ赤にしていた。
………あ、ちょっとプロポーズっぽかったかな?
え、でも、まさかこれだけの事で勘違いしないよね?
「あ、あ、そそ、そういえば、本当にローズちゃんの分は要らなかったの?」
「うん、ローズは基本的に俺の魔力供給だけで良いみたい。足りなければ魔石を与えれば良いらしいよ」
「そ、そうなんだ。使い魔ってあんまり興味が無かったから知らなかったわ」
ローズは今、馬車の上から辺りを警戒してくれている。それを気にしてくれたんだろう。
俺達は夕食を食べ終わると、早々に休むのだった。
リコラはもうちょっとで山道に入る街道脇の広場に馬車を停めた。昼間は昼食も摂らずに走ってきたから、随分と距離が稼げた。こういう時に休む必要の無いゴーレムは良いよね。
ここは街道を行き来する旅人の為の場所だそうだ。数組の先客がそれぞれ夜営の用意をしていた。
「キャンプ場みたいだな」
竈が設えてある東屋や近くに流れる川への道が整備されている光景に、日本のキャンプ場を思い浮かべた。
その間にもリコラは馬車の側面からタープを引っ張りだし、夜営の準備を始めている。慌てて俺も手伝う事にする。
荷台から簡易式の竈を取り出し、タープの下に設置。この竈はリコラお手製の魔道具で、薪や炭の他にも魔石で火を出す事も可能だ。なんなら使用者の魔力でも動く優れものだ。
テーブルや椅子も取り出したら、二人でクッキングタイムだ。
まぁ、日持ちの為に乾燥させた野菜や肉を鍋にぶちこんで煮込むだけだけどね。
味付けは複数の香辛料を混ぜた物を使う。これもリコラが独自に配合したものだけど、カレーっぽい香りが食欲を刺激して堪らない。
早速テーブルに座って食べ始める。
そして俺は気付いたのだよ。
女の子が作った手料理を食べるのは初めてなんだと。
「え?急に泣き出してどうしたの?もしかして辛すぎた?」
「いや、何でもないんだ」
思わず感動して泣いてしまったなんて言えないよね。
「私、辛いものが好きだから、もし口に合わなかったら言ってね」
今回、移動の時にかかる経費は全部、雇い主であるリコラ持ちだ。
まぁ、彼女の資金も潤沢とは言えないので、極力野宿するという約束になっている。
何しろ錬金術の研究はお金がかかるらしいからね。アルケニーの報酬も渡したけど、瞬時に消えてしまうそうだ。
「美味しいよ。毎日でも食べたいくらいだ」
「!?」
出来ればご飯が欲しくなるけどね。出されたナンみたいな種無しパンも美味しいし、文句はない。
ふと無言になったリコラを見ると、顔を真っ赤にしていた。
………あ、ちょっとプロポーズっぽかったかな?
え、でも、まさかこれだけの事で勘違いしないよね?
「あ、あ、そそ、そういえば、本当にローズちゃんの分は要らなかったの?」
「うん、ローズは基本的に俺の魔力供給だけで良いみたい。足りなければ魔石を与えれば良いらしいよ」
「そ、そうなんだ。使い魔ってあんまり興味が無かったから知らなかったわ」
ローズは今、馬車の上から辺りを警戒してくれている。それを気にしてくれたんだろう。
俺達は夕食を食べ終わると、早々に休むのだった。
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