召喚勇者は怪人でした

丸八

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二章

31話

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「おや、また来たのかい」

「はい、お邪魔します」

 本日二度目の魔法屋さんだ。

 お金が入ったらついつい使っちゃいたくなるのが悪い癖だよなぁ。

 報酬はパーティーに対して支払われたから、リコラと折半だ。家賃やゴーレムの支払いなんかを差し引いて、今回の予算は百万にしよう。

「雷魔法の調子はどうだったかい?」

 心の中で金勘定をしながらショーケースを見て回っていると、店長が声を掛けてきた。

「今いるのがゴーレムダンジョンだからか、使い勝手は微妙でしたね。下手に使うとゴーレムコアが壊れちゃうんですよ」

「ありゃ、それは困ったねぇ。じゃあ、新しい属性魔法を探しに来たのかい?」

「いえ、あそこは初級魔法で充分だから、今は取り敢えず他の属性は考えてませんよ」

「………ほう、魔法防御力の高いゴーレムを初級魔法で仕留めるかよ」

 店長がポツリと何か呟いたが、声が小さすぎて内容を聞き取る事は出来なかった。

「属性魔法じゃないとすると、何をお探しかな?」

「何って訳じゃないんですけどね。ちょっと臨時収入があったので、良いのないかなと思って。後は明日から護衛クエストなので、それに役立つのが欲しいと言えば欲しいですね」

 店長は「待っとれ」と言い残すと、バックヤードの方へと入っていく。暫くして出てきた時は手に小箱を持っていた。

「それは?」

「これは使い魔の卵じゃよ」

 中に入っていたのは魔法珠と綺麗に磨かれた魔石だった。

「これが卵?」

「通称、な。正確には《使い魔創造》の魔法珠と、素体になる魔石じゃよ」

「へぇ。どんな使い魔なんですか?」

 見ただけじゃ、どんな使い魔が出来るのか全く分からない。それどころか、何の魔法珠かすら全然分からない。

「それは使ってみなけりゃわからんのじゃよ。どうする?今なら70万ゼニダに負けておこう」

 何が出てくるのか分からない物に70万か………。

「買います!」

 ガチャみたいで良いな。

 思わず即決してしまったな。

「あいよ。ここで創っていくかい?」

 冒険者カードを使って支払いした俺は、店長の言葉に頷くと、カウンターの上から《使い魔創造》の魔法珠を取り上げる。

 そして、躊躇うことなく魔力を流して使用した。

「お、無事に覚えたようだね」

「はい」

「じゃあ、両手で素体を持って《使い魔創造》を使ってごらんよ」

「《使い魔創造》」

 店長に頷いて、早速《使い魔創造》を使ってみる。

 思っていたよりも多量の魔力が身体から抜けていく感覚がある。

 その抜けていった魔力は、素体となる魔石へと流れていっているようだ。

 最初、魔力を吸った魔石は、ほんのりと温かくなった。

 それから段々と熱を持ち、魔石から漏れ出した魔力が渦を巻き始めた。

 店長を見ると慌てた様子もないので、これが通常なんだろう。

 魔力渦の中心にある素体は光を放ちつつ、徐々に大きくなっていく。

 やがて拳大になった素体は、よりいっそう眩く光るのだった。
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