29 / 39
二章
28話
しおりを挟む
「ん?あれは?」
森に差し掛かる手前で、俺は走る速度を緩める。
疎らに生える木々の間に、子供くらいの背丈をした人影が見えたんだ。
腰の短剣に手を掛け、慎重に人影に近付いていく。
「ゴブリンか?」
木の影に隠れ、そっと様子を窺えば、一目で人間じゃないと分かるほど、醜悪な顔の魔物だった。
胴は酷く猫背で折れ曲がり、痩せている。腕は前腕が太く、粗末な棍棒を握っていた。一応、腰簑だけは着けている事から、服を着たり道具を使う程度の知能はあるんだろう。
きっとあれが噂に聞くゴブリンってやつなんだろう。
「珍しいな………いや、リコラの話だと、アルケニーが出る前はゴブリンくらいしかいなかったらしいな。ってことは、アルケニーがいなくなって戻ってきたのか?」
見える範囲にゴブリンは一体しかいない。
ひょとしたら、安全かどうか確認しに来た斥候役なのかもしれないな。
「これは好都合かもな。ダンジョンに入る前に試し撃ちをしよう」
魔法珠を使って得たのは《雷魔法》だ。その派生スキルで《雷打》《雷刃》《雷弾》の3つだ。《雷打》は初級魔法、《雷刃》《雷弾》は中級魔法のカテゴリーだ。
《雷魔法》のレベルが育てば他の魔法も覚えるようだ。単発で覚えるよりも確かにお買い得だな。
「さて、行きますか。《身体強化》」
こっちに意識が向いてないのを確認すると、ステータスを上げて一気に距離を詰める。
多少の知能はあるようだが、全方向に警戒を向けるのは無理なようで、あっさりとゴブリンは接近を許してくれた。
「《雷打》」
俺の両拳に雷が宿る。
「ギギッ?」
流石にゴブリンも俺の声に反応したようで、こちらに身体ごと振り返った。
振り向いたところを左拳で打つ。
拳が頬に当たると、バシンと電気が弾ける音がする。
ゴブリンがふらついたので、右で鳩尾を穿つ。同じく電気が弾ける音がした。
威力としては弱めのスタンガンってところか。
「《雷刃》」
短剣に魔力刃が展開し、その上を雷が跳ねる。すかさず棒立ちになっているゴブリンの頚をはねて止めとした。
「ふう。………さて、どんなもんかな?」
俺はゴブリンを解体すると、頚から身体の内部にはしるように所々火傷になっていた。
「《雷刃》の威力はなかなかだな。でも、ゴブリン程度なら《魔力刃》で充分か」
雷魔法の威力を確認した後、他にゴブリンがいないのを確かめた俺は、再びダンジョンに向けて走り出した。
森に差し掛かる手前で、俺は走る速度を緩める。
疎らに生える木々の間に、子供くらいの背丈をした人影が見えたんだ。
腰の短剣に手を掛け、慎重に人影に近付いていく。
「ゴブリンか?」
木の影に隠れ、そっと様子を窺えば、一目で人間じゃないと分かるほど、醜悪な顔の魔物だった。
胴は酷く猫背で折れ曲がり、痩せている。腕は前腕が太く、粗末な棍棒を握っていた。一応、腰簑だけは着けている事から、服を着たり道具を使う程度の知能はあるんだろう。
きっとあれが噂に聞くゴブリンってやつなんだろう。
「珍しいな………いや、リコラの話だと、アルケニーが出る前はゴブリンくらいしかいなかったらしいな。ってことは、アルケニーがいなくなって戻ってきたのか?」
見える範囲にゴブリンは一体しかいない。
ひょとしたら、安全かどうか確認しに来た斥候役なのかもしれないな。
「これは好都合かもな。ダンジョンに入る前に試し撃ちをしよう」
魔法珠を使って得たのは《雷魔法》だ。その派生スキルで《雷打》《雷刃》《雷弾》の3つだ。《雷打》は初級魔法、《雷刃》《雷弾》は中級魔法のカテゴリーだ。
《雷魔法》のレベルが育てば他の魔法も覚えるようだ。単発で覚えるよりも確かにお買い得だな。
「さて、行きますか。《身体強化》」
こっちに意識が向いてないのを確認すると、ステータスを上げて一気に距離を詰める。
多少の知能はあるようだが、全方向に警戒を向けるのは無理なようで、あっさりとゴブリンは接近を許してくれた。
「《雷打》」
俺の両拳に雷が宿る。
「ギギッ?」
流石にゴブリンも俺の声に反応したようで、こちらに身体ごと振り返った。
振り向いたところを左拳で打つ。
拳が頬に当たると、バシンと電気が弾ける音がする。
ゴブリンがふらついたので、右で鳩尾を穿つ。同じく電気が弾ける音がした。
威力としては弱めのスタンガンってところか。
「《雷刃》」
短剣に魔力刃が展開し、その上を雷が跳ねる。すかさず棒立ちになっているゴブリンの頚をはねて止めとした。
「ふう。………さて、どんなもんかな?」
俺はゴブリンを解体すると、頚から身体の内部にはしるように所々火傷になっていた。
「《雷刃》の威力はなかなかだな。でも、ゴブリン程度なら《魔力刃》で充分か」
雷魔法の威力を確認した後、他にゴブリンがいないのを確かめた俺は、再びダンジョンに向けて走り出した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
インフィニティ•ゼノ•リバース
タカユキ
ファンタジー
女神様に異世界転移された俺とクラスメイトは、魔王討伐の使命を背負った。
しかし、それを素直に応じるクラスメイト達ではなかった。
それぞれ独自に日常謳歌したりしていた。
最初は真面目に修行していたが、敵の恐ろしい能力を知り、魔王討伐は保留にした。
そして日常を楽しんでいたが…魔族に襲われ、日常に変化が起きた。
そしてある日、2つの自分だけのオリジナルスキルがある事を知る。
その一つは無限の力、もう一つが人形を作り、それを魔族に変える力だった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転移す万国旗
あずき
ファンタジー
202X年、震度3ほどの地震と共に海底ケーブルが寸断された。
日本政府はアメリカ政府と協力し、情報収集を開始した。
ワシントンD.Cから出港した米艦隊が日本海に現れたことで、
アメリカ大陸が日本の西に移動していることが判明。
さらに横須賀から出発した護衛艦隊がグレートブリテン島を発見。
このことから、世界中の国々が位置や向きを変え、
違う惑星、もしくは世界に転移していることが判明した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる