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二章
27話
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魔法士にランクアップした翌日、朝日とともに起床した俺は、アパートの狭いキッチンで朝食を作っていた。
まあ、難しい物は作れないから、目玉焼きとベーコンを焼くくらいだ。それにギルドの食堂で買ったスープを温め直した物に近所のパン屋で買ったロールパンを添えて出来上がりだ。
彩りにサラダでもとは思うが、こっちの野菜はあまり生食には向かないようだ。なので、スープに入ってる野菜で良しとしている。
「ちゃんと火は入ってるけど黄身は半熟。うん、良いね。俺も上達したもんだ。最初は加減が分からなくて焦がしちゃったからね」
日本にいた時は朝はご飯だったけど、こっちに来てからはほぼパンだ。
本当は白米が恋しいけど、この世界には炊飯器が無いから炊くのは難しい。鍋で炊こうものなら焦がすか生煮えかどっちかの未来しか見えない。
「蒸し米なら売ってるけど、微妙にコレジャナイ感があるんだよなぁ。その内、調理スキルでも買おうかな。いや、いっそ料理人のジョブに就くのも良いかも」
埒もない事を考えながら食べ終えた食器を洗い、出発の準備を整える。
「明日はリコラを領都まで護衛して行かなきゃいけないから、魔法屋さんに行ってみよう。良いのがあったら買って、それからダンジョンで試し撃ちもしてみたいからね」
いよいよ試験の為のゴーレムが出来上がったらしく、リコラから領都まで護衛するよう頼まれているんだ。もちろん冒険者ギルド経由のちゃんとしたクエストとしてね。
なにげに初指名依頼だ。C級に指名依頼を出すなんて、リコラも奮発したもんだよね。
まぁ、それだけ今回の試験に賭けてるってことなんだろう。何しろ、錬金術師のランクアップ試験は年に一回って言ってたからな。制御装置でお手軽な俺とは訳が違うよ。
「おや、いらっしゃい。今日は早いんじゃな」
「うん、今日はちゃんと魔法を買おうと思ってね。練習もしたいから、ダンジョンに行く前に来たんだ」
魔法屋さんで俺を出迎えたのは、黒の三角帽子に同色のローブ、手にはねじくれた木の杖という典型的な魔女の格好をした店長さんだ。
小柄な彼女の顔は、帽子のツバの陰に隠れて全く見えない。本当に全く見えないから、魔法を使っているんだと思っている。
流石は魔女と言うべきか、それとも接客業のプロと言うべきか分からないけど、一回来ただけの俺をしっかり覚えていたようだ。
「ほう、どれにするか決まったのかい?」
「うん、属性付きの中級攻撃魔法にするつもりなんだけど、どれにするかは値段次第かな」
「なるほど。じゃったら、この辺じゃの」
店長が指し示したのは、8個の魔法珠が入ったショーケースだ。
「それぞれ、火、風、水、土、雷、氷、闇、光じゃ。値段はどれも100万ゼニダじゃ」
あれ?思ってたよりも高い?
「この前お主が見ていたのは、ファイヤーランス等の単発魔法じゃったろ?こっちのは属性の系統を使えるようになる魔法珠じゃ。それぞれ単品で買うより断然お徳じゃろ?」
「む」
確かにお徳感がある。しかも、ギリギリ買える値段だ。
チラッと店長を窺うが、相変わらず顔色は全く分からない。足元を見られてるのか、単純に良いものをお勧めされてるのかも不明だ。
「か、雷を下さい」
「毎度あり。今から使うかい?」
「はい」
色々と説明を受け、迷いに迷って、最終的に雷属性の魔法珠を買う事に決めた。
攻撃速度が速いのと、追加で麻痺もさせる事が決め手だった。
俺はほぼすっからかんになった冒険者カード内の残高にタメ息を漏らし、魔法屋さんを後にして、ダンジョンへと向かうのだった。
まあ、難しい物は作れないから、目玉焼きとベーコンを焼くくらいだ。それにギルドの食堂で買ったスープを温め直した物に近所のパン屋で買ったロールパンを添えて出来上がりだ。
彩りにサラダでもとは思うが、こっちの野菜はあまり生食には向かないようだ。なので、スープに入ってる野菜で良しとしている。
「ちゃんと火は入ってるけど黄身は半熟。うん、良いね。俺も上達したもんだ。最初は加減が分からなくて焦がしちゃったからね」
日本にいた時は朝はご飯だったけど、こっちに来てからはほぼパンだ。
本当は白米が恋しいけど、この世界には炊飯器が無いから炊くのは難しい。鍋で炊こうものなら焦がすか生煮えかどっちかの未来しか見えない。
「蒸し米なら売ってるけど、微妙にコレジャナイ感があるんだよなぁ。その内、調理スキルでも買おうかな。いや、いっそ料理人のジョブに就くのも良いかも」
埒もない事を考えながら食べ終えた食器を洗い、出発の準備を整える。
「明日はリコラを領都まで護衛して行かなきゃいけないから、魔法屋さんに行ってみよう。良いのがあったら買って、それからダンジョンで試し撃ちもしてみたいからね」
いよいよ試験の為のゴーレムが出来上がったらしく、リコラから領都まで護衛するよう頼まれているんだ。もちろん冒険者ギルド経由のちゃんとしたクエストとしてね。
なにげに初指名依頼だ。C級に指名依頼を出すなんて、リコラも奮発したもんだよね。
まぁ、それだけ今回の試験に賭けてるってことなんだろう。何しろ、錬金術師のランクアップ試験は年に一回って言ってたからな。制御装置でお手軽な俺とは訳が違うよ。
「おや、いらっしゃい。今日は早いんじゃな」
「うん、今日はちゃんと魔法を買おうと思ってね。練習もしたいから、ダンジョンに行く前に来たんだ」
魔法屋さんで俺を出迎えたのは、黒の三角帽子に同色のローブ、手にはねじくれた木の杖という典型的な魔女の格好をした店長さんだ。
小柄な彼女の顔は、帽子のツバの陰に隠れて全く見えない。本当に全く見えないから、魔法を使っているんだと思っている。
流石は魔女と言うべきか、それとも接客業のプロと言うべきか分からないけど、一回来ただけの俺をしっかり覚えていたようだ。
「ほう、どれにするか決まったのかい?」
「うん、属性付きの中級攻撃魔法にするつもりなんだけど、どれにするかは値段次第かな」
「なるほど。じゃったら、この辺じゃの」
店長が指し示したのは、8個の魔法珠が入ったショーケースだ。
「それぞれ、火、風、水、土、雷、氷、闇、光じゃ。値段はどれも100万ゼニダじゃ」
あれ?思ってたよりも高い?
「この前お主が見ていたのは、ファイヤーランス等の単発魔法じゃったろ?こっちのは属性の系統を使えるようになる魔法珠じゃ。それぞれ単品で買うより断然お徳じゃろ?」
「む」
確かにお徳感がある。しかも、ギリギリ買える値段だ。
チラッと店長を窺うが、相変わらず顔色は全く分からない。足元を見られてるのか、単純に良いものをお勧めされてるのかも不明だ。
「か、雷を下さい」
「毎度あり。今から使うかい?」
「はい」
色々と説明を受け、迷いに迷って、最終的に雷属性の魔法珠を買う事に決めた。
攻撃速度が速いのと、追加で麻痺もさせる事が決め手だった。
俺はほぼすっからかんになった冒険者カード内の残高にタメ息を漏らし、魔法屋さんを後にして、ダンジョンへと向かうのだった。
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