召喚勇者は怪人でした

丸八

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二章

25話

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「このまま素直に魔法士にランクアップすべきか、はたまた全く違うジョブに変わるべきか悩むな」

 俺は冒険者ギルドに素材を売り、食堂で食事を済ますと、先日から借りているアパートに帰ってきた。

 どうやら冒険者ギルドの宿舎は低級か、短期の滞在のみしかダメみたいで、C級の俺はやんわりと追い出されてしまった。

 リコラに頼んだゴーレムが出来るまではこの町にいなけりゃいけないから、ギルドの紹介でここを契約したんだ。

 ギルド宿舎に比べれば多少高いけど、他の宿を借りようと思ったら割安なんだ。

 帰って早々、俺は寝台の上に寝転がると、ジョブをどうしようか考えはじめた。

 俺が最初に魔法使いを選んだのは、地球育ちで魔法に触れる機会がなかったから、魔力量が少なすぎたからだ。

 そのせいで誰かが勝手に埋め込んだ闘衣の制御装置を使えなかったんだ。

 それも二日目にして大量の蜘蛛を倒した事で、急激にレベルが上がって、魔力量が規定値に達した事で制御装置を扱えるようになった。

「だけど、まだ魔力量が少ないから短時間した変身していられないんだよなぁ」

 ステータスが5倍になるけど、燃費が悪くて魔力がすぐに枯渇してしまう。

 単体の格上に挑むのは良いけど、数が多ければ詰んでしまう。

「魔法使いがジョブレベルMAXで、《初級魔法の奥義》を獲得したから、他系統のジョブに就いてステータスを伸ばすのもいいかな?」

 《初級魔法の奥義》は初級魔法の威力が10%アップと魔力量5%アップだ。スキルレベルが上がれば効果も上がる。

 闘衣を切り札として使うんだったら、このまま他系統のジョブでステータスやスキルを取っていくんでも良いかもしれない。

「魔法も今のところ充分っちゃ充分だし」

 遠距離は魔力弾、近距離は魔力刃で充分対応出来ている。

 下手に属性が付いていないだけ、応用できる幅も広いし、魔力刃は《武芸百般》との相性も良い。

 逆に弱点属性で攻撃できれば、これから楽になるのも確かだ。まぁ、魔法を覚えるのにはそれ相応のお金がかかるんだけどね。

「まぁ、制御装置でジョブの設定はいつでも出来るようだし、魔法士にランクアップして取り敢えず様子を見てみるかな」

 普通はランクアップを含めて転職するには、所定のギルドで手続きがいるけど、俺は制御装置で設定するだけで良いという手軽さがある。

 それもこれもシステムの根幹を監察官が握っているお陰だ。

 有り難いやら恐ろしいやら………。

 俺は早速、魔法士にランクアップするための操作をするのだった。
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