召喚勇者は怪人でした

丸八

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一章 変身

19話

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 土煙をあげ、木々を蹴散らしながら現れたのは、全身を蜘蛛の糸で真っ白になった魔物と、それに取りつくファミリアスパイダー、それから傷だらけの魔物だ。

 蜘蛛の糸が張り付いている魔物は、小型肉食恐竜といった外見だ。

 小型と言っても全高が2メートル、尻尾も含めた全長は4メートル位あり、俺から見たら充分以上にデカイ。


 傷だらけの魔物は、恐らくアルケニーだろう。蜘蛛の下半身に、人の様に見える上半身を持っている。

 ただ、あくまでも人の様に見えるってだけで、やはりよく見れば蜘蛛だなと分かる。漫画みたいな美しい女性って訳じゃないのは残念だ。

「これは、逃げ一択だな」

 恐竜とアルケニー一族の争いは熾烈を極めていた。

 糸のデバフ効果で多少動きの制限を受けているようだが、そんなものをものともせずに恐竜はファミリアスパイダーを踏み潰し、噛み砕いている。

 その間にアルケニーは恐竜を噛みついたり、糸で攻撃しているようだが、大した効果は無いように見える。

 だけど、ファミリアスパイダーの物量も侮れず、森から続々と溢れてきており、かなり気持ち悪い。

「巻き込まれるのもヤバい。距離をとろう」

 痺れがまだ取れていないリコラを、ウマコから落ちないように支えながらダンジョンの方に戻る道へと進み始める。

 何匹かの恐竜に取り付いていないファミリアスパイダーがこちらへ襲い掛かってくるが、魔力弾で迎え撃ちつつ後退していく。

「おいおいおい、マジか………」

 しかし、何故か魔物たちは争いの現場を俺のいる方へと移してくる。

 多分、アルケニー達の有利になる森から恐竜は離れたいんだろう。

 それで足場の良い道を移動しているのかもしれない。

 ゆっくりしか進めない俺達にとっては最悪だ。

「なんとか移動出来ないように出来ないかな?一応、魔力弾で足を狙ってみるか」

 俺は恐竜がファミリアスパイダーを振り払ったタイミングを見計らい、魔力弾を放ってみた。

 しかし、頑丈そうな鱗にあっさり弾き返されてしまった。

「マジか。硬すぎるだろ」

 俺は恐竜の防御力に言葉を無くす。

 そして、その恐竜に多少なりとはいえダメージを与えているアルケニー達にも改めて脅威を覚えた。
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