【R18】君は僕の太陽、月のように君次第な僕(R18表現ありVer.)

茶山ぴよ

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第15章 夢一夜

第278話 夢一夜(4)★

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「将……、あたしを抱いて」

聡の顔は将のすぐそばにあるらしい。囁きと共に熱い吐息が将の鼻を撫でた。

将の体は思わず、ぶるっ、と震えた。戦慄というやつに違いない。

「ア、アキラ」

声のコントロールができなくて、将の声は暗い部屋に響いた。

し、と聡が小さくそれを制する。

「なんで……?」

自分でもなんでそんな野暮な問いが出てしまうのか、わけがわからない。将は混乱していた。

「……わかんない」

聡は自分でもわからない熱情に突き動かされていた。

将と素肌を交わすことができるのは、このときが一生で最後になる。

……そんなふうに何かを予感していたのかもしれないと後年、聡はこのときを思い出すことになる。

しかし、漠然とした予感はあっても、そんな未来のことを知るよしもない聡は、ただ自分の肌に沸き立つような将への思慕、そして欲望に身も心も委ねていた。

今日が、将と、身も心も結ばれるときなのだ……と聡は将の産毛が唇に触れるほど近くまで顔を近づけた。

聡のたぎる血の温度が将の頬に伝わる。

「い……いいの?」

将は自分にのしかかる聡の影に訊いた。とまどうあまり、こんなことを訊く自分は格好悪いと思う。

自分が聡を抱くときは、きっとリードしようと何度も思い描いていたのに。

幾夜、聡を思って一人眠っただろうか。何度、その肌に思い焦がれて、虚しく射出しただろうか。

ずっと憧れた聡の体が、今差し出されたのに。

将は、思っていたようなことを何1つできずにいた。

と、布がずれる音がして将の顔がふわりと柔らかいものに包まれた。……聡の掌が将の頬に添えられたのだ。

1秒後には、将の唇に甘い感触が降りてきた。ひさしぶりに味わう聡の唇に、将の息が止まる。

聡は……将の問いに頷くかわりに唇を押し付けてきたのだ。

聡の舌が、将の唇を越えて、軟体動物のように入り込んできた。

将は思わず、止めていた息を吐き出すと、ようやく聡の舌を自分の舌で受け止め、

聡のそれと混じった唾液をごくん、と音を立てて飲み込んだ。

なま温かい舌と舌は絡み付いて、せせらぎに湿った淫靡な音を混じらせた。

舌と舌の交わりだけで脳が痺れたように麻痺していく……将はいかに自分が聡に飢えていたかを思い知った。

鈍くなっていく思考に代わって、性器に直結する本能が屹立していく。

将は自分にのしかかる聡の背中に再び手をまわそうとして、思いがけない熱さにハッとする。

将の手は聡のなめらかな素肌にいきなり触れたのだ。

聡は……すでに浴衣を脱ぎ捨てていた。下着は乾燥機に入ったままだから、すでに生まれ落ちたままの姿に違いなかった。

背中の素肌で将の手を感じたのか、口づけを交わす聡の唇からかすかに吐息が漏れた。

それを聴きとった将は……いきなり体を起こして聡を抱き締める。

そして今度は聡をやや乱暴に敷布団に押し付けると、自分も帯を解いて浴衣を脱ぎ捨てた。

暗緑色のカーテンに、将の肩のあたりのシルエットが浮かび、聡はもう後戻りはできない、と目を閉じた。

 

 


夜中になるというのに、せせらぎは、その調子を弱めることはない。

夜も、川は眠ることなく、ずっと流れ続けているのだ。

さっきはやや耳慣れなかったこのせせらぎが、今は、二人の息遣いを優しく隠してくれる味方になっていた。

襖と衝立で隔てただけの部屋で行う秘密の行為……。

このほとんど何も見えない闇の中、将は、唇と掌、そして指で、聡を……聡の曲線を記憶するようになぞっていた。

無我夢中だった。

それは画像で記録できない温かさと感触を、確かめ、丹念に記憶する作業のようだった。

何度かじかに触れてきたはずなのに、こうして暗闇で触れるとそれは新しい場所のように新鮮な感触を将に与えた。

よく……富士山やら上高地やら、美瑛やら……景勝地について

「刻々と表情を変える」

「1日も同じ風景はない」

「何度見ても飽きない」

などと褒めてあるものを目にする。

それは、将にとっての聡もたぶん同じだろうと、将は予想した。

きっと……聡は抱くたびに違った魅力を見せるに違いない。

なぜなら、抱かなくても、逢うだけでそのたびに発見がある聡だから。

絶対に飽きるはずなどない……将はなぜか誓うように聡の小さな乳首を噛んだ。

聡が、大きく息をついた。

その息遣いすら聞き漏らしたくない。

初めて絶景を見たものが、目に焼き付けようとするように、将は聡のすべてを心に焼き付けようと試みている。

最初おおまかなデッサンで始まったそれは、つま先から頭のてっぺんまで、

手と口づけで塗りつぶすような愛撫へと移行し、そして細部への描き込みに及んでいく。

どんな僻地だろうと、それが聡自身の目に届かない場所でも容赦はしなかった。

将は丹念に、かつ精緻な指と舌で聡を確かめていく。

今日が過ぎたら、少なくとも卒業までは、この肌に逢えるチャンスはない。

それをわかっている将は、目を閉じても鮮明に蘇らせることができるように、そして聡の体に刻み付けるように繰り返す。

聡は、だんだん熱く、そして塩辛くなり、潤っていった。

暗闇の中で、目には見えない聡の裸像がだんだんはっきりと捉えられるようになるにつれて、将自身も確固とした形に力をみなぎらせていった。

すべての像をおおまかに描きあげた将は、命を吹き込む場所を再び丹念に舌先でなぞりはじめた。

「……!」

聡は、急激に臨界点を迎えたのか、海老のようにびくんと上体を起こした。

「もう……」

訴えかけるような聡の呼びかけ。これ以上ないというほどせつなげな声を将は聞いた。

しかしそのあとは、言葉にならない声だけになった。

ずっと声を抑えていた聡だが、我慢の限界を超えたのだろう。

今までに抱いた女の中ではずっと控えめながら、聡はきれぎれに細く高い声を喉の奥から漏らし始めた。

体は大きくのけぞり、開いた腿をすごい力で閉じようとした。

そのときが来た事を将は、みなぎり、屹立する下腹部で感じとっていた。

 



雨も、せせらぎも次第に聡から遠のいていった。

将だけを感じて共鳴する……楽器のようなものになっている自分に、そして将からの愛撫に聡の全神経はいやがおうにも集中していく。

将がひと撫でするたびに。将がひと舐めするたびに。

聡のその肌には、蕾が緩んで一気に花開くような快感が生まれた。

楽器は……名演奏家に弾かれた快感を、美しい音色で表現しているのではないだろうか。

感覚が思考を圧倒する寸前、聡はそんなことを思った。

だが、襖だけで隔てられている隣に他人がいるこの状況、将に弾かれて、聡は音を鳴らすことはできない。

だが、声を出せない聡は、鋭くなっていく快感を持て余すしかない。

体をよじらせ、シーツを掴んで、鋭すぎる快感から無意識に逃げはじめる聡に、将は容赦をしないようだった。

聡が一番感じる『音域』を探り当てた将は、高音域でのトレモロのように繊細にかつ的確なタッチで聡を弾いた。

久方ぶりの、体が勝手に痙攣するような、そして大量の何かが体の中心から流れるような感覚が聡を襲う。

それに耐えられなくて

「もう、やめて」

と言おうとした。

だけど、コントロールできない声帯から漏れた、思わぬ音量の声にびくついた聡は、あとの言葉をうまく言えなかった。

聡はせめてもの抵抗に、唇をぎゅっと引き結んだ。

だけど……喉の奥から、高い声が漏れてしまう。

あと少し。あと少し。逃げながら聡はしびれたような脳でしきりにそう感じていた。

快感が肌につくりだす花は聡の中に大きな円をつくりだそうとしていた。

あと少しでまん丸になるのに……なにかが足りない。

本能がそう囁く。

息も絶え絶えになりながら、聡の脳裏に『成り成りて成り合はざる処一処あり』という一文が唐突に浮かび上がってきた。

聡は閉じていた目を開くと、空中に向かって微笑んだ。もちろん将には見えない。

たしか古事記だったはず。

夫のイザナギに訊かれて、妻のイザナミが

「私の体は、だんだん成ってきたけれど、どうしても足りないところが1ヶ所あるの」

と答えるという場面だ。

それに対してイザナギは、自分の体で成り余った1ヶ所を、

イザナミの足りないところに挿し入れて……つまりセックスをしようと提案する。

いま、聡は、自分の体が『成っている』のを感じている。

だけど、快感がまん丸になるには、1ヶ所が足りない。

聡の『成り成りて成り合はざる処』を将が埋めてくれなければ、それは完成しないのだ。

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