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小大陸編
婆さんと中年男
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海の国 王都
「それでどうやって会議に参加するんだ?誰かとこっそり入れ替わる?」
「人聞きの悪いこと言うんじゃない。ちゃんと席を用意して貰ってるよ」
海の国へと転移でやって来たユーゴとドロテアが、街中で話をしていた。
ドナート枢機卿は、ユーゴが会議に出席する旨の連絡をしてもらうために、リガの街で別れていた。
「エルフの森の伝手?」
「そうさ」
「その頼まれた人も可哀そうに」
「なに、久しぶりに顔を見れると喜んでるさね」
普段着のユーゴと、布を巻いた杖を突きながら歩くドロテアの向かっている先は、会議に出席するエルフ達が取っている宿屋で、そこがドロテアとエルフ達の待ち合わせ場所であった。
「あれだね」
「おお立派な宿だ。家族旅行はここも悪くない。…なんで家族旅行もまだしてないのに婆さんと2人旅なんだ?」
「最近忙しいものねえ。フェッフェッフェッフェッ」
「ええい。とにかく入るぞ」
「はいよ」
「ん?貸切るとは流石エルフ」
「防諜は何かと面倒なんだよ」
宿の前に、貸切られていることを知らせる張り紙があり驚くユーゴ。情報を探られたり、他の人物が入るのを嫌っての事であったが、見るからに格式高い宿であり、その値段も馬鹿にならなかった。
「すいませんお邪魔します」
「はい。なんでしょうか?」
「滞在しているエルフのビムってやつに、ドロテアが着いたと知らせてくれんかね」
「はい。ビム様に、ドロテア様が着いたと」
「ああ。お願いするよ」
丁度ロビーにいた従業員に話を通すドロテア。
ドロテアの耳が萎れているとはいえ、長いエルフの耳という事もあり、従業員はこんなに年老いたエルフもいたのかと、特に疑問を持たずにエルフ達が集まっている部屋に連絡を入れた。
「そのビムって人が知り合い?」
「ああ。長老の立場だから、会議には来ないはずなんだけど、私が来ると知って参加するとさ」
「可哀そうに…」
「私も来る必要はないって言ったんだけどね」
「後が怖かったんだろ。ああやっぱり可哀そうに…。気配がブレまくってるぞ。この人がビムだな」
「嬉しいんだろうさ」
従業員から連絡があったのだろうが、ユーゴが察知している気配の一つが、可哀そうに思う程に乱れていた。そしてその気配は真っ直ぐにこちらに向かっている。
「ど、ど、ドロテア様!?言って下されたらお迎えに行きましたのに!」
「久しぶりだねビム。ちょっと落ち着きな。単なる婆にそこまでせんでいい」
「いやそういう分けにも!?」
(エルフなのに外見が中年ってことは、このビムって人もかなり年取ってるぞ。その人がぺこぺこするとか、この婆さんいくつだよ)
「だからレディに歳を聞くなと」
「何も言ってねえよ!」
「は?ドロテア様?」
「なんでもないよ」
「はあ?あ、き、貴殿は?」
突如ドロテアが脈絡のない会話を始めた事に、混乱するビムであったが、そこでようやくユーゴの存在に気がついた。いかにビムが、この件で緊張しているか分かるというものである。
「頼りになる力持ちでね。名前はユーゴだ。ちょっと付き合って貰っててね」
「初めましてビム殿。ユーゴと申します」
「こ、これはご丁寧に。ビムと申します」
(頼りになる?ドロテア様の?)
頼りになると言われても、それがドロテアの基準の頼りになるでは、常人とは全く意味が違うと思ったビムは、紹介されたユーゴの事をまじまじと見てしまう。
外見はどう見ても、そこらの男と変わりなかったため、ビムは酷く混乱してしまう。
「少し話せる部屋は無いかい?この坊やには、説明せずに来て貰ったからね」
「は、はい!どうぞこちらへ!後でお茶も届けさせます!」
「悪いね」
「そういやその場の勢いで着いて来たな」
(どういった関係なのだ?)
ビムにとっては雲の上の人物と親しげな男に非常に興味があったが、怖い人物に何を言われるか分からなかったので、黙って部屋に案内する事にした。
◆
「それで妹さんがどうのこうの」
「ああ」
場所を移したユーゴは、ドロテアから説明を受けていた。知っていることなど、ドナートから聞いた、別大陸から大船団がやって来たことくらいなのだ。
「かなり昔に、人種の生存圏を広げるために、別の大陸を見つけようと船で出発した一団があったんだ」
「ははあ。つまり今来ている大船団はその時の子孫と」
(いつだよ)
「ああ。船に神々が関わっていてね。かなり長期の航海が出来たんだ」
「なるほど。その船に乗り込んだ一人が妹さんと」
「ああ。手紙が船からやって来てね。自分の子孫を頼むと書いてあったんだよ」
「ああ…」
それはつまり、その妹は亡くなったのだろうとユーゴは察した。
「その子孫が大人ならまあいい。問題は幼かった場合だね」
「だね」
ユーゴは、自分の子供達を思い出して同意する。
「それにまあ、妹なんだ。墓の一つは作ってやらないとね」
「婆さん…」
ひょっとしたら初めて見るかもしれない、ドロテアの悲しそうな顔に言葉に詰まるユーゴ。
「とまあそんなわけで、妹がどうなったとか、その大陸から来た連中がどうなるかを知らなきゃならないのさ」
「よし子孫の方はどうなるか分からんけど、向こうの大陸で何かするときは任せろ!」
「ふふ。ありがとよ。穴を増やさんようにね」
「最後は余計だよ婆!」
自分の子供達とその子孫を重ね合わせ、また、今まで世話になったドロテアの親戚を助けるためにユーゴは一肌脱ぐことを決断した。
その妹がまだ死んだと決まったわけでは無いから口に出さなかったが、遺体か遺品を取りにその大陸に行くことも視野に入れていた。
「という訳で、何かあったら頼りにしているよ」
「お任せあれ」
後は会議に出て、大船団と別の大陸がどうなるかを聞く必要があった。
「それでどうやって会議に参加するんだ?誰かとこっそり入れ替わる?」
「人聞きの悪いこと言うんじゃない。ちゃんと席を用意して貰ってるよ」
海の国へと転移でやって来たユーゴとドロテアが、街中で話をしていた。
ドナート枢機卿は、ユーゴが会議に出席する旨の連絡をしてもらうために、リガの街で別れていた。
「エルフの森の伝手?」
「そうさ」
「その頼まれた人も可哀そうに」
「なに、久しぶりに顔を見れると喜んでるさね」
普段着のユーゴと、布を巻いた杖を突きながら歩くドロテアの向かっている先は、会議に出席するエルフ達が取っている宿屋で、そこがドロテアとエルフ達の待ち合わせ場所であった。
「あれだね」
「おお立派な宿だ。家族旅行はここも悪くない。…なんで家族旅行もまだしてないのに婆さんと2人旅なんだ?」
「最近忙しいものねえ。フェッフェッフェッフェッ」
「ええい。とにかく入るぞ」
「はいよ」
「ん?貸切るとは流石エルフ」
「防諜は何かと面倒なんだよ」
宿の前に、貸切られていることを知らせる張り紙があり驚くユーゴ。情報を探られたり、他の人物が入るのを嫌っての事であったが、見るからに格式高い宿であり、その値段も馬鹿にならなかった。
「すいませんお邪魔します」
「はい。なんでしょうか?」
「滞在しているエルフのビムってやつに、ドロテアが着いたと知らせてくれんかね」
「はい。ビム様に、ドロテア様が着いたと」
「ああ。お願いするよ」
丁度ロビーにいた従業員に話を通すドロテア。
ドロテアの耳が萎れているとはいえ、長いエルフの耳という事もあり、従業員はこんなに年老いたエルフもいたのかと、特に疑問を持たずにエルフ達が集まっている部屋に連絡を入れた。
「そのビムって人が知り合い?」
「ああ。長老の立場だから、会議には来ないはずなんだけど、私が来ると知って参加するとさ」
「可哀そうに…」
「私も来る必要はないって言ったんだけどね」
「後が怖かったんだろ。ああやっぱり可哀そうに…。気配がブレまくってるぞ。この人がビムだな」
「嬉しいんだろうさ」
従業員から連絡があったのだろうが、ユーゴが察知している気配の一つが、可哀そうに思う程に乱れていた。そしてその気配は真っ直ぐにこちらに向かっている。
「ど、ど、ドロテア様!?言って下されたらお迎えに行きましたのに!」
「久しぶりだねビム。ちょっと落ち着きな。単なる婆にそこまでせんでいい」
「いやそういう分けにも!?」
(エルフなのに外見が中年ってことは、このビムって人もかなり年取ってるぞ。その人がぺこぺこするとか、この婆さんいくつだよ)
「だからレディに歳を聞くなと」
「何も言ってねえよ!」
「は?ドロテア様?」
「なんでもないよ」
「はあ?あ、き、貴殿は?」
突如ドロテアが脈絡のない会話を始めた事に、混乱するビムであったが、そこでようやくユーゴの存在に気がついた。いかにビムが、この件で緊張しているか分かるというものである。
「頼りになる力持ちでね。名前はユーゴだ。ちょっと付き合って貰っててね」
「初めましてビム殿。ユーゴと申します」
「こ、これはご丁寧に。ビムと申します」
(頼りになる?ドロテア様の?)
頼りになると言われても、それがドロテアの基準の頼りになるでは、常人とは全く意味が違うと思ったビムは、紹介されたユーゴの事をまじまじと見てしまう。
外見はどう見ても、そこらの男と変わりなかったため、ビムは酷く混乱してしまう。
「少し話せる部屋は無いかい?この坊やには、説明せずに来て貰ったからね」
「は、はい!どうぞこちらへ!後でお茶も届けさせます!」
「悪いね」
「そういやその場の勢いで着いて来たな」
(どういった関係なのだ?)
ビムにとっては雲の上の人物と親しげな男に非常に興味があったが、怖い人物に何を言われるか分からなかったので、黙って部屋に案内する事にした。
◆
「それで妹さんがどうのこうの」
「ああ」
場所を移したユーゴは、ドロテアから説明を受けていた。知っていることなど、ドナートから聞いた、別大陸から大船団がやって来たことくらいなのだ。
「かなり昔に、人種の生存圏を広げるために、別の大陸を見つけようと船で出発した一団があったんだ」
「ははあ。つまり今来ている大船団はその時の子孫と」
(いつだよ)
「ああ。船に神々が関わっていてね。かなり長期の航海が出来たんだ」
「なるほど。その船に乗り込んだ一人が妹さんと」
「ああ。手紙が船からやって来てね。自分の子孫を頼むと書いてあったんだよ」
「ああ…」
それはつまり、その妹は亡くなったのだろうとユーゴは察した。
「その子孫が大人ならまあいい。問題は幼かった場合だね」
「だね」
ユーゴは、自分の子供達を思い出して同意する。
「それにまあ、妹なんだ。墓の一つは作ってやらないとね」
「婆さん…」
ひょっとしたら初めて見るかもしれない、ドロテアの悲しそうな顔に言葉に詰まるユーゴ。
「とまあそんなわけで、妹がどうなったとか、その大陸から来た連中がどうなるかを知らなきゃならないのさ」
「よし子孫の方はどうなるか分からんけど、向こうの大陸で何かするときは任せろ!」
「ふふ。ありがとよ。穴を増やさんようにね」
「最後は余計だよ婆!」
自分の子供達とその子孫を重ね合わせ、また、今まで世話になったドロテアの親戚を助けるためにユーゴは一肌脱ぐことを決断した。
その妹がまだ死んだと決まったわけでは無いから口に出さなかったが、遺体か遺品を取りにその大陸に行くことも視野に入れていた。
「という訳で、何かあったら頼りにしているよ」
「お任せあれ」
後は会議に出て、大船団と別の大陸がどうなるかを聞く必要があった。
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