上 下
29 / 172
特級冒険者

特級来る2

しおりを挟む
リガの街 sideユーゴ

「いやあ、2人とも久しぶりだな。弟子と姪を連れて来るとは感慨深い」

悪ガキどもが人に教える立場とはなあ。歳を取るはずだ。

「ご健勝のようでなによがっ!?」

「けっぐっ!?」

「こら、家の中で隙を伺うな」

前言撤回。変わらん。

「改めまして、セシルさん、フィン君ようこそ我が家へ」

「お邪魔します!」

「お邪魔します!」

礼儀正しい。感動ものだ。反面教師かな。

「紹介するね。奥さんのジネットと、ルーだ。もう一人リリアーナがいるけど、今お仕事中でね」

「…よろしく」

「よろしくお願いします」

ジネットはまだ警戒している。まあ、今も俺に襲い掛かって来ようとしているからなあ。

「3人もいるのですか!ん?リリアーナ?」

「ああ?待てよ聖女の名前なんつったけ?」

やっぱ、知ってたか。

「そうそう、ちょっと前まで聖女をやっててね」

「なんとまあ。ついでに聖女を見ようかと思ってましたが、奥様でしたか」

「急に3人も嫁ができるとか頭うっ!?」

「うるさい」

相変わらずこりんやっちゃ。

「ああ、そういえば手土産に酒を買ってきてましてね。フィン」

「はい!」

おお!嬉しいねえ!

「ありがとうな。大事に飲ませてもらうよ」

「しかし、奥様が聖女となると、少々面倒なことになるかもしれませんね」

「はっはっ。だな」

「ん?どういう事?」

「聖女を一目見ようと、何人か特級がこちらへ来ようとしてましてね」

ええ…。

「なんでまた…。ごめん2人とも、帰って来たばかりだけど、リリアーナの所に行ってくるね」

「お気を付けてくださいね、あなた。」

「はい!いってらっしゃいませ!」

いくら特級でも、街中で騒ぎはそう起こさんとは思うが…。

「あっはっはっ!あなただがあっ!!?」

こいつら見てるとなあ…。

◆   ◆   ◆
sideフィン

師匠達もユーゴさんに付いて行く様だ。
単なる地方都市と思っていたけど、リガの街は結構にぎやかで意外だった。

「ぐっ!?」

「があっ!?」

「ええい、懲りん奴らめ」

時折、師匠達の頭がブレている。
話を聞いてると、どうやら師匠達がユーゴさんに仕掛けようとしているみたいだけど、その度に、頭がブレている何が起こっているかさっぱり分からない。ユーゴさんはデコピンだと言っているが、デコピンで?

あれ?あそこにいるのダレルとパオラじゃないか?聖女様を見に来たのかな?

「ちっ。ダレル」

「ん?くそエドガーかよ」

「ああ?糞ガキ共また俺に泣かされたいのか?」

この3人、会うたびに喧嘩になるんだよね。

「殺されたいのエドガー?」

「死ねよ」

「はっ、ボコられて泣いてたのもう忘れたのかよ」

ダメだ、これはまずい。

「【ひか】え!?」

「【ひか】なに!?」

「こら、街中で唱えるな」

なんだ!?高まった魔力が霧散した!?

「お前今何をした!?」

「内緒だ。さあ、行った行った。目立ってるぞ」

言い争いに、周りの人達が注目し始めてる。

「くそ、パオラ行こう」

「ちっ」

よかった。街中で騒動は起きなかった。

「なんだ?やぐうっ!?」

「煽るんじゃない」

「今のは何をしたのです?」

「ん?魔力を吹っ飛ばしたというか何というか…」

「そのようなことが…」

一体どうやったらそんなことが。

「いってえ…。おいこら!俺にそんなの使った事ねえだろ!」

「んん?そうだったか?」

「こっち見やがれ!おい!」

「はっはっは」

◆   ◆   ◆
sideユーゴ

いやあ、昔の悪ガキ共を思い出すような二人だったな。懐かしい。
さて、リリアーナを見つけたはいいが様子が変だぞ。

「でも聖女様、あたいみたいな戦う事しか能のない奴が今さら結婚なんて…。」

「いいえマイラさん。出会いは意外な所に転がっていたりします。私だって、神と教会が全ての人生でしたが、今では幸せです。さあ、涙を拭いてください」

「そうだぞ、マイラ。元気を出せ」

「聖女様…レイナルド…」

お悩み相談というか結婚相談というか…。あの二人多分特級だよな…。
流石は元聖女だ…。

「邪魔するぜ」

「ブラッド!いまあたいが聖女様と話してんだ!」

「今立て込んでいる」

おっとまた出たぞ。

「何か御用でしょうか?」

「いやあ。やっぱりいい女だ。どうだ?俺のものにならないかい?」

おっとそれはダメだ。

「すいません。私、人妻でして。お引き取り願います」

「なに!?そいつは悪いことを言った!忘れてくれ!邪魔したな!」

「分かって下さってありがとうございます」

誘い文句のわりに、聞き分けいいなおい!
相談してた特級だけじゃなくて、悪ガキ共もポカンとしてるぞ!
やっぱ、特級って変なの多いな。

◆   ◆   ◆
さて、リリアーナも家に帰ったが、どうも悪ガキ共が遊びたいらしい。
夕食に誘ったが断わられて、街から離れたところに連れていかれた。

「今度こそてめえをぶっ殺す!」

「今日こそ切らせて頂く」

「だから殺そうとするな」

はは。本当に変わらん。
よしゃ。かかってこいや。

◆   ◆   ◆
sideセシル

どうしよう。叔父さん達やる気満々だ。気迫で肌が痛い。
私達には、離れて見てろって言ったけどこのくらいなら大丈夫だよね?

「かかってこい!」

叔父さん達早い!

「【凍れ】!!」

「【斬る】!!」

え!?そんな初歩的な技で!?

■■■■■■!!!!

目が!?それに何この音!
技の結果なの!?
ユーゴさん死んじゃったんじゃ!?

「はっはっはっ!!ほんとに腕を上げたな悪ガキ共!」

生きてるの!?嘘!?

「なら死ねやあああ!!」

「いったいどれほど!?」

「そら行くぞ」

消えた!?
「っっがああ!!?」

「ぐっう!?」

叔父さん達吹き飛んだあああ!!??

「おじさん!!」

「師匠!!」

生きてる!

「いやあ、悪ガキ共め。マジで殺しにかかって来たな。はっはっ」

なんで無傷なの!?

上の服は無くなってけど、傷一つないなんて!
化け物だ!?

「よし。起きたら酒だな。二人とも付いてきてー」

ええ!?というか足を持ってるから頭があちこちに!?

「ユーゴさん!叔父さん達の頭が!」

「大丈夫大丈夫。こいつらくらいになったら、鉄よりよっぽど硬いから」

いやでも!?

「はっはっはっは」

あ、置いてかないでください!



人物事典
"氷と冬の魔人"エドガー:北の国の名門に生まれた次男。幼いころより才能を発揮し、一族始まって以来の天才児ともてはやされた。事実、人間種の中では最高峰の戦闘力を持っており、特に氷の魔法に関しては、魔法の国の最高導師ですら及ばない。
性格は傍若無人を絵に描いたような人物であるが、兄から預かった姪の成長を願っているなどの一面もある。
家の事は、兄がいるから心配していないが、それでも近況を報告する手紙は欠かしていない。
特級冒険者の中でも最強の存在であり、国家存亡の危機が起こった際には、真っ先に名前が挙がると目される人物である。
ー空気が凍る 水は流れる事を許されない 魔人が来たー

"剣の見えない剣神"カーク:騎士の国出身で、騎士の家に生まれるも、騎士道精神よりも剣の事を追い求めて、国を出奔。普段は常識人であるが、未知のものに対しては、切れるか切れないかで判断するなど、特級の例に漏れず変人でもある。
剣を振ると、大多数の特級ですら見ることができず、また、いかなる物も切断してしまうため、エドガーと並び特級最強との呼び声が高い。
ーこの前カークに切られた魔物、マジで気が付いてなかったからなー
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

処理中です...