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悍ましき眷属達
ブラックタール帝国で学んだところだ! アメリカ編
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(おかしい)
それが飛行機から空港に降り立ち帰国した、アメリカ西海岸異能学園に所属する教官達の最初の感想だった。
(何か……危機を感じる)
極東における異能者の一大拠点、異能学園での訓練は、大成功を収めたと帰路の最中彼等は満足していた。
最初は勿論、非常に危険な存在と同レベルの仮想敵の実在は疑問視されていたが、実在しなくても非常に危険擬きと言われる仮想敵はいたのだ。生徒達に違う環境での経験を積ませる意味合いもあり、異能学園に交流を申し込んだのだがこれが大当たり。
正真正銘の非常に危険に分類されるモンスターを生徒に体験させることが出来た上、そのモンスターは呪いと言う特殊な能力まで備えていたのだ。しかも、現地の生徒の中に、呪いに関するスペシャリストまでいた事もあり、まさに異能学園の学園長の言うところの、金では買えられない経験を積むことが出来た。これを成功と言わずに何というのか。
(あのスペシャリストの生徒に言った通り、非常に危険を目的に世界中から異能者がやって来るだろう。それを考えると混む前に行けてよかった。一番最初に行ったという実績も、後々少しは役立つはずだ)
そう今後の事を色々考えながら、教官達が空港に降り立ったところで話は最初に巻き戻る。
(俺だけじゃない。全員そう感じ取っている! やはり何かが起こっている!)
「全員警戒態勢を取れ!」
「サーイエッサー!」
勘としか表現できないものに突き動かされて周りを確認した教官達は、それぞれ目線が合った事もあり、何かが起こっていると確信した。そしてそれは生徒達も同じであったらしく、まだ空港の建物にも入らない内からその何かに備える。
(空港では飛び上がれないか! ええいもどかしい!)
その何かを探りたいのだが、空港や港湾などの重要施設では、能力者が力を使用する事は厳しく制限されている。だが何事にも例外がある。
「!?」
「間違いないモンスターだ! 全員俺の名前で許可する! 行け!」
妖気、あるいは邪気、そうとしか形容しようがない気配を感じ取った彼等は、警戒から一気に臨戦体制に移行する。そう、例外とは妖異の出現である。
パパパパパパパパパ
「きゃああああああ!」
(小銃の発砲音! 間違いない!)
彼等はその超人としての脚力で空港施設を飛び越えている最中、空港の表から連続して複数の発砲音と悲鳴を聞き取り、最早怪異、妖異、の出現は間違いなと確信する。
調査により妖異達の出現は、人口密集地や、人の出入りが多い空港や港に多いことが分かっており、現代では重武装した一般の警察や、異能者達が警備している事が多い。勿論場所が場所なため彼等も普段はその行動を制限されているが、逆に妖異が出現すれば殆ど何をしてもよかった。それこそ人が多い空港で、いきなり殺傷力の高い小銃を発砲してもである。そうしないと却って被害が拡大するのだ。
「醜い化け物め!」
屋上に到達し、空港の正面を見下ろした彼等の誰かが発した言葉こそ、その存在を的確に表していた。
遥か遠くから見ればムカデかと思うだろう。だがしかし、何処に全長6メートル近いムカデがいるというのか。しかもその無数にある足は、人間の手足の様なものであり、体の節に至っては、それこそ人間の顔が無数に連なっていた。
(大きな危険相当。場所が場所だ。初見の恐ろしさが分かっていてもどうしようもない!)
事態は一刻を争う。幸いこの世界に現れた直後であったため、まだ被害らしい被害は出ていなかった。しかし、大勢の民間人がいる事に変わりなく、どんな能力を持っているか分からない相手に、アメリカ校は挑むこととなってしまった。
「数で抑え込む! 囲い込め!」
「サーイエッサー!」
『神よ我を祝福したまえ!』
流石は異能学園に赴くために選抜されたアメリカ校の生徒達である。いきなりの実戦にも関わらず、即座に自らを神の祝福で包み込む。
『怨怨怨怨怨怨怨怨おおおおおおおおおおおおんんんんん!』
しかしそのどうしても必要な瞬間に、ムカデの顔全てが口を開き一斉に合唱をし始める。そして、この世の物とは思えぬ低くおどろおどろしい声を、逃げ遅れていた者達全てが聞いてしまった。精神を蝕み、気を狂わせる滴る毒の音を。
余談であるが、現在世界が確認している呪詛型の大鬼はほんの数件で、その特殊性と希少性ゆえに、いずれも大きな犠牲を伴って討伐している。
だがである。
『『『『『福音よ!』』』』』
空港一帯に響き渡る祝福されし鐘の音が、おぞましき声を封殺する。
生憎ここにいる者達は皆全て、呪いの化身と言っても過言ではない、呪詛型の非鬼に転がされ鍛えられた者達ばかりなのだ。こんなムカデなどムシケラに過ぎなかった。
『1に浄化、2に浄化、3,4が無くて5に浄化』
「とにかく浄化だ! 四方から浄化で押し潰せ!」
「サーイエッサー!」
アメリカ校の全員が記憶からの囁きに従い、聖なる力で作られた壁をムカデの四方に展開する。
『『『光あれ!』』』
『ギャアアアアアアアアアアアア!?』
とある主席はその場にいなかったため知らなかったが、実習中、蜘蛛にすらある程度有効だった、四方を囲んだうえでその中心に十字の力場を展開し、そこから発せられる光で対象を滅却するこの攻撃を、高々ムカデ程度が耐えられる筈がない。
ムカデは体中から黄色い血を撒き散らしながら、どんどんとその体を蒸発させられる。そしてついには消えて……。
『弱まったとしてもまず擬態だと思って下さい。このレベルの呪詛となるととにかく狡猾で嫌らしいです。死んだふりやだまし討ちは当然の様に行ってきます』
「まだだ! 念のため壁で完全に押し潰せ!」
「サーイエッサー!」
再び思い出される声。これは呪詛に対しての物であったが、それを扱う妖異も同じに決まっている。
『ギュッ!?』
完全に消え去った、様に見せかけて、体をそれこそ普通のムカデサイズまで縮めていた妖異は、完全に合わさり合った光の壁に押しつぶされて、今度こそ消滅したのであった。
「よし! 救助作業に移れ!」
「サーイエッサー!」
「ごほごほっ」
「あ、頭がああああ!?」
しかし彼等の仕事は終わっていない。福音で相殺したとはいえ、至近距離にいた者はおぞましき声の影響を受けてしまっていたのだ。
「目と爪に異常なし!『祝福よ!』」
『この者に穏やかな心を与え給え!』
だがそれもすぐに収まるだろう。何と言っても彼等は、凄まじき、恐ろしき、黒き呪蜘蛛の教えを受けたのだから。
そして邪神の
◆
蜘蛛君、俺宛になってるけど、アメリカ校の皆さんが蜘蛛君にもお礼を言っておいてだって。聞いた話、空港で呪詛型の大鬼をぶっ殺したみたい。教え子が活躍して嬉しいでしょ。え? まだまだヒヨッコ? またまたあ、本当は満更でもないくせに。あ、教官殿が記者会見で、今回の活躍はウチの学園と、とある生徒、そして非常に危険の訓練符のお陰だって言ってたから、これで世界中から蜘蛛君目当てに人が来ること間違いなしだよ、やったね蜘蛛君! え? だから、世界中から蜘蛛君目当てに人が集まるよ。え? だから
それが飛行機から空港に降り立ち帰国した、アメリカ西海岸異能学園に所属する教官達の最初の感想だった。
(何か……危機を感じる)
極東における異能者の一大拠点、異能学園での訓練は、大成功を収めたと帰路の最中彼等は満足していた。
最初は勿論、非常に危険な存在と同レベルの仮想敵の実在は疑問視されていたが、実在しなくても非常に危険擬きと言われる仮想敵はいたのだ。生徒達に違う環境での経験を積ませる意味合いもあり、異能学園に交流を申し込んだのだがこれが大当たり。
正真正銘の非常に危険に分類されるモンスターを生徒に体験させることが出来た上、そのモンスターは呪いと言う特殊な能力まで備えていたのだ。しかも、現地の生徒の中に、呪いに関するスペシャリストまでいた事もあり、まさに異能学園の学園長の言うところの、金では買えられない経験を積むことが出来た。これを成功と言わずに何というのか。
(あのスペシャリストの生徒に言った通り、非常に危険を目的に世界中から異能者がやって来るだろう。それを考えると混む前に行けてよかった。一番最初に行ったという実績も、後々少しは役立つはずだ)
そう今後の事を色々考えながら、教官達が空港に降り立ったところで話は最初に巻き戻る。
(俺だけじゃない。全員そう感じ取っている! やはり何かが起こっている!)
「全員警戒態勢を取れ!」
「サーイエッサー!」
勘としか表現できないものに突き動かされて周りを確認した教官達は、それぞれ目線が合った事もあり、何かが起こっていると確信した。そしてそれは生徒達も同じであったらしく、まだ空港の建物にも入らない内からその何かに備える。
(空港では飛び上がれないか! ええいもどかしい!)
その何かを探りたいのだが、空港や港湾などの重要施設では、能力者が力を使用する事は厳しく制限されている。だが何事にも例外がある。
「!?」
「間違いないモンスターだ! 全員俺の名前で許可する! 行け!」
妖気、あるいは邪気、そうとしか形容しようがない気配を感じ取った彼等は、警戒から一気に臨戦体制に移行する。そう、例外とは妖異の出現である。
パパパパパパパパパ
「きゃああああああ!」
(小銃の発砲音! 間違いない!)
彼等はその超人としての脚力で空港施設を飛び越えている最中、空港の表から連続して複数の発砲音と悲鳴を聞き取り、最早怪異、妖異、の出現は間違いなと確信する。
調査により妖異達の出現は、人口密集地や、人の出入りが多い空港や港に多いことが分かっており、現代では重武装した一般の警察や、異能者達が警備している事が多い。勿論場所が場所なため彼等も普段はその行動を制限されているが、逆に妖異が出現すれば殆ど何をしてもよかった。それこそ人が多い空港で、いきなり殺傷力の高い小銃を発砲してもである。そうしないと却って被害が拡大するのだ。
「醜い化け物め!」
屋上に到達し、空港の正面を見下ろした彼等の誰かが発した言葉こそ、その存在を的確に表していた。
遥か遠くから見ればムカデかと思うだろう。だがしかし、何処に全長6メートル近いムカデがいるというのか。しかもその無数にある足は、人間の手足の様なものであり、体の節に至っては、それこそ人間の顔が無数に連なっていた。
(大きな危険相当。場所が場所だ。初見の恐ろしさが分かっていてもどうしようもない!)
事態は一刻を争う。幸いこの世界に現れた直後であったため、まだ被害らしい被害は出ていなかった。しかし、大勢の民間人がいる事に変わりなく、どんな能力を持っているか分からない相手に、アメリカ校は挑むこととなってしまった。
「数で抑え込む! 囲い込め!」
「サーイエッサー!」
『神よ我を祝福したまえ!』
流石は異能学園に赴くために選抜されたアメリカ校の生徒達である。いきなりの実戦にも関わらず、即座に自らを神の祝福で包み込む。
『怨怨怨怨怨怨怨怨おおおおおおおおおおおおんんんんん!』
しかしそのどうしても必要な瞬間に、ムカデの顔全てが口を開き一斉に合唱をし始める。そして、この世の物とは思えぬ低くおどろおどろしい声を、逃げ遅れていた者達全てが聞いてしまった。精神を蝕み、気を狂わせる滴る毒の音を。
余談であるが、現在世界が確認している呪詛型の大鬼はほんの数件で、その特殊性と希少性ゆえに、いずれも大きな犠牲を伴って討伐している。
だがである。
『『『『『福音よ!』』』』』
空港一帯に響き渡る祝福されし鐘の音が、おぞましき声を封殺する。
生憎ここにいる者達は皆全て、呪いの化身と言っても過言ではない、呪詛型の非鬼に転がされ鍛えられた者達ばかりなのだ。こんなムカデなどムシケラに過ぎなかった。
『1に浄化、2に浄化、3,4が無くて5に浄化』
「とにかく浄化だ! 四方から浄化で押し潰せ!」
「サーイエッサー!」
アメリカ校の全員が記憶からの囁きに従い、聖なる力で作られた壁をムカデの四方に展開する。
『『『光あれ!』』』
『ギャアアアアアアアアアアアア!?』
とある主席はその場にいなかったため知らなかったが、実習中、蜘蛛にすらある程度有効だった、四方を囲んだうえでその中心に十字の力場を展開し、そこから発せられる光で対象を滅却するこの攻撃を、高々ムカデ程度が耐えられる筈がない。
ムカデは体中から黄色い血を撒き散らしながら、どんどんとその体を蒸発させられる。そしてついには消えて……。
『弱まったとしてもまず擬態だと思って下さい。このレベルの呪詛となるととにかく狡猾で嫌らしいです。死んだふりやだまし討ちは当然の様に行ってきます』
「まだだ! 念のため壁で完全に押し潰せ!」
「サーイエッサー!」
再び思い出される声。これは呪詛に対しての物であったが、それを扱う妖異も同じに決まっている。
『ギュッ!?』
完全に消え去った、様に見せかけて、体をそれこそ普通のムカデサイズまで縮めていた妖異は、完全に合わさり合った光の壁に押しつぶされて、今度こそ消滅したのであった。
「よし! 救助作業に移れ!」
「サーイエッサー!」
「ごほごほっ」
「あ、頭がああああ!?」
しかし彼等の仕事は終わっていない。福音で相殺したとはいえ、至近距離にいた者はおぞましき声の影響を受けてしまっていたのだ。
「目と爪に異常なし!『祝福よ!』」
『この者に穏やかな心を与え給え!』
だがそれもすぐに収まるだろう。何と言っても彼等は、凄まじき、恐ろしき、黒き呪蜘蛛の教えを受けたのだから。
そして邪神の
◆
蜘蛛君、俺宛になってるけど、アメリカ校の皆さんが蜘蛛君にもお礼を言っておいてだって。聞いた話、空港で呪詛型の大鬼をぶっ殺したみたい。教え子が活躍して嬉しいでしょ。え? まだまだヒヨッコ? またまたあ、本当は満更でもないくせに。あ、教官殿が記者会見で、今回の活躍はウチの学園と、とある生徒、そして非常に危険の訓練符のお陰だって言ってたから、これで世界中から蜘蛛君目当てに人が来ること間違いなしだよ、やったね蜘蛛君! え? だから、世界中から蜘蛛君目当てに人が集まるよ。え? だから
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