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第一章 出立

第50話 交わされる運命の線

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 それは、眠る者の遠い出来事きおく――。


 灰濁の空の下、青年と少女は運命の遭逢を成す。

 少女は怯えており、身体は傷だらけで打撲の痕が痛々しい。
 既に彼は知っていた。この時に至るまでに心あらぬ振る舞いを受けていたのを。
 また、彼女自身の行いが招いた自業の結果であることも既知していた。

 だが傷だらけの姿もここまで。
 青年が近付き手を当てると、一瞬で治っていく。傷など最初から無かったかのように消えていく。

 たちまち傷は無くなり、純粋な珠肌だけが残る。心なしか髪も花のような瑞々しさを得ていた。

 全身を蝕んでいた傷が無くなっている事に少女は気付く。しかしその不可解な現象の正体を看破することはない。

 傷が無い。痕が無い。痛みも無い。
 どれだけ目を凝らしても、一片の瑕疵を見出すことが出来なかった。

「貴方は……誰?」

 治って良かった、と優しく見守る青年を仰ぎ、少女は尋ねる。


「俺? 俺は――」



 それは偶然か必然か。
 二人の出会いはやがて悲劇へ、そして希望へ繋がる物語の始まり。
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