異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第4章<最終戦線>編

160話「再会、友よ」

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    ゴゴゴゴゴゴゴ……!!

    ガイ・アステラが力を行使した次の瞬間、地震が起こったかのように大地が轟々と鳴り響き、ガイ・アステラの背後の空間が少しずつ歪んでいく。
    小さかった歪みはだんだんと大きくなっていき、やがて巨大な黒い渦のような状態へと変化した。

ズズズズズズ……!!

(あれが……世界を繋ぐ扉……!!)

「しまった……!!」

    鬼人の本能の意識の裏側でその瞬間を見ていた良太郎は目を疑った。
    世界を繋ぐ扉がついに完成してしまった……いや、ガイ・アステラにそれを許してしまったのだから。

(こうなったら、なんとしてもガイ・アステラを止めなきゃ……!!)

「あぁ。だがこれ程の異変ならガオレオやセリエ、他の仲間達が直ぐに駆けつけてくるだろう……それまで……良太郎?」

    鬼人の本能はその「異変」を即座に感じ取り、顔が青ざめた。
    まさかと思った鬼人の本能は必死に良太郎に呼びかけを試みる。

「良太郎!?良太郎!!良太郎……!!」

「どうしたの!?リョータロー君に一体何が……!!」
 
    鬼人の本能が焦っているのを見て何か良くない事が起こってるのかと聞くマリーネ。
    鬼人の本能は予想外の出来事に苦しい表情を浮かべながら

「良太郎の意識が……消えた……!!」

    そう、答えた……。 



     「……」

    俺がその場所で最初に見たのは、真っ白な天井だった。

    __俺は生きてるのか?ここは病院のベッドの上のようだけど……。
    俺は口元に付いていた呼吸器を外し、被り布団を退けて自分の身体を確認する。
    姿はいつもと変わらない状態で、病院服を来ている……まるで状況が理解できない……さっきまで俺はマリーネ達とガイ・アステラと戦ってていたのに……まさかあれ全部夢オチって事じゃない、よね?
    異世界アニメを見たからそれに起因してああいう夢を見た、とか__

「良ちゃん……?」

「え……?」

    俺はその声に耳を疑った。
    まさかと思いゆっくりそちらを向くと、そこには病室の扉を開けて林檎と一真、花菜の3人が立っていた。
    俺のよく見知った3つの顔だ……3人ともひどく驚いたような表情をしているけど__

バッ!

「良ちゃん!!」

    林檎が咄嗟に持っていた鞄を一真に預けて、俺の元に一直線に駆け寄ってくる。
    その頬には大粒の涙が伝っていた。
    その直後、遅れて一真と花菜も急いでこちらに駆け寄ってきた。

「良太郎!!」

「良太郎君!!」

「皆……。」  

    俺が久しぶりに見る皆の顔をまじまじと見ていると、林檎が俺の手をゆっくりと握って

「良かった……良かった……!!」

    声を上ずらせ、肩を震わせながらそう零した。
    俺が異世界に行った事が夢かどうかは置いといて、俺はどうやら3人の事を長らく待たせて……心配させてしまってたようだ。
     
「みんな……ごめん、心配かけて。」  

「全くだぜ!この1ヶ月はホントお前の事が気が気でならなかったんだからな!」  

「私もよ。目覚めて本当に良かった……。」

    一真と花菜も涙を堪えるような素振りをしつつ俺が目覚めた事に安心したようだ。
    こうして皆の元に帰ってくる事ができたんだから、それだけで良かったよね?
    異世界の事は夢だったのか?じゃあ夢の事なんて忘れて現実に戻るべきなのか……

「良ちゃん、何か考え事?」

「え、いや、俺……寝てる間に長い夢を見てたんだ。異世界に行く夢なんだけど。」

「ぶはは!そういうアニメ流行ってるよな!影響受けちゃったのか?」

「私達がずっと心配してたのに夢の中で冒険?」

「ご、ごめん……。」

「冗談冗談。面白い話なら是非聞かせて?」

    花菜は少し興味ありげに俺から異世界の話を聞こうとする。
   
「えっとー、仲間達と一緒に悪いやつと戦って、悪いやつは異世界とこの世界を繋いで異世界のモンスターや魔術師をこの世界に呼び寄せて戦争を起こさせようとしてたんだ。俺は仲間達と敵の親玉を倒す為に戦ってて、ここからどうなるんだ?って所で夢が覚めて……。」

「へ~。楽しそうな夢だね!」

「うん。仲間の人達は魔術や剣術を使って戦って……って、それより俺が目覚めた事を病院の人とか親とかに報告しないと!」

    俺は今するべき事をはっと思い出し、異世界の話は一旦止めた。

「そ、そうだな!えーっと、このボタンを押せばいいのか?」

「それは患者の病状が悪化した時に使うボタンよ。私達で呼びに行くの。」

「そうか。じゃあ俺と花菜で呼んでくるからよ!林檎は良太郎の元にいてやってくれ。」

「うん。」

    そうして一真と花菜は病室を出ていった。
    俺と林檎は病室に2人きりになった訳だけど……俺は林檎達に言えない隠し事をしてたんだ……目が覚めたら3人に言わなきゃって考えてた事が。
    俺が事故にあった日……トラックに轢かれた俺はあんな事を思ってしまって__

「良ちゃん?」

「え?」

「また考え事?大丈夫!良ちゃんはまだ事故にあってから1ヶ月しか経ってないし、学校の勉強も出席日数も全然大丈夫だよ!それに私達の事を覚えてるって事は記憶喪失とかでもないんでしょ?それで何よりじゃん!」

    あの時からずっと変わらない、いつもの優しい笑顔で俺を励ましてくれる林檎。

「そ、そうだね。でも……俺が考えてたのはそういう事じゃなくて……。」

「じゃなくて?」

「俺、林檎に……いや、林檎と一真と花菜、3人に謝りた__」

ティロロロロリン!ティロロロロリン!

    次の瞬間、病室のお客さん用の椅子の上に置かれた林檎の鞄の中から、ひどく不安感を掻き立てられるようなアラーム音が鳴り響く。
    とっさに鞄の中からスマホを取り出し画面を開く林檎。
    それを見た林檎の表情は一瞬で青ざめてしまった。

「ど、どうしたの?」 

「な、なにこれ……見て、良ちゃん……。」

    林檎からスマホの画面を見せられた俺は、その生中継を見て空いた口が塞がらなかった。



『信じられません!!今私の目の前で起きてる現象は現実なのでしょうか!?突如K県月与市に謎の……なんでしょうこれは!?ブラックホール?いや、ワームホール?のような物が出現しました!!そしてその中から1人の人物が……白い髪と赤い瞳……まるで都市伝説の存在とされる鬼人族のようです!!』

「え……?」


    映像はビルの上から撮影されているもので、そこには突如出現したワームホールとそこから出てきた1人の男が映されていた。
    俺はあの男を……ガイ・アステラをはっきりと覚えている……やっぱりあれは……俺が体験してきた事は夢じゃなかったんだ……!!

「ねぇ……これさ、良ちゃんがさっき言ってた異世界?とかいうのと関係ある事……じゃない、よね?」

「……俺はこの男を見た事がある。俺達はこの男と戦ってたんだ!」

「……!」

    俺がスマホに移された映像に唖然としてると、彼の……ガイ・アステラの瞳がカメラを捉え、口を動かす。
    カメラとガイ・アステラの距離が遠すぎて声は聞こえなかったようで、画面で見ただけではただ口を動かしてるようにしか見えなかったけど、その口の動きは明らかに……

「良太郎クン」

    俺の名前だった。
    そして、映像の中のガイ・アステラはゆっくりと歩を進めていく。
    すると彼の歩いた後の地面に黒い影が広がっていき、その影の中からゴーレムやモンスターが這い出てきた。

『グォォォォ!!』

『ギィエェェェェ!!』

『きゃあぁぁぁぁぁ!!』

『うわぁぁぁぁぁぁ!!』

『な、なんでしょうかあれは!?見間違いでなければ私の目にはまるでロボットやモンスターのように見えます!!え、これ、パレードとかそういうものじゃないんですか?え、違う!?と、とりあえず怪しいので近づかないように__』

『三嶋アナ!!後ろ!!』

『え__』

    ブツン

    アナウンサーがモンスターに襲われそうになった所で途切れる映像。
    俺は飛び上がるかの勢いでベッドから降り、窓から外の様子を確認する。

「あれは……世界を繋ぐ扉……!!」

    病室の南向きの窓から見て東の方向に世界を繋ぐ扉はあった。
    それを見て異世界で俺が体験し、見聞きしてきた事を再確認する。

「ガイ・アステラの目的は「世界統合計画」……この世界と異世界を繋げ大混乱を起こさせる事だ……!!それによって人類の進化を促そうと……そんな事させるか!!」

    俺は即座に病室を出ようとした。
    多分マリーネ達もすぐこの世界にやって来てガイ・アステラと戦いを始めるはず……俺も合流しないと!!

バッ!

「え……?」

    だけど、そんな俺の手をぎゅっと掴んで止めようとしたのは林檎だった。
    彼女は目元に涙を浮かべながら俺にうったえてくる。

「行かないで……!!」

「……」

     俺は選択しなくてはいけないみたいだ……この最悪の状況で自分がどうするべきかを……。
    

 

    
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