異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第4章<最終戦線>編

157話「闇が、燃える」

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    聖杖ラファエルの力によってガイ・アステラを拘束したマリーネ。
    この気を逃すまいと、良太郎もマリーネもガイ・アステラに攻撃を繰り出そうとするが……

「あーあ、やられちゃった。凍結による拘束は流石に黒影魔術じゃどうしようもないね。無理やり解こうとすれば最悪足を失う事になる。」

「それが怖いなら大人しく私達に倒される事ね!」

「もう終わりだ!ガイ・アステラ!」

「……ふふふ、僕達に勝てるとでも?」  

「何……!?」
    
    良太郎とマリーネに追い詰められても尚余裕を崩さないガイ・アステラ。
    良太郎とマリーネは未だ彼の真の力を計り知れずにいる……故にそれを使われる前に倒さなくてはいけないというのが2人の共通認識だ。

「マリーネ!ボイジャーズ・ストライクを撃つ!巻き込まれないようにガイ・アステラから離れて!」

「ええ!」

    良太郎の言葉を聞いたマリーネはその場から離れ、良太郎は身体に装着された4つのウイングユニットを全て着脱する。
    
「あの技かぁ。全てを破壊する必殺の一撃……実に良太郎クンらしい……いや、鬼人族らしい技だ!他者の命を奪う事でしか生きながらえる術を知らない蛮族らしい、ねぇ……!」

「黙りなさい!私達は2つの世界を守る為に貴方を倒すのよ!」

「マリーネ……」

「リョータロー君!私はこことは別の世界があるなんて事、リョータロー君と出会って初めて知ったけど……貴方の世界なら……貴方の大切な人がいる世界なら私は守りたい!こんな奴なんかに滅茶苦茶にさせたくない!だから撃って!こいつを倒す一撃を!!」

「……あぁ!!」

「美しい友情、いや愛かな?」

「あ、愛!?」

「え……!?」

    ガイ・アステラの言葉に良太郎とマリーネは思わず動揺してしまった。

「ははは、君達面白いねぇ。けど……残念だけど僕達の計画が成された時、良太郎クンはマリーネから遠ざかってしまうんだよぉ?」

「え……?」

「それって……どういう事かしら……?」

   ガイ・アステラは少し俯いた後、良太郎を指さしてこう答える。

「……?」

「最強の人類を作り出す人類育成ゲーム……それが成された暁には……良太郎クン、君は用済みになるからね。」

「……え?」

「どういう……事?」
     
    ガイ・アステラの言葉に疑問を抱いた2人は再び彼に質問し、彼はこう答える。

「言っただろう?良太郎クンは僕のお気に入りって。そしてもっと言えば君は世界統合計画のマスターピースなのさ。世界を繋ぐ扉を開くのも、争いを起こすトリガーになり、それを終わらせるのも、その果てにある人類の進化を促すのも……全て君という存在によってなされるのさぁ!」

「!!」

「厳密に言えば……君の記憶干渉の異能がね。」

「どういう……事だ……!」

「ま、今の説明じゃあまり理解できないよねぇ……じゃあ、今から実例を見せてあげようか?」

「何……?」

    ガイ・アステラはマリーネに右手の掌を向け、掌に意識を集中させる。

「な、何……!?」

「マリーネ!!気をつけて!!何か分からないけど、嫌な予感がする……!!」

    何をする気なのかと身構えるマリーネとマリーネを心配する良太郎。

「僕は世界統合計画の為にこの魔術を作った。強力な魔術だけどその分時間もかかってしまってね……ずっと狂死郎クンの中でじっとしてなきゃいけなかった訳さ。」

「……!?」

    シュアァァァァァァァ……

    次の瞬間、マリーネの身体から七色のオーラが沸き立ち、それがガイ・アステラの掌に吸収されていったのだ。 
    
「な、何よこれ……!」

「そ、その魔術ってまさか……!!」

「良太郎クンは漫画とかゲームが好きなんだろう?そういうのじゃテンプレだよねぇ?こういう……「能力を奪う能力」ってのはさ!!」

     彼の説明した通り、ガイ・アステラは「魔術を奪う魔術」を自ら作り出し、行使したのだった。
    いや……魔術というよりは、鬼人族の異能も含めて、自らが生み出したあらゆる「力」を自らの手中に納める力……力の根源であるガイ・アステラだからこそ生み出し、行使できた技である。 

「そんな……フレイムバレット!」

……

「ウソ……出ない!?」

「君からは無属性魔術以外の全属性魔術を奪い取ったのさ。これが神の力って訳。それに逆らおうとした自分の無謀さ理解できたぁ?」

     彼の言う通り、ガイ・アステラに力を奪われた事でマリーネは無属性魔術以外の全属性魔術が使えなくなっていたのだ。

「この力で……完全に成長しきった君の「記憶干渉の異能」を奪う。それが世界統合計画を進める為の第1歩となるのさ。だから君には「成長」してもらわなきゃ困るって訳。」

「そんな……!!」

「君が強くなる度に力も強くなる……良太郎クン、君はよく頑張ってきたよ……僕に力を奪われるとも知らずにねぇ!!」

「ガイ・アステラ……!!」

    良太郎はガイ・アステラへの怒りを滲ませた声で彼の名を呼ぶ。

「あ~あ、また絶望しちゃったねぇ!もう何度でも絶望させてあげたいよ!本当に君というやつは……くくくっ!」

「この……この野郎ぉぉぉ!!」

    そして、怒りに身をまかせてウイングユニットを操作し、ボイジャーズ・ストライク発射の準備をする。

「リョータロー君……!」

「ハハハハハ……!」

「ボイジャーズ・ストライク!!」

ドガァァァァンッ!!

    怒号のような良太郎の掛け声と共に4つのウイングユニットの中心からエネルギー波が放たれ、それがガイ・アステラに直撃した。
    その衝撃で土埃が立ち込めたが、それを払ってガイ・アステラが姿を現す。
    彼は影の膜で身を守った事で無事に済んだのだった。

「っハハハハハハハハ!!最高!最高!超最高!君が段々と強くなっていくのをこの肌で実感できるの最高!!君はどれだけ強くなっても、それは僕達の為だって事分からされて最悪だろ?でも僕達は最高最高!!狂死郎クンも僕の中で喜んでるよ!!さぁもっと絶望してくれ!!君が底へ底へと堕ちていくにつれて僕は絶頂へと上がっていく……堪らないねぇ!!」

「黙れ!!人を弄んで楽しいか!!」

「そうよ……貴方のその思考はもはや普通の域を外れている……貴方は根っからの人でなしよ!!私達は貴方を許さない……貴方の思い通りにさせていい事なんて何一つないんだから!!」

    滅茶苦茶な事を言うガイ・アステラに良太郎もマリーネもなんとか反論しようとするが、人が持つ正しい心から発せられるその声は、それを持たないガイ・アステラには届くはずがなく……

「はぁ……せっかくだし追い込みかけていくか。」

「何……!?」

ス……

    右手の一指し指を天に掲げるガイ・アステラ。
    彼は一体何をするつもりなのかと良太郎とマリーネが警戒していたその時、その指先に紫色の禍々しいエネルギーが形成されていく。

     ズズズズズズ……

「それは……?」

「マリーネくん……かつて君の故郷を滅ぼした滅びの炎だよ。」

「なん……ですって!?」

「街1つを破壊する滅びの炎……黒影魔術・真撃「死原罪オリジネイト・シン」……この最大火力を君という1つの標的に向けて放つ。」

    ガイ・アステラがそう説明しているうちに禍々しい炎は巨大な塊と化していた。
    
「まともに喰らえば君達の身体は丸焦げだろうね。さぁどうする!?喰らえば死ぬ!生きれば君の力は覚醒し僕が奪う!!君はもう運命を受け入れるしかなくなったんだよねぇ!!残念でーした!!ハハハハハ!!」

    勝利を確信したかのように高笑いするガイ・アステラ。
    良太郎とマリーネは互いに近づき、何かこの状況を突破する策が無いかと画策する。

「リョータロー君……。」

「……大丈夫。ウイングユニットによる防御でなんとか凌いで__」

「あれは街を1つ滅ぼす程の威力なのよ?そんなのじゃダメよ……だけど、リョータロー君の力?が覚醒?するのもいけないのよね……」

「うん……状況は絶望的だ……。」

「……でも、私は諦めたくない。」

「だよね。俺もそうだよ。ヒーローは世界を守る為に……逃げちゃダメな時は絶対に逃げないんだ。俺もそうありたい。だから__」

シュンッ……

「え……?」

「え、何が……っ」

    次の瞬間、良太郎の変身が解除され良太郎は元の姿に戻ったのだ。
    さらにその事態に困惑する暇もなく良太郎は意識を失い、よろけて倒れそうになる。

「リョータロー君!!大丈夫!?」

    それを支えて良太郎の安否を確認しようとするマリーネ。

「……マリーネ……?」

「リョータロー君!?」

    その直後良太郎は目覚めた。
    いや、目覚めたかに思われたが……「彼」は良太郎ではなく……

「俺は良太郎ではない。」

「え……?」

「俺は良太郎の内に眠りし鬼人の本能。良太郎の危機に際して人格を切り替えさせてもらった。」

「は……?」

    彼の言う通り、良太郎の意識は鬼人の本能と切り替わっていたのだ。
   
「あまりにも絶体絶命といった様子だったので、俺の出番かと思い人格を切り替えたのだ。」

「あ……貴方に何ができるの!?」
 
「……あの攻撃を防ぎ切る事、だ。」

    不安なマリーネに対して自信を持ってそう宣言する鬼人の本能。
    鬼人の本能は持っているのだ……この状況を切り抜ける「切札」を……。












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