異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第4章<最終戦線>編

155話「神が、嗤う」

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     ガイ・アステラはついに、良太郎とマリーネに自分達の真の目的「世界統合計画」の全容を話すのだった……。

「僕達の目的、世界統合計画は主に3つの段階を踏み行われる。1つ目は……「異世界と現世を扉によって繋ぐ」!」

「な……」

「んですって……!?」
 
「言葉通りさ。この異世界と良太郎クンの世界を扉によって繋げるんだよ。僕と、闇のティアマト、そしてシャナの中に潜む僕の片割れ2人……合わせて3人が揃えばガイ・アステラは真の力を取り戻す。それによって2つの世界を繋ぐ扉を作るのさ!」

「嘘でしょ……」

「なんでそんな……!!」

    いきなり予想だにしなかった事を言い出したガイ・アステラに驚きを隠せない良太郎とマリーネ。

「なんでそんな事を、って?それは……異世界のモンスターや魔術使いを扉からあちらの世界に送り込む為さ。」

「そんな事をしたら俺の世界は__」

「未曾有の大混乱って所かな?異世界の既得権益者達が現世の資源や技術を知れば喉から手が出るほど欲しくなるだろうさ。」

「そうなったら戦争が起きるじゃない!それも……魔術を使える人間とそうじゃない人間同士で……!」

    ガイ・アステラの行為によって最悪の状況が起こるはずだと想像したマリーネは顔を歪ませる。

「そう……僕はその戦争を起こしたいんだ。その果てに人は進化し……新人類となる!」

「ふざけるな!そんな事の為に沢山の人が死ぬ事になるんだぞ!そんな事させるか!!」
 
「そうよ!!人類の進化……?世迷言も大概にしなさい!!一体貴方にどんな権利があってそんなくだらない事を……!!」

    良太郎とマリーネに問い詰められたガイ・アステラは少し俯いた後表情を一変させてこう答える。

「良太郎クゥン……僕は君の世界について勉強してねぇ、今の僕がやろうとしている事を表現するに相応しい言葉を勉強したんだ……その名はズバリ……

最強の人類をキミの手で作り出せ!!最強人類育成ゲェェェェェムッッッ!!イェイイェーイ!!」

「__」

「「は?」」

    良太郎もマリーネも、ただひたすら唖然とした。
    ガイ・アステラの思想の影響を受けていた狂死郎や闇のティアマトとこれまで対峙してきたが……そのガイ・アステラが最も狂っていたのだ。
    
「僕は狂死郎クンの「世界支配計画」をお名目とし異世界に恐怖と憎悪の渦を巻き起こした。その異世界が現世と繋がり、2つの人類が出会う!!そうすれば後は簡単さ!!ただ一言……「影の一味はこの世界から来た侵略者だ」って噂を流布すればいいだけだもんね!!」

「……ッ!!」

「そこまで考えた上で……!!」

「そうして戦争が起こる……人類最後にして最大の戦争「終末戦争(ラグナロク)」がねぇ!!」
 
    今にも舞い上がりそうな程高揚しているガイ・アステラは両手をバッと広げて声高らかにそう宣言した。

「そうして争いの中で人は新たな次元に達する!それこそが新人類!新人類が暮らす新時代は互いが互いを理解しあい肯定しあう……嘘偽りのない真実のみの世界さ!その時初めて僕は……醜い時代を繰り返してきた愚かな人類をずぅーっと、愛情込めて育成してきた僕の努力は報われ、満足できるだろうさ。ま、育成って言ってもちょっとした願いを叶える為の花を使っただけだけど。全ては僕が願う結末にたどり着く為の2000年の壮大なシナリオだった……という訳なんだよぉ!!」

「……そんな事、俺達が……」

「私達が……」

「「許すと思っているのか!!!!」」

    意を決した良太郎とマリーネはその言葉を踏ん切りにガイ・アステラを止める為の戦いを始めようとする。

「血鬼変動!!」

    変身ポーズをとり、眩い光に身を包みゴーレムの姿に変身する良太郎と、聖杖ラファエルを構えるマリーネ。
    
「ウイングユニット!!」

    さらに良太郎が声高らかに叫び右手を天に掲げると、遙か彼方から4つのウイングユニットが飛来し2つが彼の背部に装着され、もう2つが両腕に装着される。

「パワーブーストレイズ!ハイアクセルレイズ!」

    さらにマリーネも筋力強化魔術「パワーブースト」と速力強化魔術「ハイアクセル」の上位魔術にして、3分の時間制限と引き換えに強力な能力強化を施す「パワーブーストレイズ」「ハイアクセルレイズ」で自らにバフをかけた。

「さぁ……」

「行くぞ、ガイ・アステラ!!」

「くくく……来たまえ!!盤上の駒よ!!」

「うぉぉぉっ!!」

ギュンッ!ギュンッ!

    右手を前に突き出し、鋭い弾丸「スパイクレールガン」を連射しながらガイ・アステラに近づく良太郎。

「ふっ!」

    ガキキキン!

    ガイ・アステラは影の膜を張りそれによって良太郎の牽制射撃から自分を守った。
    だがその間に良太郎はガイ・アステラに彼に攻撃を、繰り出すかに思われたが……
 
「マリーネ!」  

「セブンウインドバレット!」

    攻撃を繰り出してきたのはマリーネだった。
    風の弾丸「ウインドバレット」を7つ同時に放つ「セブンウインドバレット」を繰り出し、中距離からガイ・アステラを攻撃しようとするマリーネ。

「はっ!」

    良太郎はそれに合わせてウイングユニットによる飛行能力で空中に舞い上がり、空中でアクロバティックに身を捻ってガイ・アステラの反対側に着地した。

「はぁっ!!」

ギュインッ!!

    さらに両手に装備したウイングユニットの先端から光の刃を展開する。
    良太郎とマリーネはガイ・アステラを挟み撃ちにするつもりなのだ。

「無駄無駄ぁ……!!」

    だが、自分に攻撃が迫っているその瞬間も余裕を崩さないガイ・アステラ。
    次の瞬間……彼が地面に手を触れたと思った刹那、彼の影が大きく広がりそこから鋭い影の刃が無数に伸び良太郎とマリーネを襲った。

「なんの……!」

「必勝機動!!エモーショナル・ハイマニューバ!!」

    この攻撃を、2人は身体強化によって強化された速力でかろやかに回避し敵の激しい攻撃に隙ができないかと伺う。

「くっ……!」
 
    だが敵の攻撃は止まることを知らないかのように連続し、回避だけでは間に合わず防御も使ってなんとか身を守る事に徹する。
    攻撃の中心にいるガイ・アステラは余裕綽々といった態度で次々に影の刃を伸ばしていく。

「(こうなったら……)こっちだ!!ここまでは届くか!?」

「へぇ……!」

    ビュンッ!ビュンッ!

    ある作戦を思いついた良太郎は飛行能力で空高く飛翔しガイ・アステラを挑発する。
    ガイ・アステラの注意を引いている間にマリーネにガイ・アステラへの攻撃を任せる……それが良太郎の次の作戦だった。
    そんな単純な作戦はすぐに悟られてしまうだろう……というのは良太郎自身も分かっており、もっと高度な陽動にする為に両手のウイングユニットも切り離して宙を飛行させ、それも使っての陽動を試みる。

「いいよ……黒影魔術……冥壊死手(めいかいししゅ)!!」

    ガイ・アステラがそう唱えると、複数の鋭い影の刃が絡み合い4つの巨大な腕の形を成し、それが良太郎を襲う。

 ゴゥゥゥッ!!

「くっ……!!」

    影の腕は良太郎の想像よりも俊敏に動き彼を捕まえようとする。
    ウイングユニットから放つスパイクレールガンによる牽制も試みるが、影の腕から逃げながら2つのウイングユニットを操作するというのは良太郎にかなりの負担を要した。

「ぐっ……頭が……いや、俺が隙を作らないと……!!」

    それでもやらなければならないと無理をして自分の身体と2つのウイングユニットを同時に操りガイ・アステラに陽動を仕掛ける良太郎。

「ははっ、ちょこまかと……。」

「リョータロー君……あれ?私への影の攻撃の精度が少し落ちてるような……ガイ・アステラの意識がリョータロー君に向いてるから……!?」

    良太郎の狙い通り、ガイ・アステラは彼への攻撃に意識を集中させた結果マリーネへの攻撃が粗雑になっていた。
    先程まで的確にマリーネを狙い伸びていた影の刃がほとんど当たらなくなったのだ。

    マリーネは良太郎の意思を即座に汲み取り、この期を逃すまいと杖を構え標的を見据える。

(やるなら、この一撃で……!!)

    防御魔術メタルシールドで稀に自分の方に伸びてくる影の刃を防ぎつつ、杖の先端をガイ・アステラに向け、敵の心臓を的確に射抜けるように心を落ち着かせる。 
    ただひたすらその時が来るのを待ち続け……そして……

(頼む……マリーネ……!)

(ここだ!)

「フレイムランス!!」

    聖杖ラファエルの先端から炎の槍、フレイムランスが勢いよく放たれる。
    果たしてマリーネの攻撃は、ガイ・アステラを貫くに至るのか……。







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