異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第4章<最終戦線>編

149話「ぶつかる、魔術」

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    トリケロス・スピアの刃を伸ばした事でセリエがやろうとしていた事、それは……

ザシュッ!

「ギギ……ギギィ……!!」

    それは、メガ・トリロバイトの腕を切断する事だった。
    1本の腕を切断された事で苦痛の声をあげるメガ・トリロバイト。
    「厄介な腕を全て切り落として攻略を容易にする」……これがセリエの作戦だった。

「まだまだ……!!」

    セリエは再びメガ・トリロバイトに突進を仕掛け、メガ・トリロバイトはこれ以上やらせまいと先程のようにレーザーを乱射する。

「っ……!!」

    だがセリエは限界を超えたスピードによってレーザーを全て回避し敵の目前まで迫り、刃にさらに魔力を注ぎ、今の自分が持てる最高威力の攻撃魔術を繰り出す。
    セリエの魔力によってトリケロス・スピアの刀身は赤く輝き……

「スカーレット・ディメンション!!」

ズバババババァッ!!

    セリエが繰り出した斬撃によって、残り5本の腕は見事に斬り裂かれた。
    その切れ味は虚空すら斬り裂くとも言われる、真の強者の領域に足を踏み入れた者のみが扱える攻撃魔術「スカーレット・ディメンション」……その攻撃によってメガ・トリロバイトの武器を容易く切断してみせた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

    だがセリエもその攻撃によってかなりの魔力を消費してしまい、彼女は地上に着地し息を切らした。
    そんな彼女に容赦なくレーザー光線を撃つべく魔力を溜めるメガ・トリロバイト。

キュイィィィィィ……!!

    このままではやられてしまうと感じたセリエは、最後の力を振り絞り抵抗する事を覚悟する。

「う……うぁぁぁ……!!」

    疲弊した身体をなんとか動かし、大地を強く踏みしめ、トリケロス・スピアを握りしめる。
    そしてメガ・トリロバイトを睨みつけ、武器を握りしめた右手に力を込め……

「あぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

    セリエの叫びに呼応するようにトリケロス・スピアは輝きを放つ。
    彼女はこの一撃に全てを賭けるつもりだ。
    魔力を大幅に消費したセリエが今できる最大の抵抗、それは……

「あぁぁぁ!!」

ブォンッ!!

    トリケロス・スピアはセリエの手から勢いよく放たれ、メガ・トリロバイト目掛けて勢いよく飛んでいく。
    これがセリエの隠し球にして最後の攻撃……ドラゴンスケール状態になった事で強化された身体から放たれる「槍投げ」である。
    
オォォォォォォ……!!

    しかしただの槍投げではなく、その威力は並の人間と並の武器では出せるものではない……例え原始的な攻撃方法でも、ティアマトの子という他の人間は持ちえないステータスを持つ特級冒険者セリエがやればそれは圧倒的な攻撃力を誇る必殺技になる。

    セリエが放ったトリケロス・スピアはついにメガ・トリロバイトに到達し、そして……

ザシュッ!!

    トリケロス・スピアは鋭い音を立てメガ・トリロバイトの頭部に突き刺さった。
    その後、敵は3秒程の沈黙の後、絶命し地上に落下していくのだった。

ドゴォンッ!

    メガ・トリロバイトの身体が激しい音を立てて地上に落下し、土埃をあげる。
    それを見て、ようやく倒せたのだと確信したセリエはその場にゆっくりと座り込む。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……もう動けない、っけど……障害は排除した……」

「ガァッ!ガァッ!ガァッ!」

    その時、上空から無数の鳥型モンスターが飛来した。
    見た目はカラスのようだが、体躯は通常のカラスの3倍程の大きさで知性もカラスより高く、名は「厄災の象徴」という意味を冠する「レイダークロウ」と呼ばれている。
   レイダークロウは冒険者達が倒したモンスターの死体を食べる為に、この戦いが始まった時から常に上空を徘徊していたのだ。

「……」

    レイダークロウが恐れられる理由……それは、「雑食」という生態もカラスと同じであり、食べられる状態であれば人間すら食べてしまうという事だ。
    今のセリエは満身創痍の状態……レイダークロウは彼女がざっと数えただけで30羽はいる……少しづつ嬲っていけばセリエだろうと殺せないはずは無い……と、レイダークロウも理解していた。

「ガァッ!ガァッ!」

「ガァッ!ガァッ!」

    不気味な鳴き声でセリエを威嚇するレイダークロウの群れ。
    セリエにとっては絶体絶命の状況だが、かと言って諦める訳にもいかなかった。

「魔力は無いに等しい……けど……だとしても……足掻いてやる……!」

    覚悟を決めたセリエは最後の気迫を振り絞ってレイダークロウを睨みつける。
    そんな彼女に向かっていくレイダークロウの群れ。
    セリエはどうなってしまうのか……その時。

ゴォォォォォォォ!!

「ギャー!ギャー!」

「!?……これは……」

    突如、戦場に暴風が吹き荒れレイダークロウ達を遙か彼方に吹き飛ばしたのだ。
    その暴風によって助けられたセリエは、その風の正体を即座に理解した。

「……このレベルの風を起こせるのは……ガオレオね……後で感謝しておかないとね……フォース・メタルシールド!」

    ガオレオに感謝の心を抱きつつ、自分も吹き飛ばないように鋼の盾メタルシールドを4つ同時に展開する「フォース・メタルシールド」で自分の四方を覆い、それによって暴風から身を守ろうとするセリエ。

    なんとかメタルシールドで身を守れるはずだと思ってたセリエだったが、暴風に加えて雷もが辺り1面に落ちだした。

ドガァンッ!ドゴォッ!

「これは……センジュの雷……?あの2人……どんな戦いを繰り広げてるのかしら……。」

    しばらく風と雷からみを守ろうと決めたセリエはその場でじっとしておこうと考え、その間に治癒魔術ヒールで傷の回復を、魔力回復魔術マジックヒールで魔力の回復を行った。

「他の仲間達は……大丈夫かしら……。」

    セリエの気持ちは他の仲間への心配の気持ちと大丈夫だろうという気持ちが半分だった。

    今まで共に戦ってきた仲間への信頼はありはするものの、敵はまだ未知数の要素を潜ませているかもしれない……もしもそれが仲間達を倒してしまえるものだとしたら……そんな不安の気持ちと信頼の気持ちの繰り返しで埒が明かないので、今はただ仲間達の無事を祈るしかできなかった。

    セリエの気持ちは、きっとこの長い戦いが終わったら晴れるのだろう。
    それまでは、気持ちが晴れる結末になるまでひた走るしかないのだ……。



    時を同じくして、冒険者最大戦力であるイブは、シャナとの戦いを繰り広げていた。
    戦いが始まってから今現在に至るまでイブとシャナによる魔術の撃ち合いは続き、お互いに一撃も入れられない硬直状態が続いていた。

「穿貫戟。」

「あはっ!」

     イブはどんな防御をも貫通する攻撃魔術「穿貫戟」をシャナに繰り出すが、それをシャナの自分の影から生み出した影のバリアで無効化される。
   
「はぁっ!」

「反転鏡。」

    今度はシャナが影の刃をイブ目掛けて飛ばすが、イブのどんな攻撃も跳ね返す防御魔術「反転鏡」によって跳ね返され、影の刃はシャナの影に還る。

    この攻防戦がずっと続いており、戦いは一向に進展しなかったのだ。
    
「ねぇ、イブちゃんったらなんで手抜きしてるの?」  
 
「……」

「あ、分かった!私を程よく弱らせて私達の「真の目的」を聞く為ね?」

「そうだとしたら?」

「うんうん、私は普通に聞かれたぐらいじゃ口は割らないから良い判断だと思うわ!私が弱ってくれればの話だけどね!ま、今までのカワイイ攻撃じゃどうって事ないけどね~!」

    イブの考えを見透かしてるかのような態度でイブを挑発するシャナ。
    最も、それが挑発だと言う事はイブ自身もわかっているのだが。

「それとも、魔力の消耗を狙ってたのかしら?」

「どうだかな。ただ適当に魔術を繰り出してただけかもしれないぞ?」

「そんな事言っちゃって~!分かってやってるくせにっ!それも作戦としては上等だけどね!どのみち私を弱らせて情報を聞き出すって事に変わりはないわよね~!」

「……」

「じゃあ……私が死んでも情報を吐く気がないとしたら?」

ゾァァァァァッ!!

    シャナは自分の背後から、禍々しい音を立てながら巨大な影を出現させる。
    ウネウネと不気味に動くその巨大な影は、シャナの魔力量の現れであった。

「これが私の魔力よ。貴方はこれを全部消耗させられるかしら!私はそうなる前に貴方を殺すけどね!でも貴方、マリーネちゃん達と違って私を前にしてもぶっきらぼうな態度のままだし、カワイイ顔しなさそうじゃない!」

「悪趣味だな……お前の「中身」の趣味か?」

「うふふ……始めましょうか!ここからが影の真骨頂よ!」

    シャナは不気味な笑みを浮かべてイブを睨みつける。
    この戦い、勝つのはどちらか……。



    
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