異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第4章<最終戦線>編

148話「閃く、刃」

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    突然現れたメガ・トリロバイトとセリエの戦い……本来の生態では有り得ない特性を幾つも持っている未知のティアマトモンスターに対して、セリエは覚悟を決めて戦いに挑む……。

「フライトアップ!」

    セリエは自らに、空中を飛行できるようになる強化魔術「フライトアップ」を施し、宙にふわりと浮かび上がる。
    そしてメガ・トリロバイトと同じ高さに飛び上がり、攻撃を開始する。

「フレイムバレット・チェイサー!」

    魔杖の先端に炎の弾丸を形成し、それを放つフレイムバレット……そのフレイムバレットに特殊な効果を付与して放つフレイムバレット・チェイサーを発動したセリエ。
    炎の弾丸はメガ・トリロバイト目掛けて勢いよく飛んでいき、その甲殻と激突する。

バゴゴゴゴ!

 「やっぱり硬いか……でも……!」

     メガ・トリロバイトの甲殻の硬さは通常個体と同じ事を理解したセリエは、魔杖を振りかざしフレイムバレットを「操作」し、フレイムバレットをゴムボールのように跳躍させ何度もメガ・トリロバイトの身体にぶつける。
    これがフレイムバレット・チェイサーの特殊な効果だ。

ドガッ!ドガッ!ドガァッ!

    フレイムバレットがメガ・トリロバイトの全身にぶつかっては跳躍し、またぶつかるという事を繰り返し、敵の体力を徐々に奪っていく。
    このまま倒されてくれれば、そう願っていたセリエだったが……

「よし、このまま__」

    ビィィィィィ―――!!

    次の瞬間、セリエは転移魔術「ワープゲート」によってその場から少しずれた所に移動した。
    敵は先程のようにレーザー光線を放ちセリエへの反撃を仕掛けてきたのだ。

「危なかった……でもあれだけの威力の攻撃……そう連射はできないは……ずっ……!」
 
    敵の攻撃を分析し、そう考えていたセリエだったが、その瞬間セリエは腕に痛みを感じて顔を歪ませる。
    確かにセリエは先程のレーザー光線を回避したはずだった……しかし、腕に僅かに攻撃が掠っていたのだ。

「な、なんで……何かがおかしい……ちゃんと避けたはずなのに……!!」

    セリエの頭は「先程から敵の攻撃をギリギリ掠ってしまう事」でいっぱいになりそうになるも、そんな事していたら戦いに集中できなくなると気持ちを切り替えようとする。

キュイィィィィィィ……

「また来るの……!?」

    敵がエネルギーをチャージしだしたのを見てそう呟くセリエは、その攻撃をしっかりと観察し回避のタイミングを見極めようとする。

ピカンッ!

「ここっ!」

    敵がレーザー光線を撃つタイミングを掴んだセリエは、右に回避しようとフライトアップによって回避を試みる、しかし……

ガクンッ

(あれ……足に重りでも……付いてるの__)

ビィィィィィッ!!

「あぁっ……!!」

    またもやレーザー光線がセリエの太腿を掠めた。
    先程から尽く起こるこの現象にまたもや苦しめられるセリエ。

「一体、なんなの……!!」

ウォン……ウォン……

「そうだ、さっきから鳴ってるこの音……まさか……この音が原因……!?」

    その音は敵が発しているのかもしれないと考えたセリエはじっと目をこらしてメガ・トリロバイトの身体を観察し、その音の正体を見極めようとする。
    しばらく観察し、ついにその正体を掴んだ。

ウォン……ウォン……ウォン……

「あれだ……あの触角……あそこから……音が出てる……あの音が原因なんだ……!!」

    そう、メガ・トリロバイトは触角から特殊な電波を放ち、それによってセリエの動きを鈍くしていたのだ。

「なら……ハイアクセル!パワーブースト!」

    それならば鈍い動きを魔術でカバーしようと考えたセリエは、スピード強化魔術「ハイアクセル」、そして筋力強化魔術「パワーブースト」で自身を強化した。

キュイィィィィィ……!

    その直後、敵は再びエネルギーをチャージしレーザー光線を放とうとする。

「また来るのね……!」

    先程のようにはいくものかといつでもそれを回避する準備をしていたセリエだったが、その直後彼女は敵の行動に驚かされる事になる。

シュシュシュン!

「は……?」

    なんと大きな1つのエネルギーの塊は8つの小さなエネルギーの塊に分裂し、メガ・トリロバイトの周りに陣を敷くように展開され、そして……

ギュン!ギュン!ギュギュギュン!

「ッ……!!」

    メガ・トリロバイトは8つのエネルギーの塊からレーサー光線を連射しだしたのだ。
    またもや普通のメガ・トリロバイトは持ち得ないはずの特性に驚かされるも、なんとか身体を動かして宙を飛行し攻撃を回避するセリエ。

「ぐぅ……それでも!」

    勢いよく飛翔し、さながら戦闘機のような速度でメガ・トリロバイトの弾幕を回避していくセリエ。
    激しいGに耐えつつなんとか敵の攻撃の隙を見計らい、反撃できないものかと考えていたセリエだった。

(このままじゃジリ貧……反撃のチャンスを__)

「ッ!!」
 
ギュンッ!

    次の瞬間、セリエの目の前を敵のレーザー光線が突っ切った。
    これに思わずブレーキをかけ、高速飛行がほんの一瞬止まってしまうセリエ。
    だが、それがいけなかった……

シュン!

「っ……!」

    敵はその一瞬で8つの小さなエネルギーの塊を1つに再集結させ、高威力のレーザー光線を放つ。

ビィィィィィィィィィ――――!!

「っあぁ……!!」

    敵の攻撃はセリエの頭部目掛けて放たれ、命の危機を察知したセリエはそれを間一髪の所で回避する。
    しかし、レーザーの高熱によって顔の右半分に火傷を負ってしまった……。

「つぅっ……危なかっ、た……!!」

    顔の半分を火傷してしまったセリエだが、それでも負ける訳にはいかないという意志と根性で空中に留まり続ける。
    セリエだけが激しく消耗したにも関わらず、敵は僅かなダメージしか負っていない……。

「大竜レベルのモンスターを……闇のティアマトがちょっと弄るだけで……神獣レベルの化け物になる訳ね……そんなの、勝てる訳……。」

パン!

    セリエは火傷を負った右側の頬に強くビンタをする。
    弱音を吐こうとした自分自身への叱責だ。

「リョータローや……イブさんが……それと戦おうって言ってるのに……その手下なんかに弱音になってどうするの……!特級冒険者としての誇りを……無くす訳には……!!」

    セリエは覚悟を決め、腕に巻いてた魔人布を顔に巻き、さらに自身の真の姿「ドラゴンスケール」を発動する事を決意した。

「私は……ティアマトの子にして誇り高き冒険者、セリエ・ミカヅキだ……!!」

ゴゥッ!!

    彼女の身体は赤紫色の炎に包まれ、そこから純白の鱗に覆われた異質な姿を晒す。
    
「闇のティアマト……貴方がこの力を……私にくれたというのなら……私はこの力で……神(おまえ)を殺す……!!」

    セリエはトリケロス・スピアを構え、メガ・トリロバイト目掛けて空を蹴って勢いよく突撃する。
    そして、両者はすれ違う刹那に互いに攻撃を繰り出した。

キィンッ!!

    トリケロス・スピアとメガ・トリロバイトの鋭い爪がぶつかり激しい金属音が鳴り響いた。
    さらにセリエは空中で方向転換をして再びメガ・トリロバイトに攻撃を仕掛けようとする。

キィンッ!キィンッ!ガキンッ!
    
     並のモンスターなら倒せたはずの先程の一撃に対応できた敵に対して、どう攻めれば倒す事ができるかと考えながら一撃離脱を繰り返すセリエ。
    考えた結果、1番手っ取り早い方法で攻めてみる事を決めた。
 
ギュンッ!!

    再びメガ・トリロバイト目掛けて突進するセリエ。
    それを見た敵は今まで通り鋭い爪によって相手の攻撃を弾き返そうとするが……。

(タイミング……ここ……っ!)

グンッ!

    セリエとメガ・トリロバイトの武器がぶつかりそうになった瞬間、なんと、セリエのトリケロス・スピアの刃が伸びたのだ。
    トリケロス・スピアの刃はセリエの魔力によって生成されたもの……使用者の魔力量と技量によっては、さらに魔力を注いで刃を長くする事も可能なのである。

    セリエの一撃は、メガ・トリロバイトに届くのか……。

    
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