異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第4章<最終戦線>編

147話「未知なる、海獣」

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     影の一味分断作戦が始まったばかりの頃……セリエはタウラス、ドラコ、ベルらと共にバルベストの塔周辺で、闇のティアマトによって生み出された影の一味の尖兵とも言えるモンスター、ティアマトモンスターの相手をしていた。

    しかし、王都防衛戦に強力なモンスターが現れた事でその応援をしに行ったタウラス、ドラコ、ベルの3人。
    こういう事態が起こってもいいようにタウラスとセリエで強力なティアマトモンスターは早めに掃討しておき、セリエ1人で残ったモンスターを倒していく、という事にしていたのだが……予想外の事態はこちらでも起こっていたのだった……。

「ギャウ……!!」

「グルル……!!」

「え……何……?」

    突如、セリエが戦っていたモンスターが彼女の前から逃げだしたのだ……まるで何かに怯え、それから逃げるかのように。
    彼女が一体何事かと思っていた直後、彼女は「それ」の気配を察知した。

「そんな……あれは……!」

    そこにいたのは、宙を浮遊する巨大モンスター、その名も……

「ギィ……ギィ……ギィ……」
 
「メガ・トリロバイト……!?なんで……地上に……それも、空を泳いで……!」

    彼女の言う通り、そこに現れたのは全長10メートル程の巨大な水棲モンスター「メガ・トリロバイト」だった。
    セリエがそのモンスターの登場に驚いている理由はただ1つ……「水棲モンスターが地上にいる事」だ。
    それも、羽も無いのに空を泳ぐように宙を舞っている。

    モンスターと言えど生物である事に変わりはなく、普通の生物のように陸棲モンスター、水棲モンスター、空を飛ぶモンスターという分類はされている。
    陸棲モンスターは水中では生きられないし、水棲モンスターは陸上では生きられないもの、というのが常識として存在している。

    その常識を破れるとしたら、それはモンスターの身体を好きなように弄り、常識では有り得ないモンスターを生み出してしまうようなティアマトしかいないだろう。
    故にティアマトは神として崇められる存在なのだ……もっとも、今人類はその神と戦おうとしているのだが。

キュイィィィィィィ……

「!!」

    メガ・トリロバイトは腹部に小さな丸いエネルギーを複数個チャージしはじめ、セリエは危険を感じて防御魔術「メタルシールド」を展開する。
    彼女の予想通り、メガ・トリロバイトは次の瞬間強力な攻撃を繰り出してきた。

ビィィィィィィィ――――

ドゴォォォォォン!!

    耳を劈くような鋭い音と共に、メガ・トリロバイトの腹部から複数のレーザー光線が放たれる。
    それが地上にいるセリエもモンスターも関係なく無差別に襲い、モンスターは次々にやられていきセリエはメタルシールドでなんとか身を守ろうとする。

「うぅ……!」

    セリエは怯む事なくメタルシールドを張り続けて攻撃を耐えしのぎ、激しい攻撃は30秒ほど続いた後に停止した。

「なんて事なの……水中最強クラスのなモンスターが……地上に出てきたなんて……これも……闇のティアマトの仕業……!?」

「ギィギィ……」

    そう呟くセリエをメガ・トリロバイトはロックオンし、今度は背中から自身の鱗を投擲武器のように発射し、それによってセリエを攻撃しようとする。

ビュンビュンビュンビュン……!!

「サンダークライシス!!」

    それに対してセリエは広範囲高威力の雷属性攻撃魔術「サンダークライシス」で対応しようとする。

バキィッ!バキバキッ!

    無数の電撃が敵の飛鱗とぶつかり相殺される。
    サンダークライシスによってなんとか敵の攻撃を対処できたかに思えたセリエだったが……。

ビュン!!ビュビュビュン!!

「な……何、これは……!」

    セリエが撃ち逃した飛鱗がまるで1つ1つに意思がある軍隊のようにピッタリとした動きをしだしたのだ。
    計10個程のその飛鱗はセリエの周りを飛び回り、セリエの警戒心を煽るように不気味な動きをする。

「フレイム__」

ガッ!

「った……!」

    セリエが攻撃しようとすると、1つの飛鱗が彼女にぶつかりそれを阻止しようとする。
    
ビュンビュン!

「このっ……トリケロス・スピア!」

    さらに3個程の飛鱗がセリエに向かっていき、彼女はそれに対応する為に新たな武器である聖杖キュリオスを近接攻撃形態「トリケロス・スピア」に変化させ、鋭い刃によって飛鱗に対応する。

キィン!キンキン!ガキンッ!

    セリエは巧みな槍裁きでなんとか飛鱗に対応する。
    聖杖キュリオスは「使用者の身体能力を向上させる」という特性を持っており、魔術の撃ち合いにおいては敵の攻撃を回避する事に効果を発揮し、近接攻撃形態で戦う際は素の状態では非力なセリエでも相手を圧倒する事ができる。

「ふっ!はぁっ!」

    バキィッ!バキィッ!

    セリエは力を込めてトリケロス・スピアを振りかざし、2つの飛鱗を一刀両断する事に成功した。
    さらに自分に向かって勢いよく飛んでくる飛鱗に対しては……

「はぁぁぁ!!」

    グルグルグルグル!!

    スピアを両手で勢いよく回転させ、それによって飛鱗を弾き返す。
    
「ギィ……ギィ……」

「私は……負けないわ……!」

    セリエには、ギガ・トリロバイトがどんな攻撃を繰り出してきても負けるものかという信念があった。
    影の一味の幹部と戦ってる他の仲間の為に、モンスターをそちら側に向かわせない為に相手をするのがセリエの役目だからだ。

「ギギギギ……」

「また何かする気……?」

    突然今までとは違う謎の鳴き声をあげるメガ・トリロバイトに警戒心を強めるセリエ。
    その直後、敵がしてきた行動はそんな彼女を十分驚かせる程の事だった。

    メキメキ……メキメキ……

「な……!」

「ギュエェェェェェェ!!」

    なんとギガ・トリロバイトは、不気味な音を立てながら殻を破り片側三本、計6本の腕を展開、さらに頭部からもたかく反り立つ2本の角を生やし、不気味な咆哮をあげた。
    
「闇のティアマトってのは……随分と悪趣味なのね……!!」

    本来有り得ないはずの異形な姿になったギガ・トリロバイトを見て思わずそう零すセリエ。
    そんな彼女にギガ・トリロバイトは勢いよく突進を繰り出す。

「っ!!」  

    それをセリエは回避するが、セリエを掴もうとした敵の腕が彼女の右脚に僅かにかすっており、鋭い爪によって皮膚が切り裂かれてしまった。
    
「毒とかは無さそうだけど__」

    セリエはギガ・トリロバイトの特性を解析しようとするが、そんな隙は与えまいと敵はUターンして再び突進を繰り出してくる。

(水棲モンスターなんてあまり戦わないけど、本や人から聞いた話で色んなモンスターの事を一通り知っている私には分かる……このギガ・トリロバイトは……普通の個体より遥かに強いはず……闇のティアマトによってとんでもない改造が施されてるのね……6本の腕を広げての突進……あの巨体な上に腕によって攻撃範囲はかなり広がっている……とりあえず聖杖キュリオスの身体能力向上を利用して回避するしかない……!)

「はっ!!」

    グォンッ!! 

    セリエは再びギガ・トリロバイトの突進を回避しようとするが、またもや僅かに敵の手が彼女の脚を掠め出血してしまう。
    
「何かがおかしい……グルさん身体能力向上って言ってたわよね……この程度なの……?いや、あの人がそんな雑な仕事する訳……」

ウォン……ウォン……ウォン……

    その時、セリエの耳に謎の音が聞こえた。
    低い音で、それが何度も何度も繰り返し鳴っている……一体なんの音なのか、セリエはその正体を考えようとするが、そんな事お構い無しにギガ・トリロバイトは突進を繰り出してくる。

「くっ……メタルシールド!」

    セリエは回避ではなく防御の方が良いのかもしれないと考え、鋼鉄の盾を出現させ、それによって敵の突進を受け止め自身の左方向に受け流す。

「ヒール!」

    敵は突進の後に旋回し、再び突進するという事を見越して治癒魔術ヒールで2箇所の傷の治癒をするセリエ。
    だが敵は即座に旋回しこちらに狙いを定めてきたので、ヒールはすぐに終わらせ、完全に傷を癒す事はできなかった。

「中々に……厄介ね……!」

    特級冒険者セリエを苦しめる程の強敵……彼女はこの強敵に対してどう戦うのか……!



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