142 / 170
第4章<最終戦線>編
141話「何ゆえ、彼女は彼女なのか」
しおりを挟む「一応確認させてもらうけど、君は最寄田静香さん……で間違いないよね?」
「は、はい……」
わたしは頷く。
「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」
茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。
「うん? どうかした?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……警戒をしている感じ?」
「ま、まあ、そうですね……」
一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。
「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」
「そ、そうですかね⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。
「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」
「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、君に用があるからだよ」
「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」
「! ははははは……!」
青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」
青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。
「え? マー、マーク……? ええっと……?」
「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」
「ス、スペースポリスマン⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のね」
ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。
「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうかい?」
「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」
「初めて?」
ノリタカさんは驚いて目を丸くする。
「ええ、初めてですよ!」
「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」
ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」
「そ、それはそうらしいですけど……」
「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」
「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」
「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」
ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「あ、ちょっと待ってくれ……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………」
ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」
ノリタカさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に困惑する。
「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」
「いや、どうしてかなって言われても……」
「まだ不信感は拭えていないかな?」
「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」
「作戦を遂行する上での名前だよ」
「それはなんとなく分かりますが……本名は?」
「わけあってそれは明かせない」
「ええ……」
ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。
「……マズいかな?」
「いや、いいです。失礼します」
「待っているよ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。
「やあ!」
「……何故ここに?」
「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」
ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」
「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」
「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」
「特例で認めてもらったよ」
「そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」
「はあ……調査って?」
「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」
「い、異常ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」
「はいいいいっ⁉」
ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
「は、はい……」
わたしは頷く。
「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」
茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。
「うん? どうかした?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……警戒をしている感じ?」
「ま、まあ、そうですね……」
一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。
「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」
「そ、そうですかね⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。
「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」
「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、君に用があるからだよ」
「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」
「! ははははは……!」
青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」
青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。
「え? マー、マーク……? ええっと……?」
「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」
「ス、スペースポリスマン⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のね」
ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。
「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうかい?」
「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」
「初めて?」
ノリタカさんは驚いて目を丸くする。
「ええ、初めてですよ!」
「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」
ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」
「そ、それはそうらしいですけど……」
「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」
「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」
「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」
ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「あ、ちょっと待ってくれ……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………」
ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」
ノリタカさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に困惑する。
「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」
「いや、どうしてかなって言われても……」
「まだ不信感は拭えていないかな?」
「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」
「作戦を遂行する上での名前だよ」
「それはなんとなく分かりますが……本名は?」
「わけあってそれは明かせない」
「ええ……」
ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。
「……マズいかな?」
「いや、いいです。失礼します」
「待っているよ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。
「やあ!」
「……何故ここに?」
「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」
ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」
「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」
「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」
「特例で認めてもらったよ」
「そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」
「はあ……調査って?」
「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」
「い、異常ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」
「はいいいいっ⁉」
ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。
次男坊と言っても末っ子です。
もちた企画
ファンタジー
人類において環境に準じるのは容易くは無いファンタジーな世界で集落より少し外れると魔物が溢れかえり人類存亡の危機がそこにはあった。
主神メガイス様の力で増えすぎた魔物を封じることに成功したがそれは当時の話、今は封じた空間に穴が空いて魔物が一部姿を表していた。
名称は「ダンジョン」
主神の妻で豊穣の女神アストレアは人類に加護を与えた。四大属性「火・水・風・土」。
人々は体内に流れる魔力を感じ精霊に感謝をして魔法を使えるようになった。
特に強い属性魔法の使い手を王の側近貴族として囲い込んだのが今の魔法至上主義だ。
自分の属性に合った生活をする人々で構成され、それぞれの生活を送っていた。
時はヴァルデン四世治めるウェストヴァルデン。
その首都から西に進んだ伯爵領地の首都カイランで生まれたシティーボーイ次男坊が6歳で執り行われる祝福の儀で土属性を扱えるようになったお話。
主要な国
ウェストヴァルデン (Westvalden)
- 古い森と堅牢な城塞が特徴の西部の王国。長い歴史を持ち、貴族階級と騎士道が重んじられる国。
イーストリア (Eastria)
- 東方に位置する、交易と文化が栄える国。多くの学者や魔法使いが集まり、学問や魔術が発展している。
ノルデンヘイム (Nordenheim)
- 北方にある寒冷な地域に広がる王国。厳しい自然環境の中で強靭な戦士たちが育ち、騎士団が国を守っている。
ルミナス (Luminis)
- 女神アストレア信仰を中心とする宗教国家。教会の影響力が強く、神聖な儀式や聖騎士団による巡礼が盛んに行われている。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛すべき『蟲』と迷宮での日常
熟練紳士
ファンタジー
生まれ落ちた世界は、剣と魔法のファンタジー溢れる世界。だが、現実は非情で夢や希望など存在しないシビアな世界だった。そんな世界で第二の人生を楽しむ転生者レイアは、長い年月をかけて超一流の冒険者にまで上り詰める事に成功した。
冒険者として成功した影には、レイアの扱う魔法が大きく関係している。成功の秘訣は、世界でも4つしか確認されていない特別な属性の1つである『蟲』と冒険者である紳士淑女達との絆。そんな一流の紳士に仲間入りを果たしたレイアが迷宮と呼ばれるモンスターの巣窟で過ごす物語。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

闇属性転移者の冒険録
三日月新
ファンタジー
異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。ところが、闇属性だからと草原へ強制転移されてしまう。
頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険がスタートした。
強力な魔物や敵国と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指していく。
※週に三話ほど投稿していきます。
(再確認や編集作業で一旦投稿を中断することもあります)
※一話3,000字〜4,000字となっています。

鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる