異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第4章<最終戦線>編

139話「雷と、影」

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    ガオレオとリコの2人とセンジュ、双方が互いを睨み合う様は、まさに獣の形相だった。
    命の削り合いをするこの戦いにおいて、油断は決して許されない……それ故に生半可な覚悟ではいられないからだ。
    互いに決して目を逸らさず、1歩も動かず、ただひたすら戦闘の構えを取ってその時が来るのを待っていた……。

    ずっと、ずっと、ずっとその時が来るのを待ち続け……

    ビュオォ__

    次の瞬間、ガオレオとリコの背後から北向きの風が吹いた__

    ダダッ!

    ガオレオとセンジュは一気に動き出した。
    その場から2人が消え去ったかと思った直後、戦いの場の中央でガオレオの風式とセンジュの拳が激しい音を立ててぶつかり合う。

    ガッ!

「ぬんんんんん!!」

「――――ッ!!」

    形相だけでなく、声すら獣のような荒々しさになっている2人。 
    互いに一旦己の武器を引き、再度激しくぶつけ合う。

ガガガガガガガガ!!

「リコ!!」

「フレイムエイトバレット!」

    ガオレオから支援攻撃を任されたリコは、8つのフレイムバレットを同時に放つ魔術「フレイムエイトバレット」をセンジュに目掛けて放つ。

    ダッ!

    その攻撃と同時にセンジュから一旦身を引くガオレオ。
    さらに8つのフレイムバレットに加えてダメ押しの追加攻撃を仕掛ける。

「ウインドスラッシュ……五連翔!」

    風の斬撃、ウインドスラッシュを飛び道具のように飛ばす技「ウインドスラッシュ・翔」それを5回連続で繰り出す「ウインドスラッシュ・五連翔」をリコのフレイムエイトバレットに追従させる

    計13発の炎の弾丸と風の斬撃がセンジュを襲うが、これに対して彼女は……

「雷拳・五十連翔ォ!!」

ドガガガガガガ!!

    センジュは魔術名を叫びながら拳を目に見えない速度で連続で突き出し、その際に生じた雷属性の魔力の塊を飛ばす魔術「雷拳・五十連翔」でガオレオとリコの同時攻撃を相殺する。
    
「なっ……!」

    これならいけるか……?と思っていたガオレオは一瞬動揺し、その隙をセンジュは見逃さず反撃を仕掛けるべく彼に急接近する。

ビュンッ!

「そこだぁ!!雷刀!!」

「このぉっ!!」

    右手に雷属性の魔力を纏わせ刀のような形を形成する「雷刀」によってガオレオを襲うセンジュだったが、ガオレオは0.3秒もかからぬ間に即座にスイッチを切り替え風式によって防御を行う。
    ガオレオの首を狙ったセンジュの雷刀は間一髪の所で阻止された。

ガキィンッ!!

「ぐっ……!」

    なんとか防御が間に合ったかと思ったガオレオだったが……

「くひひ…!」

    ギュインッ!

「な!?」

    なんとセンジュは左手でも雷刀を発動し、今度こそ殺してやると言わんばかりの勢いでそれをガオレオの脳天に振り下ろそうとする。

「アクアバレット!」

    それをさせまいと水の弾丸「アクアバレット」を放ちセンジュの左手に直撃させるリコ。
    これによってセンジュの動きが一瞬停止し、その隙にガオレオは彼女から一旦距離を取った。

「助かった!」

「無茶しないでね~!」

「ぐっ……!」

「効いたかしら?水属性魔術は……どういう訳か知らないけど、雷属性魔術を使うモンスターに水属性魔術を使うと、一時的に動きを鈍らせる事ができるのよね~。

学者によると水は電気を通しやすい性質で、雷属性魔術の使い手が水を被ったら身体から放たれた雷属性魔術の余剰魔力が体表の水と触れ合って、体表を雷が走って身体を痺れさせるんだとか。人間の身で言わせてもらうけど、人間って不便な身体よね~。炎魔術が使えるからって炎が効かない身体って訳じゃなく、雷魔術が使えるからって雷を通さない身体って訳でもないもの。」

「けっ、そうみたいだな……ムカつくぜ。」

    リコが解説した通り、センジュは左手にアクアバレットをくらった事で左手が痺れて動きが鈍くなっていた。
   
「ガオレオ!今のうちに!」

「もちろんだぜ!」

    ガオレオはリコの言葉にそう返し、この好機を逃すまいとセンジュに接近し攻撃を仕掛けようとする。

    ダッ!

「ぐっ……!」

    自分に急接近してきたガオレオに焦りを見せるセンジュ。
    そんな彼女に容赦すること無くガオレオは攻撃を繰り出す。

「神速斬・七連!!」

    ビュビュビュビュビュビュビュンッ!!

    風の魔力を纏い繰り出される高速の斬撃、神速斬……その速度を更に高め、一度に七回の斬撃を繰り出す「神速斬・七連」によって、ガオレオはセンジュを斬り伏せようとした。
    ガオレオの斬撃がセンジュに直撃したかに思われたが、次の瞬間……

「このッ……!!」

    ガキィンッ!

    センジュは影の一味が皆持つ影の魔術を発動。
    影の鎧を身に纏いガオレオの攻撃を全て弾いた。

「チッ……!」

    攻撃を防がれた事を悔しがるガオレオ。
    だがその一方で、センジュもまた表情に怒りを滲ませていた。

「てめぇ……俺に影の魔術を使わせやがって……!」

「だったらふつーに受ければ良かっただろ。そっちの方が俺だって助かったんだが?」

「それは……身体が勝手に動くんだよ!俺は影の力なんて使わなくたってお前らに勝てるはずなんだよ!それなのに、無意識的に使っちまうんだ!俺は雷の魔術だけで最強のはずなのによォ!」

「は、はぁ……。」

    突然子供のように癇癪を起こすセンジュに、ガオレオとリコはどう反応すればいいのか非常に戸惑った。

「あ、アンタでも人並に悩みとかあったんだな。てっきり人間の皮を被った冷血無情の化け物かと思ったよ……。」

「はぁ……当たり前だろ。お前らより優れてるとは言え人間なんだよ俺は。悩みぐらい……ある。」

「そう……じゃあもう影の魔術は使わないかしら~?」

「当たり前だ!お前らなんか影の魔術がなくたってなぁ!」
 
「そうかそうか……じゃあ仕切り直しと行こうぜ!」

「おぅ!」

「お前みたいな魔術の腕に自信があるやつとは、敵として戦うんじゃなく自分の得意魔術について語り合いたかったんだけどな。」

「そうできなくて残念だと、俺も思うぜ……悲しいねぇ。」

    ガオレオ、リコとセンジュは軽く言葉を交わした後再び戦闘に戻ろうとする。

「行くぜ!」

「来い!」

    互いにそう言い合い、数秒ほど相手の出方を伺うガオレオとセンジュ。
    そしてそれをガオレオの背後から見ているリコ。

「双雷刀!」

「エンチャント・ウインド!」

    雷刀を両手に発現させたセンジュと風式に風属性の魔力を纏わせ強化したガオレオは即座に相手に接近し、武器を振りかざす。

ガキィンッ!!

    ガオレオの風の刃を雷の層刃で受け止めるセンジュ。
    2人は相手を確実に倒す為に何度と武器を振りかざす。

「うぉぉぉぉ!!」

「おらぁぁぁ!!」

    ガギギギギギギギッ!!

    風式と双雷刀が火花と轟音を散らしながら激しくぶつかり合う。
    並の人間の目には追えない程のスピードでガオレオとセンジュは武器の打ち合いを繰り広げていたのだ。

「……」

     それを見ていたリコは冷静に杖を構え、ガオレオをサポートすべきタイミングを見計らう。
    高速で戦うセンジュに隙ができるのをすっと待ち続け、待ち続け……

「ここ!」

    リコはその瞬間、フレイムバレットを大きな弧を描くように放った。
    1発のフレイムバレットはガオレオの背後からセンジュ目掛けて飛んでいき……

ドシュッ!

「ぐっ……!」

    センジュに見事直撃した。
    リコが予測した通りの場所にセンジュは動き、センジュの身体とフレイムバレットが引き合うようにぶつかったのだ。

「よくやった!」

「どうも~!」

    ガオレオの感謝の言葉に笑顔でそう返すリコ。

「うぉぉ!!」

    ガオレオはその機を無駄にはしまいと2連続の斬撃を繰り出し、それによってセンジュの胸部を斬り裂く。

ザシュッ!

「ぐぁっ……!!」

    ガオレオの攻撃でセンジュはよろめき、服が破れたので影によって胸部を守る服を作る。

「それぐらいは許してやる……が、これでトドメだ……!」

    ガオレオはセンジュにそう告げ、最大威力の攻撃を繰り出そうとする。

「くそっ、くそ……!」

―アナタ、このままじゃ死ぬわよ?―

「……せぇ」

―絶対私の力が必要だって。―

「うる、せぇ……!」

    センジュの脳内では、謎の声が彼女に語りかけていた。
     それを見て突然どうしたのかと困惑するガオレオとリコ。 

「な、なんだ……?」

「ガオレオ!早くトドメを!」

     何か良くない予感を感じたリコはガオレオに早くセンジュにトドメを刺す事を促そうとしたが……

「うるせぇぇぇぇ!!邪魔だぁぁぁ!!消えろぉぉぉ!!」

    ドガァァァァァァァァァ!!
    ゴォアァァァァァォァァ!!

    次の瞬間、センジュを中心に膨大な量の影の魔力と雷の魔力が放出される。
    そのあまりにも禍々しいオーラに気圧され、センジュの傍から退避するガオレオ。
 
「一体、何が……!!」

    センジュの突然の異変に、ガオレオはますます困惑した。
    センジュの身に起きていた異変、それは……「眠っていたかつての人格の暴走」だった。


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