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第4章<最終戦線>編
137話「世界の、行く末」
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神の間から、私は地上の様子をずっと見続けている。
ここからなら大陸全土の様子が一目で分かる。
どこの国も私が作り出したモンスターの軍勢をあっという間に掃討してみせたようだ……もっと作っておけば良かったな。
もしくはセンジュ、リュウカのような幹部をもっと作っておけば……。
今からでも遅くないはずだ……魂のストックならあちらから無限に供給されるのだし、作っておくか……。
そう思い立った私は頭上に無数に浮かぶ魂に右手を伸ばそうとしたが……
ガシッ!
「これ以上、貴様に人の命を弄ばせてたまるか……!」
私の左手の主導権を無理やり奪い取り、左手で右手を掴み妨害する蓮。
全く、厄介な奴だよ君は……って、こんな芝居はもう必要無いんだったな、いけないいけない……。
「蓮くんさぁ……君こそ僕から力を貰っておいて、散々人の命を弄んでおいてそれはないよぉ?」
「そうだな……私は貴様に操られ、人の命からモンスターを生み出し、異世界を混沌に陥れた……その罪は貴様と共に抱き地獄に落ちねばならんのだ!」
「ふっ、ご立派な事で……でもこの身体はまだ必要なんだ、分かるだろ?察してくれよぉ……僕が狂死郎君と共に企ててる真の目的ってやつをよぉ?」
「……当然理解してるとも!非常に気持ち悪いが、貴様と私は意識を共有している……貴様が企んでいるそれを実行すれば……大勢人が死ぬぞ!貴様らのくだらない目的のせいでな……!」
「それでいい!それがいいんじゃないかぁ!僕と狂死郎君は世界を破壊し新世界を作り出した英雄として後世語り継がれるだろう!その時初めて僕らの「世界統合計画」は完成するのさ!」
「くだらんな……まるで子供の戯言だ!」
「あぁそうかい!……ま、君はじっと見てなよ?僕らが世界を支配するまでの物語をさ。なぁ俺?それと私。」
僕は地上に送ったもう2つの人格をそれぞれ宿した2人の人間とコンタクトを取り、これからやる事の最終確認を行う。
「時が来れば僕は異世界に降りる!その時僕と俺と私が揃ってそれを実行するのさ……世界統合計画を!!」
__
「あぁ、楽しみだなぁ!現生人類のルールも秩序も破壊され、新たな世界が生まれる!俺達の時代が来る!」
「その世界の王に君臨するのが私達って事!う~ん、待ち遠しいわぁ!」
__
俺も私もやる気十分といった所だ……俺の相手をしているのは良太郎君とマリーネちゃん、私の相手をしているのは……ふふっ、彼らはみーんな、僕の手のひらで踊るピエロなのさ……どうせ踊るなら最高のパフォーマンスを披露してくれよ……。
◇
「……死んでる。完全に脈か止まってる……でも、なんで……こんな満足した面してやがるんだよ、このバカタウラス……!」
改めて、タウラスの脈を測り彼の死を再確認するベル。
それを聞いたドラコは涙を抑えられず、そんな彼にベルは胸を貸してやった。
「アニキ……!!」
「……アイツは最後まで私達のアニキだったよ。こんな時に言う言葉じゃないとは思うけどさ……頑張ろう、ドラコ……アイツの分も。」
「……あ、あぁ……!」
ドラコはベルに抱きしめられながらしばらく泣き続けた後、意を決して仁美の元に向かう。
「ドラコさん……無理はしなくても……」
「無理じゃねぇよ。俺にはまだやらなきゃならねぇ事があるんだ。俺を……リョータロー達の元に戻してくれ。まだ皆戦ってるはずなんだ……皆の力にならねぇと!」
「……貴方はタウラスを殺されて、傷心の状態だと言えば皆貴方がこの戦いの間は休んでいる事を納得するはずです。それでも行くのですか?」
「あったりめぇよ!皆が頑張ってるってのに1人だけ休んでられっかって言ってんの!俺はたまたまこの武器に助けられただけの雑魚だけどよぉ……この武器さえあればやれる事あるはずだしさ!」
「なら私も行きます。コイツ1人で戦わせる訳にはいかないので……私、コイツのアネキですから。」
ベルもドラコと共に戦う事を決意していた。
「ベルさん……ちょっと待っててください。」
それを聞いた仁美は水晶でバルベストの塔周辺での良太郎達の様子を確認し、2人にやるべき事を告げる。
「1番大変そうな所は……セリエさんが1人でモンスターの群れを相手している所です。この加勢に行けますか?」
仁美から任務内容を告げられたドラコとベルは一切躊躇う事無くこう答える。
「やってやろうじゃねぇか!」
「任せてください。仁美さんはここの事後処理を頼みます。」
「分かりました。では……ワープゲート!」
仁美はワープゲートを開き、そこを通ってバルベストの塔に行くことを2人に促す。
「さぁ!」
「行くぞベル!」
「えぇ!」
先にドラコからワープゲートをくぐり、それに続いてベルがワープゲートをくぐっていった。
「2人とも、お気をつけて……さて、私もやるべき事をやらないと……!」
そうして仁美は冒険者達の元に向かい、彼らを指揮してモンスターの死体処理、冒険者達の遺体の整理を始めるのだった。
__
良太郎の世界で死んだ人間の魂はこの異世界に生まれ変わるが、この世界で死んだ人間が生まれ変わる事は無い。
かつてこの異世界は、死者に安らぎを与える為の楽園だった……狂死郎と闇のティアマト、もっと言えば、ガイ・アステラが自らのエゴを叶える為の目論みを企てるまでは……。
1度ねじ曲げられてしまったものは完全には元には戻らない……それでも良太郎達は戦わなくてはならない。
最悪な今からもっと悪くなる前に……歪みは修正しなくてはならない……例え修正できた様に見えるだけだとしても。
この戦い……アマテラス作戦の後、最後に立っていた者が世界を良い方向に導くか終焉へと誘うかは、今はまだ誰も知らない……。
ここからなら大陸全土の様子が一目で分かる。
どこの国も私が作り出したモンスターの軍勢をあっという間に掃討してみせたようだ……もっと作っておけば良かったな。
もしくはセンジュ、リュウカのような幹部をもっと作っておけば……。
今からでも遅くないはずだ……魂のストックならあちらから無限に供給されるのだし、作っておくか……。
そう思い立った私は頭上に無数に浮かぶ魂に右手を伸ばそうとしたが……
ガシッ!
「これ以上、貴様に人の命を弄ばせてたまるか……!」
私の左手の主導権を無理やり奪い取り、左手で右手を掴み妨害する蓮。
全く、厄介な奴だよ君は……って、こんな芝居はもう必要無いんだったな、いけないいけない……。
「蓮くんさぁ……君こそ僕から力を貰っておいて、散々人の命を弄んでおいてそれはないよぉ?」
「そうだな……私は貴様に操られ、人の命からモンスターを生み出し、異世界を混沌に陥れた……その罪は貴様と共に抱き地獄に落ちねばならんのだ!」
「ふっ、ご立派な事で……でもこの身体はまだ必要なんだ、分かるだろ?察してくれよぉ……僕が狂死郎君と共に企ててる真の目的ってやつをよぉ?」
「……当然理解してるとも!非常に気持ち悪いが、貴様と私は意識を共有している……貴様が企んでいるそれを実行すれば……大勢人が死ぬぞ!貴様らのくだらない目的のせいでな……!」
「それでいい!それがいいんじゃないかぁ!僕と狂死郎君は世界を破壊し新世界を作り出した英雄として後世語り継がれるだろう!その時初めて僕らの「世界統合計画」は完成するのさ!」
「くだらんな……まるで子供の戯言だ!」
「あぁそうかい!……ま、君はじっと見てなよ?僕らが世界を支配するまでの物語をさ。なぁ俺?それと私。」
僕は地上に送ったもう2つの人格をそれぞれ宿した2人の人間とコンタクトを取り、これからやる事の最終確認を行う。
「時が来れば僕は異世界に降りる!その時僕と俺と私が揃ってそれを実行するのさ……世界統合計画を!!」
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「あぁ、楽しみだなぁ!現生人類のルールも秩序も破壊され、新たな世界が生まれる!俺達の時代が来る!」
「その世界の王に君臨するのが私達って事!う~ん、待ち遠しいわぁ!」
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俺も私もやる気十分といった所だ……俺の相手をしているのは良太郎君とマリーネちゃん、私の相手をしているのは……ふふっ、彼らはみーんな、僕の手のひらで踊るピエロなのさ……どうせ踊るなら最高のパフォーマンスを披露してくれよ……。
◇
「……死んでる。完全に脈か止まってる……でも、なんで……こんな満足した面してやがるんだよ、このバカタウラス……!」
改めて、タウラスの脈を測り彼の死を再確認するベル。
それを聞いたドラコは涙を抑えられず、そんな彼にベルは胸を貸してやった。
「アニキ……!!」
「……アイツは最後まで私達のアニキだったよ。こんな時に言う言葉じゃないとは思うけどさ……頑張ろう、ドラコ……アイツの分も。」
「……あ、あぁ……!」
ドラコはベルに抱きしめられながらしばらく泣き続けた後、意を決して仁美の元に向かう。
「ドラコさん……無理はしなくても……」
「無理じゃねぇよ。俺にはまだやらなきゃならねぇ事があるんだ。俺を……リョータロー達の元に戻してくれ。まだ皆戦ってるはずなんだ……皆の力にならねぇと!」
「……貴方はタウラスを殺されて、傷心の状態だと言えば皆貴方がこの戦いの間は休んでいる事を納得するはずです。それでも行くのですか?」
「あったりめぇよ!皆が頑張ってるってのに1人だけ休んでられっかって言ってんの!俺はたまたまこの武器に助けられただけの雑魚だけどよぉ……この武器さえあればやれる事あるはずだしさ!」
「なら私も行きます。コイツ1人で戦わせる訳にはいかないので……私、コイツのアネキですから。」
ベルもドラコと共に戦う事を決意していた。
「ベルさん……ちょっと待っててください。」
それを聞いた仁美は水晶でバルベストの塔周辺での良太郎達の様子を確認し、2人にやるべき事を告げる。
「1番大変そうな所は……セリエさんが1人でモンスターの群れを相手している所です。この加勢に行けますか?」
仁美から任務内容を告げられたドラコとベルは一切躊躇う事無くこう答える。
「やってやろうじゃねぇか!」
「任せてください。仁美さんはここの事後処理を頼みます。」
「分かりました。では……ワープゲート!」
仁美はワープゲートを開き、そこを通ってバルベストの塔に行くことを2人に促す。
「さぁ!」
「行くぞベル!」
「えぇ!」
先にドラコからワープゲートをくぐり、それに続いてベルがワープゲートをくぐっていった。
「2人とも、お気をつけて……さて、私もやるべき事をやらないと……!」
そうして仁美は冒険者達の元に向かい、彼らを指揮してモンスターの死体処理、冒険者達の遺体の整理を始めるのだった。
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良太郎の世界で死んだ人間の魂はこの異世界に生まれ変わるが、この世界で死んだ人間が生まれ変わる事は無い。
かつてこの異世界は、死者に安らぎを与える為の楽園だった……狂死郎と闇のティアマト、もっと言えば、ガイ・アステラが自らのエゴを叶える為の目論みを企てるまでは……。
1度ねじ曲げられてしまったものは完全には元には戻らない……それでも良太郎達は戦わなくてはならない。
最悪な今からもっと悪くなる前に……歪みは修正しなくてはならない……例え修正できた様に見えるだけだとしても。
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