異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

文字の大きさ
上 下
133 / 153
第4章<怪物の夢>編

132話「3人の、始まり」

しおりを挟む
    消えた村の生き残りのベルとドラコに会ったあの日から、俺は毎日ベルとドラコのいる病院に通った。
    冒険者として楽しかった事、辛かった事、倒したモンスターの事、色々な事を2人に話し、2人はそれを目を輝かせながら聞いてくれた。
    今のドラコは俺の事をアニキと呼んでくれているが、確かそう呼ぶようになったのはこの時からだったな。

「サンドワームの群れに追い詰められる冒険者達!そこに俺が駆けつけ、あっという間にサンドワームの群れを片付けたのよ!」

「おぉ~!」

「俺は南の砂漠地方で英雄として称えられた!ま、俺にかかればこんなもん__」

「……アニキ?」

「つ、次は北のネープル村で開催された喧嘩祭りで俺が優勝した時の事を話そうか!あの頃は俺も若くてよぉ……」



「じゃ、今日は帰るぞ。」

「またきてね!アニキ!」

「楽しみにしてるね。」

「おう!ちゃんと病院のお姉さんの言う事聞いていい子にしてるんだぞ!ベルはお姉ちゃんだから、ドラコをちゃんと見とくんだぞ?」

「分かった。ドラコは私が見とく。」

「おれもちゃんといいこにしとくよ!」

「あぁ、じゃあまた明日!」

    時々あの日の……俺が油断したせいでベルとドラコの村が壊滅に追いやられた日の記憶がフラッシュバックする事があった。 
    どれだけ忘れようとしても、過去が消える事はない……けど、それを思いでした後はいつも俺は自分を殴った。

ガッ

「馬鹿野郎……あの2人があんな顔で俺を見てくれてるんだ……俺は、2人にとってカッコイイ兄貴でねぇと……!」

    自分にそう言い聞かせる事が2人への……いや、俺が殺したも同然の村人達への贖罪のつもりだったのだろうか、と今は思う。



     5年の月日が流れた。
    俺は危険度神獣レベルのモンスターを倒した事により特級冒険者となり、ドラコは8歳、ベルは12歳。
     2人は病院を出て、2人のようなモンスター災害によって親を失った孤児が何人も保護されている孤児院で生活していた。

    その2人に会いに行く場所が病院から孤児院に変わった事で、俺はいつの間にか2人だけでなく孤児院の子供達皆のヒーローになっていた。
    
「こらこら、話が聞きたいなら1つずつ話していくぞ~!」

「はーい!冒険者で1番強いのは誰ですかー!」

「1番強い冒険者?それ俺に聞いちゃうか~?まぁ冒険者なんて2級か1級なら上澄みレベルの強さだとは思うが……やっぱ最強は特級!つまり俺だ!ガーッハッハッハ!」

「はーい!タウラスさんに好きな女の子はいますかー!」

「す、好きな女の子ぉ?最近のガキはマセてんなぁオイ!まぁ強いて言うならしょ……」

「しょ……?」

「商店街で花屋をやってるシャーリーお姉さんかなー!」

「シ、シャーリーおねえさんは俺と結婚するんだぞ!」

「お前には無理だー!」

「何~?」

「お、おいおい喧嘩するなって!」

    皆人懐っこい子達で、とてもモンスターによって親を失った悲しみとか、そういうものは感じさせない子ばかりだった。
    だからこそ自分がクヨクヨしてちゃいけねぇ……ちゃんと前見て歩いていかねぇとって思って、嫌な記憶は忘れようと決めたんだ。
    孤児院のヒーローをやってる内に、特級冒険者としての心構えみたいなのも身についていったのかもしれない。



    そこからさらに2年の月日が流れたある日、王国アダンの冒険者ギルド最高責任者、ギルドマスターが俺を指名しある任務を依頼してきた。

「黒いモヤを纏ったモンスター……?」

「あぁ。ここ数日王国アストレアでそういうモンスターが目撃されるようになったらしい。なんでも黒いモヤを纏ったモンスターは、モンスター本来の生態では有り得ないような黒い触手を操り獲物を襲うのだとか……」

「マジか……俺は百獣変化を使いこなす為にあらゆるモンスターの生態を学んできたが……黒いモヤに黒い触手……そんなもん見た事も聞いた事もねぇぞ……ただの見間違いじゃねぇのか?」

「いや……目撃例は複数、別々の場所で、複数の人間によって挙げられている。精神に干渉する類の未知のモンスターが現れた……という線もあるが、人の手によって作為的に起こされた現象という可能性も捨てきれない……何にせよ、普通では無い事が起こってるという事実だけが確かに存在する。」

「で、ヒーローの出番という訳か?」

    それが俺が与えられた任務……王国アストレアに行き謎のモンスターの調査をする事だ。
    長旅になるだろうと想定した俺は王国アストレアに行く為の準備を整えた後、孤児院の子供達に別れの挨拶をしに行った。

「__という訳だからよ!しばらく皆と会えなくなるけど……俺がいなくてもいい子でいるんだぞ!」

「……」

    俺が皆に別れの挨拶を告げると、皆は何かを言いたげな様子でいた。
    別れが寂しいとか、笑顔で見送るとか、そういうのとは違った様子の……一体なんだろうと思ってた時、皆の中からドラコとベルが出てきてこう言い出した。

「アニキ!」

「私達も連れて行って!」

「な……!」

   突然そう言い出す2人には心底驚かされたもんだ。

「俺達は冒険者に憧れてるんだよ!」

「あぁ、それは分かってるが……」

「何でだと思う?」

「いや、それは……」

「私達はモンスターに親と村を奪われたの。だから、そんな思いをする子供が少しでも減るようにって頑張るタウラスが……冒険者がかっこよく見えた!そして……冒険者になりたいって思った!」

「俺もだ!アニキは世界一かっけー冒険者だと思う!俺もアニキみてーになりてぇ!冒険者っていうのが危険な仕事ってのは分かってるけど……なりてぇんだよ!」
 
    ベルは俺の目を真っ直ぐ見つめて俺にそう語った。
    俺はそこで「ダメだ」って言おうとした……そう言わなきゃいけなかった……にも関わらず、どうにもその言葉が喉から出てこなかった。

「……」

    俺と同じだ……憧れってもんは人に止められるもんじゃない……俺の両親もこんな気持ちだったんだな、とその時ようやく気づく事にできた。
    だから、止めるのではなく、2人の「覚悟」を問いただした。

「冒険者が危険な仕事っつったな。だがそんなもんじゃねぇ……冒険者ってのは命に関わる仕事だ。お前らがやめてって言ってもモンスターは攻撃を止めてはくれねぇぞ。俺は強いからいいがお前らは違う。同じモンスターを討伐するクエストでも俺とお前らじゃ生存率はかなり差があるだろうな。もちろんお前らの方が低い。だからそうならないように……少しでもお前らをマシな冒険者にするように俺が鍛えてやる。冒険者をやるなら最低でも3年は鍛えるぞ。3年間耐えきったら冒険者にする……諦めるのならそれは止めねぇ……ここに帰ってもらうがな。それでもやるか?冒険者。」

「あぁ!やってやるぜ!俺にはそれしかねえんだ!」

「私達、この日が来ると思ってたくさん剣の訓練してきたんだよ!」

    覚悟を決めた表情のドラコとベルは右手を前に突き出しそう宣言した。
    ベルの言っている事は本当らしく、2人とも右手に剣だこができている……それぐらいにはやることやってきたみたいだ。

「……それがお前達の答えか……いいぜ!この特級冒険者、タウラス・トレスがお前らを導いてやる!全力で付いてこい!」

    その日、俺はドラコとベルを連れて王国アダンを出た。
    それが俺達3人のスタートだった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界のロボット乗りは大変です。~少女と機士の物語~

ハの字
ファンタジー
近未来の日本、人型機動兵器が導入された陸上自衛隊に所属するパイロット、御堂 るい三等陸尉は、任務の最中に異世界へと転移してしまう。 そこは人々が剣と魔術を持ち、魔道鎧と呼ばれるゴーレムが闊歩する、中世に魔法を加えたような世界だった。愛機と共に転移してしまった御堂は、偶然にも貴族の娘、ラジュリィを危機から救う。その恩から異世界での衣食住を得るが、それでも御堂の願いは一つであった。 「自分は必ず、日本へ帰ってみせます」地球への帰還を強く願い、足掻き続ける御堂。 「貴方を必ず、私のものにしてみせます」恋してしまったが故に、それを阻止しようとするラジュリィ。 帰りたい者と帰したくない者。二人の駆け引きが始まる。 またそれとは関係なく、御堂は人型機動兵器を繰り、巨悪と戦うことになるのだった。 ▼毎日12時頃に更新予定です。 ▼表紙1、挿絵:猫餅 様 ▼「小説家になろう」と同時掲載です。 ▼人型ロボットが活躍する話です。実在する団体・企業・軍事・政治・世界情勢その他諸々とは全く関係ありません。御了承下さい。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ランペイジ 異世界軍、日本侵攻  ~議員なら国会で無双しろよと言われそうだけど、前々世で大魔法使いだったので、異世界の軍を相手に戦います~

愛染
ファンタジー
平誠33年、桜の舞う大阪城公園に、突如として異界の軍勢が現れた。騎士、竜騎兵、スケルトン、ゾンビ、そして、ゴブリンやオークといったモンスターたちが、暖かな春の日を楽しんでいた人々に襲い掛かる。たまたま居合わせた若手国会議員(年齢的には中年)の友兼は、前々世を魔法使いとして生きた記憶を持ちながらも、これまでは隠し芸ぐらいにしか使えなかったその力を取り戻す。逃げまどう人々を助けるために、その力を用いて戦う事を決意する。  立ちはだかる死の王と呼ばれるアンデッドの王、神の使い、そして、20万を超える敵兵を相手に、友兼は、警察官や自衛隊と共に戦場を駆け巡る。 ※この物語は『フィクション』です。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは全く、全然、これっぽっちも関係ありません。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

処理中です...