異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第4章<最終戦線>編

130話「2人の、絆」

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    死神の前に立ち塞がるタウラスとドラコ。
    2人は確実に死神を倒す為に今の自分に出せる全力によって死神を撃破する事を決意し、それぞれ魔術によって自らを強化する。

「ファイヤーホークの翼!ベルゼブブの複腕!ハンターコンドルの眼!」

「エンチャント!フレイム!」

    タウラスは背中から鳥型モンスター、ファイヤーホークの翼を生やし、両腕を虫型の最強格とされるモンスター、ベルゼブブの複腕に変化させ腕を4本に増やし、さらに瞳を視力の優れた鳥型モンスター、ハンターコンドルの瞳に変化させ視力を上げ敵の攻撃を的確に見切る事ができるようになった。

    ドラコは浄魂の剣に属性を付与する付与魔術という魔術を使い、これによって常に属性攻撃が行えるようになった。都度魔術を発動するよりもこちらの方が魔力の消費を軽減できるのだ。

「覚悟はいいか?ドラコ!」

「もちろんだぜ!コイツを倒して早くリョータロー達の元に戻らねぇとな!」

「2人とも!」

    その時、2人の傍に仁美が駆けつけてきて2人を呼び止めた。
    何事かと思いそちらに振り向くタウラスとドラコ。

「なんだ!?」

「あの死神の特性が分かりました!あの死神は__」

    仁美は先程冒険者から聞いた事を2人に教えようとするが……

「コン、ココン、コンバンハ……」

ヒュンヒュンヒュン!

    死神がうわ言を呟いたかと思った次の瞬間、死神は大鎌をタウラスとドラコ目掛けて放り投げ、その鎌が先程ベルを襲った時のように5つに分裂し宙を舞う。

「げっ!来たぞ!」

「隙を見て破壊するんだ!恐らく死神の攻撃手段はあの大鎌しかねぇ!本物の1本の大鎌は分からねぇが多分増えた4本の大鎌は本物よりも柔いはずだ!」 

「おぅ!」

    タウラスの指示を聞いたドラコは自分に向かってきた2本の大鎌を回避し、さらにターンして戻ってきた1本の大鎌を剣で受け止め、その直後に2本目の大鎌をジャンプして回避し1本目の大鎌を弾き飛ばす。

「ふんっ!」

    タウラスはベルゼブブの複腕で3本の大鎌を同時に受け止め、ファイヤーホークの翼から炎の矢を放ちそれによって大鎌の撃破を試みる。

ガキンッ!!

「……こっちも魔術耐性ありか……!」

    炎の矢は確かに死神の大鎌に直撃したが、先程破壊した外套だけでなく大鎌にも魔術の威力を軽減する効果があるらしく、タウラスの攻撃は大して効果を発揮しなかった。

「こうなりゃ……おらぁっ!」

    タウラスは一旦大鎌を放り投げ、ターンして再びこちらに向かってきた大鎌を複腕の鋭い爪による攻撃で破壊できないかと考えた。

ヒュンヒュンヒュンヒュン……

「喰らえ……ベルゼクロー!」

バキィンッ!!

    片側2つの腕を同時に突き出し向かってきた大鎌にぶつけるタウラス……結構、複製された4本の大鎌のうちの2本を破壊する事に成功した。

「……で!?死神の特性って!?」

    そして戦いに集中しつつも仁美に先程の事を聞き直す。

「それが……死神はこの場にいる冒険者達の生命力を糧として動いているのではないかという事です!!」  

「マジか……!!」

「はぁ!?じゃあどうするんだよ!?」

「ドラコさんの浄魂の剣で斬るのです!!一撃急所与える事ができれば倒せるはずです!!」

「おう!急所な!」

    ドラコは宙を舞う大鎌による攻撃を捌きつつ死神の姿を見て弱点はどこかと探るが……死神には臓器や脳は無い。

「いや弱点どこだよ!! 」

「死神の弱点は頭蓋骨です!!死神は怨念によって動いています……その怨念が頭蓋骨に1番集中しているのです!!」

「俺は何度頭蓋骨を攻撃して粉々にしてもすぐ再生しややがったが……それは他の人間から生命力を奪って自分の糧にしてたからって事か!?」

「はい!!」

「分かった!!ありがとなヒトミ!!アンタは自分とベル守ってろ!!」

「はい……絶対に守ります!!」

    ドラコに自分とベルを守るよう命令された仁美は即座にその場を離れてベルの元に駆けつける。
    そして死神の弱点を知ったドラコは死神の大鎌を振り切り死神本体を直接叩きに行く。

「またさっきみたいにベルを狙うなんてこすい真似してくれるなよ……!!」

    そう願いながら死神に向かっていくドラコだったが、その願い通り死神は2本の大鎌をドラコに向かわせた。

「来た!!ありがとな骸骨野郎!!」

    大鎌の矛先がこちらに向いてくれた事に安心したドラコはそのまま死神の方に向かっていき、自分に追いついた大鎌が刃を振り下ろされるのを気配で察知して回避しながら死神の方へと向かっていく。

「ヒ、ヒィ……!」

    死神は必死の形相で自分に向かってくるドラコに危機感を覚えたのか、相手に背を向けて逃げようとする。

「ま、待ちやがれ!!」

ヒュン!ヒュン!ヒュン!

「へへっ!!当たらなきゃどうって事ねぇな!!なんか今日冴えてんじゃねぇの俺!!」

    死神の大鎌を回避しながら死神を追うドラコ。そこに……

「ドラコ!!こっちも片付いたぜ!!」

「アニキ!!」

    そこに複製された大鎌を破壊したタウラスが駆けつけ、死神に向かってドラコと並走する。

「悪ぃアニキ!!俺を追っかけてる大型なんとかしてくれ!!その間に俺が死神倒すからよ!!」

「年上の俺に命令たぁ、言うようになったじゃねぇか!?」

「年上!?知るかよ!!アニキはアニキだろぉ!?」

「……相変わらず生意気な奴だな!!」

「はぁ!?」

「自分の生意気さ加減気づいてなかったのか!?誰も何も言わなかったからな!!俺は我慢してたんだが!?セリエやガオレオ、ソレイユにはそんな態度取っちゃダメだからな!!アニキの命令だぞ!!」

 「こんな時に説教かよ!!とにかくあの逃げ腰骸骨野郎の脳天にコイツを叩き込めば終わるんだ!!任せたぞ!!」

「おう!!任されたぜ!!」

「俺達で死神倒すぞ!!そうすりゃ冒険者達を救った英雄とか言われたりしてな……えへへ。」

「__」

「アニキ?__」


    ビシャッ


「……は?」


    タウラスとドラコは勘違いをしていた。
    自分達はもう少しで、あと一息で死神を倒せる状況にあると思ってしまっていた。
    死神はその隙に付け入り、タウラスの心臓をいとも容易く刺し貫く事ができてしまったのだ。

    ドラコは確かに死神を追っていたはずだったし、確かに死神はドラコの目の前にいる。
    幻覚などではない……死神はいつの間にかもう一体いたのだった。
    そして4本の腕で4本の大鎌を持ち、その刃をタウラスに突き立てていた……

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